風土47
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長崎の茂木びわ
6月は梅だけでなく「びわ」のシーズンです(これは長崎の茂木びわ)
千葉の房州びわ
こちらのびわは千葉の房州びわ。長崎と千葉はびわの2大産地です(比べてみるのもいかがですか)
 6月は梅雨(ばいう)の季節。しとしと、じとじと湿気も多く、気の晴れない日々が多くなります。しかしこの雨は字のごとく、青梅を成熟させる貴重な天の恵みで、米の国ニッポンでは欠かせない慈雨でもあります。

 また黴雨(ばいう)とも書くように黴(かび)が生じやすい月でもあります。

 じつは食中毒は8月の炎暑の盛りより6月が多いのです。

 こんな時の旅こそ、しっとり、じっくり、古い町並みやミュージアム、花巡りが似合いそうです。

良寛の故郷、妻入り家並みが連なる出雲崎へ~佐渡の金を運んだ港町と北国街道の宿場町~

名物“浜焼”
朝の9時頃には焼き終える。目を離さないで向きを変えながらていねいに焼く
串刺しの切り身サバ
これが串刺しの切り身サバ。店内で食べられるが宅急便で取り寄せもできる
良寛堂の良寛坐像
日本海に向かって座す良寛堂の良寛さんの像
 「荒海や佐渡に横たふ天の河」

 『奥の細道』の旅で松尾芭蕉が名句を残した日本海の港町・出雲崎を旅してきました。柏崎から新潟に向かうローカル線の越後線で30分ほど。駅前から小さな峠を10分ほどバスで越えると、一本道に家並みが続く町があります。

 ここは佐渡金山の陸揚げ港。北国街道の宿場町としても栄えました。天領となり代官所が置かれ、佐渡の金銀はここから北国街道・中山道を継いで江戸幕府に運ばれました。100軒近くの回船問屋が軒を連ねていた繁栄の名残は、3.6㌔も連なる間口が狭く、奥行きが長い妻入り(棟と直角の壁面=Λの部分が出入り口)の民家です。

 そんな通りを歩いていて匂いに誘われたのが、大ぶりの切り身のサバやカレイなどを串に刺して鮮魚店が炭火で焼く名物“浜焼”でした。

 朝の9時頃には焼きが終わり、宅配便の荷造り中でしたが、切り身サバを1本(300円)を注文。店内でかぶりつくと、アツアツ、ふっくら、余分な脂や水分が落ちてうまみが凝縮。何しろ新鮮さと、「中までふんわり焼けるのが炭火ならではなんです」とは、焼き名人といわれる石井鮮魚店の奥さんの話。地カレイ、イカ、赤魚、メギスなど宅配もOKです。1束3本800円くらいから。昔は20軒以上あったそうですが、今は3~4軒に減ったといいます。

 また出雲崎は良寛の故郷。名主橘屋山本家の長男に生まれ、名主見習の身だったのに俗事を好まず、弟に家督を譲って18歳で出家。諸国を行脚。歌人として後世に名を残したことはご存じのとおりです。

 先人の思いを道連れに、私たちもまた「ぼくの細道」を歩いてみたいものです。それぞれの場所には句碑や芭蕉の銅像が当時の様子をしのばせてくれます。

 歌といえば少々俗っぽい話ですが、出雲崎はジェロの演歌「海雪」の舞台。彼はいずもざき観光大使に就任しています。

<問い合わせ>
・出雲崎町観光協会☎0258-78-2291
・石井鮮魚店☎0258-78-2025
 出雲崎町羽黒町475

中尾隆之
中尾 隆之(旅行作家)高校教師、出版社を経てフリーランスライターに。月に10日は取材旅行の現場主義で、町並み、鉄道、温泉、味覚等の紀行コラム、エッセイ、ガイド文を執筆。とくにお菓子好きで、新聞、雑誌にコラム連載のほか、『全国和菓子風土記』の著書もある。2007年8月に「全国土産銘菓選手権初代TVチャンピオン」(テレビ東京系)に。