風土47
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旅がらすの「味」な旅の空便り

2月の旅は花と雪風呂と雛めぐり

 2月は冬と春のつづれ織り。沖縄では寒緋桜が咲き、伊豆の河津では河津桜の花盛り。なのに北海道では札幌の雪まつりをはじめ、支笏湖の氷濤まつり、旭川の冬まつりなど雪と氷の祭典が繰り広げられ、オホーツク海は流氷に閉ざされます。気候も行きつ戻りつを繰り返します。

 宿も乗物も比較的空いていて料金も低めなので、暖かさと花を求めて南国へ、雪と温泉を訪ねて北国など各地に旅をするにはいい時期です。また近年は商家や一般民家では昔のお雛様を店内や玄関、座敷などに飾って見せてくれる“雛めぐり”が、この時期、全国各地で催され、人気を集めています。卒業旅行の小グループの女子学生たちもしばしば見掛けます。のびやかな笑顔や楽しげな笑い声に「春近し」を感じる季節でもあります。

NHK大河ドラマの舞台の新潟へ

越後上越・天地人博
 例年、2~3月に旅人の動きが見られるのは放映が始まってまもなくのNHK大河ドラマの舞台。地元は町興しや地域振興のまたとないチャンスと熱を上げれば、旅行会社は旅のきっかけづくりのまたとないタイミングとお客を誘い出します。

 好評だった『篤姫』の余韻を引き継いでか、越後、新潟県を舞台にした『天地人』は好調な滑り出し。いつもは雪の中にひっそりの南魚沼、上越、長岡などゆかりの地には人が訪れて、早くも“旅の町”になっています。

 それにつられて、主人公・直江兼続の生誕地、長尾政景が築いた坂戸城の城下の六日町に行ってきました。城主政景の奥方は上杉謙信の姉(仙桃院)。その間に生まれた長尾顕景(謙信の後継者となる後の上杉景勝)の5歳下ながら、幼少にして才を認められた直江兼続(幼名・樋口与六)が側近と見込まれて共に文武に励み、成長します。謙信に呼び寄せられた景勝とともに兼続も春日山城のある高田(上越市)へ移り、与板城主となった長岡など、会津移封までの40年間を越後に足跡を残すのです。戦国戦乱の世、謙信の教えの「義」と「愛」を守り、秀吉に見込まれ、家康を恐れさせる知勇兼備の武将として終生、上杉家を支え続けたのです。

謙信公のかちどき飯
 「民あっての国」を目指し、家臣も大切に遇した上杉家では出陣の際、士気を鼓舞するため大盤振る舞いをしたという伝えにならって再現した“越後お発ち飯”が南魚沼、長岡、湯沢の店で、“謙信公のかちどき飯”が上越市の店で食べられます(要予約)。前立ての「愛」の付いたグッズやお菓子はバレンタインデーを前に売行き好調だそうです。米の粉を揚げた長岡の新潟チップスも飽きないおいしさです。

 「義」も「愛」も欠ける今の時代に、雪に耐え忍んで育った越後人・直江兼続の生きざまが問いかけるものは大きいはずです。

スイーツ王国北海道でうっとりの「白いプリン」

伊達市牧家の白いプリン
 旅がらすは北の空を目指して北海道へ。新千歳空港の土産物売店では生キャラメル、じゃがポックル、白い恋人、マルセイバターサンドなどなど不況はどこへの売れ行きでした。生キャラメルはあやかりもあって10種類をこす参入ぶりですが、花畑牧場のそれは相変わらずの行列人気。人が並ぶから並ぶ、1度食べてみたいという好奇心は元気の素ですが、40分待って1粒10秒……天下がひっくり返るほどのおいしさではありません。みやげ探し・選びに自分の感性をもっと働かせてもいいのではないでしょうか。サミットのあった洞爺湖の近くで見つけたのが伊達市牧家の「白いプリン」。濃厚でフレッシュな味を風船に閉じ込めたまん丸いプリンで、たちまち売り切れてしまう人気商品だそうですが、うまさにウットリ、ナットクの逸品。また食べたく、人に上げたい絶品なのです。
中尾隆之
中尾 隆之(旅行作家)高校教師、出版社を経てフリーランスライターに。月に10日は取材旅行の現場主義で、町並み、鉄道、温泉、味覚等の紀行コラム、エッセイ、ガイド文を執筆。とくにお菓子好きで、新聞、雑誌にコラム連載のほか、『全国和菓子風土記』の著書もある。2007年8月に「全国土産銘菓選手権初代TVチャンピオン」(テレビ東京系)に。