日本一の味を目指して|株式会社えな笠置山栗園|恵那の栗

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 「大きい」「立派ですね」
 目にした人が感嘆の声をあげる張りのあるみごとな栗。作っているのは、岐阜県恵那(えな)市にある「えな笠置山(かさぎやま)栗園」だ。

 恵那市をはじめとする「ひがし美濃地方」は、古くから山栗が収穫され、栗を使ったお菓子や料理が作られてきた。
 やがて、明治時代になると栗を茹でてふきんで絞った「栗きんとん」が和菓子店で販売され、名物となった。今ではひがし美濃地方では栗きんとんを売る店が50軒以上もある。

 恵那の栗は茹でればホックリ、裏ごしすれば舌触りがなめらか。風味豊かで、色も美しい黄色で、料理にも菓子作りにも適している。

 気候風土に恵まれているうえ、恵那には、長年、栗を育てて培った栽培技術の蓄積がある。
 確かな経験に基づき、愛情を込めて作られるえな笠置山栗園の栗。生産者が「安心、安全、日本一の味」と胸を張る。最後に問い合わせ先を記載しているので、ぜひ味わってみてください。

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■「名産の栗で地元を元気に」。有志や行政が一体となって栗園を創設

 
 えな笠置山栗園は、笠置山の日当たりの良い山肌、約20ヘクタールに広がっている。

 ここは、もとはリゾート施設だったという。

 「恵那は土壌や気候が栗の栽培に適し、昔から味の良い栗が収穫されてきました。

 そのためか、リゾート施設の跡地の活用が懸案になった時に、さまざまな方面から『栗園にして地元の活性化に活かそう』という声が上がってきたのです」と話してくれたのは、えな笠置山栗園の横家尚美さんだ。

 全国的に国産の栗の生産量は減少している。
 恵那市でも生産農家の高齢化や、30~40年前に植えた栗の木が寿命を迎えたこともあり、生産量が減っていた。

 

日当たりのよい山肌に広がるえな笠置山栗園
 
 
 

みごとに育った栗。栗は追熟がきかないので自然に落下するまで待つ
 
 このままではせっかくの良質な恵那の栗が衰退してしまうという危機感があったのだろう。

 また、地元の和菓子業界からも「恵那産の栗をもっと使いたい」という要望も強かった。

 そこで、地元の有志が集まり、市や県などの行政も一体となって、えな笠置山栗園が開設された。

 平成23年から29年にかけて6,500本の栗の木が植えられて、早生(わせ)の丹沢やえな宝来、金華、中晩生(ちゅうばんせ)の筑波やぽろたん、利平など、約12種類を栽培している。

 現在は年間5トンほどの生産量だが、将来は50トンの収穫を見込み、「日本一の生産量」、「日本一の販売量」、「日本一の味」を目指している。

 
 
 

横家さん(右)はじめ、栗栽培のベテランたちが運営
 

恵那市では多くの店で栗きんとんが作られている
 
 

■目に見えない手のかけ方、つまり「愛情」がおいしい栗を育てる

 
 横家さんに、おいしい栗を作る秘訣をうかがうと「栗栽培の3本柱は、施肥(せひ)、防除、剪定でしょう」との答えが返ってきた。

 施肥は肥料を与えること。適切な時期に、適切な栄養を与えることが大切だ。

 新芽が出る前の元肥(もとごえ)は堆肥など有機肥料を使用。6月中旬に実が育つときは実に栄養がいきわたるように、そして収穫を終えたらお礼肥をして、樹をいたわる。

 防除は害虫や病気を防ぐことだ。虫が付きやすい時期やかかりやすい病気など、知識と経験で事前に気を配り、適切な措置で病害虫を未然に防ぐ。

 

夏の盛りの草刈りなど、一年中、手をかけて育てる
 
 
 

作業性が良いように低樹高で栽培する
 
 剪定については、ひがし美濃地方では岐阜県で開発された低樹高栽培という手法を取り入れているそうだ。

 低樹高栽培では、7~8年育った木は、主幹を切って樹高を約3.5メートルと低くする。

 その後も、枝を低く横に広げ、「結果母枝(けっかぼし)」という小さい枝に実を付けるような剪定を行い、最終的には樹高2.5メートルほどを保つようにする。

 枝が横に広がるので日当たりが良く、良い実が育つ。さらに作業性も良いそうだ。

 けれど、おいしい栗を作るのに何より大切なのが愛情だという。

 
 
 
 「栗は生き物ですから、手のかけ方で日々の成長が変わってきます。手を抜いたらそれなりにしか育ちません。

 同じ作業でも『このくらいでいいだろう』というのと『ここまでやってあげたい』と思って世話をするのでは、結果が違ってくる。目に見えない手のかけ方、つまり愛情の積み重ねで良い栗が育ちます。

 味覚は人によって違うので評価も一律ではないかもしれませんが、『日本一おいしい栗です』と胸を張っていえる誇りと自信を持って作っている。それだけは間違いありません」と横家さん。

 職人気質の生産者たちが心を込めて栽培している「えな笠置山栗園」の栗。味わってみたいですね。

 

収穫され、出荷を待つ栗たち
 
 

■えな笠置山栗園のお問い合わせ先

 
ネットショッピングはこちら
 
「えな笠置山栗園 おやすみ栗(マロン)」
 
えな笠置山栗園はこちら
 
  えな笠置山栗園(http://kasagiyama-kurien.jp
 
(*イベント開催時以外は入園できないのでご注意ください)
 
  〒509-8231 岐阜県恵那市中野方町字外山1710-3
  電話:090-4792-4927(代表取締役 鈴村)
 

 
 


取材 中元千恵子(トラベルライター、日本旅行記者クラブ、日本旅のペンクラブ会員)