風土47
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あじさい寺で名高い6月半ばの鎌倉・明月院
 東日本大震災からの復興が始まっています。前向きに歩み出す被災地の人々の表情に救いを感じながらも、津波の傷跡を痛々しく伝えるテレビ、新聞等の映像や記事に今なお胸が詰まります。

 野辺には桜、梅、ツツジ、バラ、やがて紫陽花など季節の草花が何か人間の心を励ますかのように咲き続きます。

 被災地への配慮、余震への警戒、終息見えない原発の放射能漏れなど自粛や出控えムードもあって全国の観光地への人出が激減しているようです。これまで地域振興を支えてきた観光客の動きが、低迷の中にある地域復興にも大きな力となるはずです。いつものように旅をしましょう。

 頃は若葉から青葉へと活力みなぎる、旅に一番の季節です。

芭蕉の「奥の細道」を辿って松島から石巻へ(宮城県)


以前の姿を取り戻しつつある日本三景・松島

市街を見下ろす日和山に立つ芭蕉と曾良の像

日和山から見下ろす石巻市街と石ノ森萬画館
 俳聖・松尾芭蕉が江戸・深川から「奥の細道」に旅立ったのは、元禄2年(1689)3月27日(陽暦5月16日)のことでした。

 みちのくの玄関・白河の関を越えたのは若葉・青葉の輝く今頃の6月中旬。そのあと今回、地震・津波に襲われた仙台、多賀城、松島へと歩き、6月26日には道に迷って石巻に着いています。

 ここ2~3年、「奥の細道」を訪ね歩いている私が仙台から石巻、登米へと旅したのは、大震災の1ヶ月余前の2月1~3日でした。

 出会った人や街や風景が失われたことに今も涙が止まりません。

 それでも日本三景の松島は260余の飛び散る島々が津波をやわらげ、奇跡的にも被害を小さく留め、観光地としてなんとか復活しているようです。

 けれど芭蕉と曾良の銅像が立つ小高い日和山公園から見下ろした石巻の街は壊滅状態と伝わってきます。

 北上川の中州に立つ「サイボーグ009」や「仮面ライダー」などのヒット作で知られる漫画家・石ノ森章太郎氏の作品を展示する石ノ森萬画館も被災し、閉館中とのこと。伝えたく、記憶にとどめたい思いで、お悔やみとお見舞いとともに一刻も早い復興への祈りを込めて、二度と甦らない風景をここに添えました。

<問合せ>
・宮城県観光課 ☎022-211-2824

風情残る城下町の無添加の手づくり固羊羹(静岡県)

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城下町の面影残す旧街道の横須賀の家並み
(写真:遠州横須賀倶楽部・鈴木武史)

甘さがさっぱり、コクのある「愛宕下羊羹」

 
 茶畑の緑のうねりが美しく広がる駿河路。その中央南部、遠州灘に臨む旧大須賀町横須賀(現掛川市)は、天正年間、徳川家康の命によって築かれた横須賀城に始まる城下町です。

 中でも東西に走る旧街道沿いには切妻造り平入り・中ニ階の格子をはめた商家など古い職人・商人町の家並みが残っています。

 江戸末期以来の天然醸造ににこだわる醤油醸造元、造り酒屋、手作り味噌店をはじめ、呉服屋、陶器店、提灯屋、割烹旅館など職人、商人の技と心意気を伝える商家が、懐かしく穏やかなたたずまいを見せて点々と続いています。

 そんな中で見つけたのが、歯応えしっかりながら舌ざわりなめらかな「愛宕下羊羹」(あたごしたようかん)です。まろやかで、べとつかず、コクがある甘さは、熟達の職人が天候や品質を読み取った配合、火加減の絶妙さからくる餡の丁寧な練り上げが理由でしょうか。舟(パット)に流して固め、裸のまま包むという添加物一切なしの昔ながらの製法です。

 羊羹の王者と巷で言われる「○○や」に勝るとも劣らぬおいしさで、劣るとすれば1週間~10日という賞味期間の短さ(?)、勝るとすれば1本600~700円という値段の手軽さ(?)。かなりの逸品なのです。小豆・白・宇治茶羊羹各1本600円、栗羊羹700円。詰合せが人気です。

 9:30~15:00(売り切れ次第)、水曜、第2・3・5日曜休

 これらの歴史や町並み、伝統、職人技、味、人などの交流を含めて町おこしのルネッサンス運動を続けている「遠州横須賀倶楽部」もあります。町並み案内のアドバイスもしてくれます。

<問合せ>
・掛川市観光振興係 ☎0537-21-1149
・(有)愛宕下羊羹 ☎0537-48-2296
・遠州横須賀倶楽部 ☎0537-48-0190(プラザ大須賀内)

中尾隆之
中尾 隆之(旅行作家)高校教師、出版社を経てフリーランスライターに。月に10日は取材旅行の現場主義で、町並み、鉄道、温泉、味覚等の紀行コラム、エッセイ、ガイド文を執筆。とくにお菓子好きで、新聞、雑誌にコラム連載のほか、『全国和菓子風土記』の著書もある。2007年8月に「全国土産銘菓選手権初代TVチャンピオン」(テレビ東京系)に。