風土47
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ひときわあでやかな色合いの京都・円山公園の桜
 4月は入学・入社・進級・転勤等、万物の甦りと足並みそろえるように、日本は旅立ちの季節です。

 「さあ」「いざ」という時に、東北・関東を襲った地震・津波の巨大な自然災害。命を奪われ、暮らしを覆され、心をえぐられた被災に、加えて先行きが見えない福島原発の事故災害。計画停電など暮らしをはじめ産業・流通など影響は大きく深く広がっています。

 被災地の皆さんには心よりお見舞い申し上げます。

 そんな切ないスタートの今年の4月。遅れ気味の開花の桜の花見に興じる気持ちもしぼみがちですが、花や木や生き物たちの輝きに誘われ、心弾ませて歩き出したいものです。

 「年々歳々花相似たり、歳々年々人同じからず」。人生の無常がことさら感じられる今年です。

温泉饅頭発祥の茶褐色の名湯・伊香保温泉(群馬県)


伊香保のランドマークの石段街。昨年に更に延びた

源泉直結の茶褐色の湯があふれる伊香保温泉露天風呂

茶褐色の温泉饅頭発祥という「勝月堂」の湯乃花饅頭
 榛名山の中腹、急傾斜地に石段を重ねる伊香保(いかほ)温泉は、天正4年(1576)、計画的に温泉街が生まれたという歴史を誇る名湯です。石段街の上の最奥の山腹に湧出する源泉は、空気に触れると茶褐色になる鉄分を含んだ硫酸塩泉で、“黄金(こがね)の湯”と呼ばれています。

 湯の噴出が眺められる源泉湧出口近くには、いわば生まれたての湯が源泉掛け流しで堪能できる伊香保露天風呂があります。石段下には旅館に配湯される源泉の小間口が眺められるのぞき窓や、下方には日帰りの共同湯の石段の湯があります。この茶褐色の湯が実は温泉饅頭の色のヒントになりました。

 全国各地の温泉にたいていある温泉饅頭の発祥地には諸説がありますが、伊香保の「湯乃花まんじゅう」がいまや有力な定説です。

 明治43年(1910)、何か自慢できる温泉名物をと「勝月堂」の初代当主の半田勝三氏が、白い皮が通り相場のふつうの饅頭と異なる、伊香保の湯に似せた茶褐色の饅頭を考案。昭和天皇が群馬で行われた陸軍特別大演習にこの饅頭を買い上げ、配られたことから大ブレーク。以後、温泉地の饅頭がこの皮の色に倣ったといわれています。

 しかし伊香保では10店のほとんどが温泉饅頭と名乗らず「湯の花饅頭(まんじゅう)」と称しています。発祥地の誇りからでしょうか。

<問合せ>
・伊香保温泉観光協会 ☎0279-72-3151
・伊香保露天風呂 ☎0279-72-2488
・勝月堂 ☎0279-72-2121

桜咲き、柳芽吹く情緒豊かな古湯・城崎温泉(兵庫県)

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柳並木が続く川の両岸に旅館や土産物店が軒を連ねる

ロープウェイがかかる大師山からの桜越しの温泉街
 カラコロカラコロ…浴衣掛けの泊まり客が下駄の音を鳴らしてが行き交う兵庫県・但馬の名湯・城崎温泉。4月になると温泉街を流れるともなく流れる大谿(おおたに)川の両岸に連なる柳並木が芽吹きます。

 今から1400年も昔、コウノトリが傷を癒していたことから発見されたという古湯中の古湯の城崎は、100軒近くの木造2~3階建ての旅館が連なり、“外湯”と呼ばれる7つの共同浴場のある情緒豊かな温泉地です。

 『城の崎にて』の志賀直哉をはじめ多くの文人たちが訪れ、愛した風雅な宿や趣ある湯の町風情が今もそこここに息づいています。

 城崎文芸館、麦わら細工伝承館、温泉寺などの見どころとともに、但馬牛や松葉ガニなどの味覚にも誘われます。

 城崎温泉のある豊岡市は天然記念物コウノトリの日本最後の生息地。野生復帰に取り組んだコウノトリが空を飛翔するやさしい町でもあります。

<問合せ>
・城崎温泉観光協会 ☎0796-32-3663
・豊岡観光協会 ☎0796-22-8111

中尾隆之
中尾 隆之(旅行作家)高校教師、出版社を経てフリーランスライターに。月に10日は取材旅行の現場主義で、町並み、鉄道、温泉、味覚等の紀行コラム、エッセイ、ガイド文を執筆。とくにお菓子好きで、新聞、雑誌にコラム連載のほか、『全国和菓子風土記』の著書もある。2007年8月に「全国土産銘菓選手権初代TVチャンピオン」(テレビ東京系)に。