

紫や白、絞りなどの花をひらくハナショウブ(鎌倉・東慶寺にて)
学校唱歌でもおなじみの鯉のぼりが青空の下で泳ぐ今日この頃。月の初めは連休ですから、行楽やスポーツに興ずるのにかっこうのシーズンです。
順次咲き続くツツジ、バラ、ハナショウブ、アジサイなどの花々や青空にわき立つ白雲にも旅ごころが誘われます。5月は自然が最も精気に満ちる時かも知れません。
松尾芭蕉が「奥の細道」への旅でみちのくへ向けて旅立ったのも、今の暦で5月16日。この日は日本旅のペンクラブが提唱する「旅の日」ですが、乗り物混雑、道路渋滞、宿泊費高値、対応力低下気味の連休を過ぎて10日後。行く人も迎える人もゆったりやさしく、いい旅ができる時ではないでしょうか?
木々の香に むかひて歩む 五月来ぬ(水原秋桜子)


現在の橋でも100年の時に耐える日本橋

鰹節や昆布など海産物店が多い日本橋界隈

島根県と奈良県のアンテナショップもある

貨幣博物館で買ったカステラ饅頭「貨幣焼」(450円)、お札せんべい
雑誌や書籍、テレビなどでも“東京さんぽ”“江戸・明治の東京探訪”などの企画がずいぶん多くなりました。そうした取材要請も多くなって、訪ねてみると確かに再発見・新発見もたくさんあって興味が尽きません。
そんな1つの日本橋界隈を歩いてきました。日本橋は江戸時代の初めに埋立地造成の際に河岸に架けられたのが最初です。度々の架け替えを経て現在の橋は明治44年(1911)にできた花崗岩二重アーチ型。文字は15代将軍・徳川慶喜公の筆になるという100年を迎えた歴史的な建造物です。
道路の中央部には“日本国道路元標”がはめ込まれているように、江戸から各地へ延びる五街道はここが起点になったのでした。一角には横浜市29㌔、名古屋市131㌔、京都市503㌔、千葉市37㌔、新潟市344㌔など各地への距離が記されています。ローマの如く“日本の道は日本橋に通ずる”ということなのでしょうか。
魚河岸といえば築地でおなじみですが、実は“日本橋魚市場発祥の地碑”が示すようにここが始まり。魚など海産物はここで水揚げされたのです。八木長、大和家、にんべん、鮒佐など鰹節・昆布・佃煮の店や、山本、山本山など海苔の店が界隈に今も多いのはそんな理由からなのです。
橋の北側には江戸の越後屋呉服店に始まる日本最初の百貨店の三越、その創業者の三井高利が興した両替商が前身の三井銀行(現三井本館)が並びます。本館の7階にある三井記念美術館は、財閥三井家が収集した国宝を含む数多くの美術工芸品が展示してあります。
三井本館の西側は江戸時代に金貨を鋳造した“金座”のあった地で、そのゆかりから明治15年(1882)、今に残る銀行の総元締めの日本銀行本店(日に4回見学ツアー・1週間前まで要予約・無料)が建てられたのです。向かいには小判から日本・外国の貨幣まで見られる貨幣博物館(無料)もあります。
ここ日本橋地区は“金座“の場所。隣接の”銀座“とは格が違う、という誇りも密かにあるようです。住居表示に「日本橋○○町」と日本橋を付ける町が今も多く残るのはそんな思いの表れかもしれません。
交通は東京メトロ銀座線・半蔵門線三越前駅、東西線日本橋駅下車
<問合せ>・中央区観光協会 ☎03・3546・6525
・日本銀行情報サービス局見学受付 ☎03・3277・2815
・貨幣博物館 ☎03・3277・3037


広壮な家並み続く旧東海道沿いの有松

有松絞りの製品を商う井桁家・服部邸

彩り美しい有松絞を販売する絞り会館

町歩きでひと息ついた寿限無茶屋の昼食
訪ね入ると、白い塗籠(ぬりごめ)造り、虫籠(むしこ)窓の豪壮な町家が通りの両側に連なり、日本建築の美しさを伝えていました。
有松は東海道五十三次の池鯉鮒(知立)と鳴海の間に設けられ“間(あい)の宿”で、茶屋で賑わいました。ここを通る旅人に絞り染めと手織木綿を結びつけて売り出した“有松絞り”が評判を呼び、手ぬぐいや布が飛ぶように売れたそうです。その繁盛ぶりは北斎や広重の浮世絵にも描かれました。
これを商って財をなしたのが竹田邸をはじめ、井桁屋・服部邸、小塚邸など絞り問屋で、その重厚で広壮な建物が時を止めたかのように並んでいました。
その伝統工芸を伝承する「有松・鳴海絞会館」(300円)では彩り鮮やかな数々の絞り製品の展示即売、伝統工芸士による絞りの実演も見られました。
6月第1土曜日(今年は6月2日)に絞り製品の販売や絞り体験もできる「有松絞りまつり」が催されます。
そういえば大軍を率いて京に進撃する今川義元を小勢の織田信長が奇襲した歴史に名高い“桶狭間(おけはざま)”の古戦場が近くにありました。
交通は名鉄名古屋駅から有松駅まで準急で20分、下車後すぐ。
<問合せ>・名古屋市文化観光部観光推進室 ☎052・972・2425
・有松・鳴海絞開館 ☎052・621・0111


・3個600円~
・東京都墨田区向島5-5-22
・電話03・3622・0081