風土47
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五條市の鯉のぼり
吉野川の河原に掲げられて泳ぐ鯉のぼりの光景は6月初めまで見られます(奈良・五條市新町通りにて)
 ♪夏も近づく八十八夜……

 今年の春は激しく行きつ戻りつの季節の足どりですが、5月2日は小学唱歌にも唄われる、茶摘みが始まる八十八夜。青葉若葉の季節になりました。

 空には鯉のぼりが泳ぎ、不景気風にも何か緑の香りと暖かな光が感じられる5月です。旅ごころも疼くことでしょう。

旅ごころうごめく『奥の細道』旅立ちの季節

芭蕉と曾良の銅像
白河の関そばの公園に立つ芭蕉と曾良の銅像
芭蕉丸で松島へ
芭蕉と同じく塩竈港から松島へ船で向かう。船名はずばり「芭蕉丸」         
 今から321年前、かの俳聖・松尾芭蕉が元禄2年(1689)、江戸・深川から『奥の細道』に旅立ったのは今の暦で5月16日。この日が日本旅のペンクラブの提唱による「旅の日」です。

 思えば東北地方は緑と花と田植え風景が見られる旅に絶好のシーズンです。

 その時節に先だってこのコースへの旅のキャンペーンを展開している「東北観光推進機構」の招きで、白河の関を出発点に芭蕉の足跡をたどる旅をしてきました。

 北方の守りとして設けられた白河の関は、“陸(みち)の奥”、“未知の国”の入口。能因法師や西行らに詠まれた歌枕の地です。800年後、先人を追慕する芭蕉がこの関に差しかかり、「旅心定まりぬ」と感慨深く、同行の曾良と北へ向かったのです。

 この先、私たちは奥州街道の宿場として栄えていた須賀川、文字摺り石や義経忠臣の佐藤兄弟の眠る福島や飯坂、端午の節句の頃の仙台、古代東北の都だった多賀城、塩釜神社、松島、石巻、登米、平泉へと歩を進めました。

 当時は俳人芭蕉の名は俳句をたしなむみちのくの名士たちにとどろき、いくつかの街では大歓待され、句会も催しています。芭蕉がした大きな旅は10度ありましたが、46歳、5ヶ月余りの『奥の細道』紀行は、「月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人なり」と唱えた芭蕉の人生最大にして、人生締めくくりの旅でもありました。

 先人の思いを道連れに、私たちもまた「ぼくの細道」を歩いてみたいものです。それぞれの場所には句碑や芭蕉の銅像が当時の様子をしのばせてくれます。

※なお東北観光推進機構では、「新宿駅で“おくのほそ道」を体験しよう」のキャンペーで、東北各地で詠んだ松尾芭蕉の名句とその土地の魅力を、5月9日まで写真やポスターと俳句で紹介。場所は京王線新宿駅(JR線との連絡中央地下通路です)。

<問い合わせ>
・東北観光推進機構☎022‐721-1291


いにしえが心と目に甦る『平城遷都1300年祭』

奈良・大極殿
復原完成なったばかりの平城宮のシンボルの大極殿
 今年は藤原京から奈良に都が遷されてから1300年。奈良朝の平城宮跡をメイン会場にただ今、『平城遷都1300年祭』(4月24日~11月7日)が開催されています。

 開幕直後に訪ねると、大変な混みようで、広大な宮跡も人でいっぱいあふれていました。東西1.4㌔、南北1㌔に及ぶ広大な宮内では発掘調査によって遺構が次々に判明。 往時の姿はほんの一部ですが、平成10年、復原が始まった壮麗な二重門の正門だった朱雀門や天皇の宴遊の場だった東院庭園、政治・儀式の場であった宮内最大の建物で核となる雅やかに美しい第一次大極殿などを主な舞台に公開展示されます。

 平城京歴史館では原寸大の遣唐使船が復元展示、平城京なりきり体験館では天平衣装体験や平城宮仕事(木簡作成)もできます。

 いにしえの都の人々の暮らしぶりや息遣いは、豊かな知識と想像力によって時空を超えて甦ってくるでしょう。

 期間:4月24日~11月7日 /時間:9時~16時30分

 交通:近鉄大和西大寺駅から徒歩約10分。近鉄大和西大寺駅、およびJR奈良駅から無料シャトルバスあり

 入場料:平城宮跡会場は無料。各館入場や体験などは有料(500円)

<問い合わせ>
・平城遷都1300年祭コールセンター☎0742‐25‐2010/04/30
 『平城遷都1300年祭』公式ホームページ:http://www.1300.jp/

中尾隆之
中尾 隆之(旅行作家)高校教師、出版社を経てフリーランスライターに。月に10日は取材旅行の現場主義で、町並み、鉄道、温泉、味覚等の紀行コラム、エッセイ、ガイド文を執筆。とくにお菓子好きで、新聞、雑誌にコラム連載のほか、『全国和菓子風土記』の著書もある。2007年8月に「全国土産銘菓選手権初代TVチャンピオン」(テレビ東京系)に。