風土47
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 今年も半分が過ぎて、7月からは後半期の始まりです。

 日本列島は順次、梅雨が明け、太陽照り輝き、山緑濃く、海青さを深める夏本番を迎えました。各地では最高気温が30度を超す真夏日が続き、中旬を過ぎると学校は長い夏休み、下旬には会社や職場では夏季休暇を取り始めます。

 花火大会や盆踊り、海水浴、キャンプなど夏ならではの催しや企画も目白押し。家族、友人などグループ旅行が多くなることでしょう。

 7月1日からは老若男女に大ウケのJR全線、快速・普通列車に乗車できる「青春18きっぷ」も発売開始。(8月31日まで・利用期間7月20日〜9月10日)。のんびり、ゆったりの鉄道旅も楽しい時です。

清流・四万十川と絡み合って走る予土線の旅

四万十川名物の欄干なしの沈下橋四万十川名物の欄干なしの沈下橋。大雨の時など、水は橋を覆い隠すほど激流に変身
土佐昭和駅予土線の途中駅の「土佐大正駅」です。隣の駅が「土佐昭和駅」です
 夏になると清流がことさら親しげに思えてきます。その代表格の1つに四国・高知県の西南部を右に左に大きく蛇行を繰り返しながら四国中央山地から中村へと逃げ惑うように流れる約200kmの四万十川があります。四国随一の鮎の魚場で、日本最後の清流とうたわれる河川です。

 この川に沿ったり、串刺しするように走るローカル線・予土線を旅してきました。字のとおり伊予(愛媛)と土佐(高知)を結ぶ路線ですが、江川崎駅まで寄り添うのは広見川で、江川崎から先が四万十川の本流です。車窓の左右に入れ替わる川はうっとりするほど清く澄んだ表情。鉄橋とトンネルを越す度に現れる景色が新鮮です。

 この車窓風景の美しさとともに楽しませるのが楽しい駅名。停車のとたんに乗客が突如立ち上がって若者たちがカメラを構えたのは「半家」(はげ)の駅名板。思わずあたりの乗客のオジサンたちの頭を見回しました。「土佐昭和」の次が「土佐大正」。残念ながら次は「土佐明治」ではありませんでした。

 昨今なぜか鉄道本が人気です。乗り物に身を任せてのゆったりの鉄道旅行ファンも増えているようです。故郷に帰省のついでにローカル線で小さな旅もおススメです。

歴史ゆかしい直江兼継の居城した与板の町(長岡市)へ

与板の町並み三国街道の面影が残る与板の町並み。この先、寺泊へと延びています
与板城本丸の跡
直江兼続が治めた与板城の実城(本丸)の跡は標高104mの山頂に。中越を一望できる山城でした
 正月に始まった知勇兼備の武将、上杉家の家臣・直江兼継が主人公のテレビドラマ「天地人」もいよいよ佳境。直江家の娘・お船(せん)と結婚、直江家を継いで城主となった与板(現在は長岡市)にも観光客がたくさん訪れています。

 与板は長岡市街の北方、信濃川左岸にある、城主直江兼継が美濃から招いた刀工による打刃物の町で、現在8人の伝統工芸士によって技術や製品が今に伝わります。

 三国街道の宿駅としての面影を残す古い町並みの背後の丘陵に、兼継が米沢に移るまでの40年間治めた与板城跡があります。実城(本丸)へは登り口から歩いて20分ほど。土塁や空濠、郭跡に往時を偲ぶばかりですが、中越地方を見晴らせます。兼継お船ミュージアム(与板歴史民俗資料館)ではそうした歴史を知ることができます。

 良寛の父の出身地でもあり、師は晩年までこの町に足を運んだそうですし、料理屋や食堂、菓子店もあり、兼継フィーバーをきっかけに磨きかければ、ちょっとした「旅の町」に生まれ変われるような気がしました。

 問合せ=与板観光協会 0258・72・3100

中尾隆之
中尾 隆之(旅行作家)高校教師、出版社を経てフリーランスライターに。月に10日は取材旅行の現場主義で、町並み、鉄道、温泉、味覚等の紀行コラム、エッセイ、ガイド文を執筆。とくにお菓子好きで、新聞、雑誌にコラム連載のほか、『全国和菓子風土記』の著書もある。2007年8月に「全国土産銘菓選手権初代TVチャンピオン」(テレビ東京系)に。