


金沢ならではの「氷室万頭」と涼感あふれる夏菓子の「華金箔」(金沢・坂尾甘露堂)

東日本大震災による福島原発の放射能漏れの収束が見えない中、節電の呼び掛けで会社、工場、施設、商店、家庭など今年の夏は冷房温度の高めの設定が余儀なくされ、電車やオフィス、ビル、家庭などひときわ暑い夏になりそうです。
そこで暮らしの課題は賢い消夏法。うちわ、打ち水、風鈴、簾(すだれ)などかつて日本の夏の風物詩だったものも見直されています。また旅行地も“涼感”を求めて高原や北国に人気が出ています。
6月末に金沢では多くの菓子店で氷室万頭(ひむろまんじゅう)が製造販売され、7月1日の「氷室の日」には無病息災を願って大半の市民は何個か口にします。夏まで室に貯めておいた雪(氷)を加賀藩が幕府に届けた風習が今も生きているのです。娘の嫁ぎ先へ届ける習わしが今も続いているようです。


坂道沿いに宿が点々と現われる高湯温泉。左手の建物が共同浴場「あったか湯」

硫黄泉掛け流しの安達屋の大露天風呂

工夫を凝らしたおいしい山菜料理。秋はキノコ料理が多種多様(静心山荘)

広い庭園に茅葺き湯小屋をもつ旅館玉子湯
以前、磐梯吾妻スカイラインで会津に向かう時、素通りしましたが、今回「真に源泉掛け流しの名湯」の友人の言葉に誘われて出かけてきました。
福島駅前からバスで40分ほど。曲がりくねりながら標高を上げる県道沿いに点々と現われる9軒ほどの新旧・大小の旅館。そこから立ち昇る硫黄の匂いや緑の山あいを流れる爽やかな風は、湯治場というより高原保養温泉の趣でした。
温泉地の中心は湯治場の湯屋をイメージして平成15年に建てられた木造りの共同浴場「あったか湯」(250円)です。わずか60メートル先が自噴源泉なので、湯は加水加温なしの湧き立ての源泉そのまま。透明な湯が湯船に注がれるうちに空気に触れて白濁する硫黄泉です。
泊まった旅館「玉子湯」も茅葺の湯小屋などいろいろな湯船をもつ明治元年創業の老舗。他に開湯以来400年の歴史を誇る「安達屋」の霊泉・薬師の湯や露天風呂・大気の湯、旅館「ひげの家」の檜の香りと肌触りやさしい滝の湯、「吾妻屋」のログハウス風の露天風呂など、どの宿も効能高く、熱めの42~43℃の快適な源泉掛け流し。自然湧出の湯量豊富さ、趣向を凝らした湯船などに“温泉力”を感じました。
唯一の気掛かりは“フクシマ”の名でひとからげにされる放射能線量ですが、「あったか湯」入口で随時測定している数値は0.16~0.23マイクロシーベルト。南相馬からの市民も避難しているように、十分に安心の地といえそうです。
ここは福島原発から直線でも約65キロの遠隔の地。涼感も求めるこの夏の旅にお勧めしたい、首都圏から手近な名湯です。
東北新幹線福島駅からバスで約40分、東北自動車道福島西I.Cから車で約30分。
1泊2食8025円~2万1150円、多種の宿があります。
・高湯温泉観光協会・旅館協同組合 ☎024・591・1125


新潟港~両津港を結ぶジェットフォイル

佐渡金山のランドマークの道遊の割戸

道遊坑には鉱石搬出のトロッコの線路も

根や枝が異形の天然杉が見ものの遊歩道

蒸した米粉の皮と餡がおいしい沢根だんご
その佐渡へは平成16年に一島一市になる前ですから、10年近く経っています。新潟港からのジェットフォイルは時速80キロ、1時間少しで両津港に到着しました。
訪ねたのは6月初め。カンゾウやイワユリの咲き乱れる季節でした。
相変わらずかな、と立ち寄った定番の佐渡金山はこれまでの宗太夫坑コースに加えて、平成元年まで操業していた「道遊坑コース」が見学できるようになっていました。山を真ん中を絶ち割ったような奇景の下の道遊脈は主要鉱脈。近代化された模範鉱山といわれた産業遺産が見てとれます。
案内人の分かりやすい解説付きの40~50分の観覧は、坑内に置かれた鉱石を運び出したトロッコなどに日本の近代化の鼓動が伝わってくるようでした。本旨とは外れますが、平均気温10℃という涼しさがことに快適でした。
目新しいところでは、今年5月に整備されたばかりの外海府海岸の石名(いしな)から入る「大佐渡石名天然杉遊歩道トレッキング」(約800メートル・1時間)。佐渡の特異な自然環境によって変形や合体した杉の巨木の根や枝、幹が目を楽しませてくれました。
佐渡の夏はこの原生林やトキの里山ハイキングのほか、まち歩き散歩や海水浴などたくさんのエンジョイプランが用意されています。
両津港でみやげに買った「沢根だんご」はつるりと軟らかな、甘さ抑えめの美味しい佐渡名物でした。
<問合せ>・佐渡観光協会 ☎0259・27・5000