風土47
今月の旅・見出し


赤、黄、橙などの色とりどりの提灯が美しさと温かさを演出する長崎ランタンフェスティバル
 2月は冬と春のはざまですが、3日は節分、4日は暦の上では立春と、春が一歩一歩進んでゆきます。昼が少しずつ長くなっているのも感じられます。
とはいえ「♪春は名のみの風の寒さよ~」(早春譜)とあるように、日本列島の多くはまだ寒気と雪の中のことでしょう。

 そんな中ですが、温泉旅行や雛人形めぐり、観梅などはいかがでしょうか?

 長崎・新地中華街では1月31日~2月14日は「長崎ランタンフェスティバル」が催されています。長崎に住む中国人が旧正月を祝ってきた春節祭から長崎全体のお祭りに発展、いまや期間中100万人を数える行事になりました。
身内や身近な人の受験生の合格の知らせも、心に花を咲かせてくれる季節です。


にっぽん・お菓子紀行~旅で出合った名菓・珍菓~梅ヶ枝餅/博多通りもん(福岡県)

焼き立てが一番おいしい「梅ヶ枝餅」
洋と和の風味が絶妙な「博多通りもん」
 学問の神様・受験の守り神、太宰府天満宮は2月になると梅が花開き、馥郁たる香りを放ちます。合格祈願の人がとりわけ多い月ですが、太宰府といえば全国でこの辺りにしかない「梅ヶ枝餅」(1個105円)が名物です。米粉皮で漉し餡を包み、型板にのせて鉄板で焼いた平たい餅で、表に菅原道真公の紋どころの“梅壺”の焼印を押した素朴な餅です。あっさりした甘さと表面がパリッ、中がもっちりの食感が人気の秘密です。門前通りには多くの店があります。店頭で焼く香ばしさにひかれてつい引き込まれます。どの店も劣らぬ美味しさです。

 福岡では今人気なのが九州内でしか販売しない明月堂の「博多通りもん」(6個入り630円)。ミルク・バターを使った生地で滑らかな舌触りの白餡を包んで焼いた和洋がみごとに溶け合った美味しさが子どもからお年寄りまで幅広く人気を得ています。

・明月堂川端店☎092・281・1058、取り寄せ0120・158・127


宮城県■舟運で栄えた丸森町のシンボル・豪商の齋理屋敷


丸森町の繁栄ぶりを随所に物語る「齋理屋敷」

繁栄していた昭和10年頃の丸森町のジオラマ

コーヒーやランチが味わえる蔵のカフェもある
 宮城県最南端に位置する丸森(まるもり)町は山あいにひらけた農業の町です。町域の北を流れる阿武隈川に沿うように走る福島駅と槻木駅を結ぶ阿武隈急行線沿いにあります。中心街には縄文時代から今日まで阿武隈川の流れとともに物資の流通などで栄えた名残が見られます。

 その象徴が7つの蔵と2つの邸宅からなる「齋理屋敷(さいりやしき)」です。江戸後期から昭和初期にかけて7代にわたって舟運で栄えた豪商・齋藤家から建物も収蔵品も寄贈され、蔵の郷土館として公開したものです。

 呉服や太物を商った店蔵をはじめ明治後期建築の立派な嫁(よめご)蔵、業(なりわい)蔵、住蔵、居宅など広い敷地にあり、繁栄ぶりのすごさが手に取るように分かりました。建物、収蔵品がそのまま宝の歴史館です。3月には雛人形が展示されます。

 館内の展示によればこの辺り昭和初期まで白壁土蔵や屋敷が軒を連ねる商人町だったことが分かります。かつての繁栄が物と暮らしぶりから伝わってきます。必見のむかし町の1つです。

9時30分~17時(12~2月は16時30分まで)、月曜休、600円。

〈交通〉
・福島駅から、仙台から東北本線槻木駅乗り換え阿武隈急行線で共に約1時間、丸森駅下車。
〈問合せ〉
・蔵の郷土館・齋理屋敷☎0224・72・6636
・丸森町商工観光課☎0224・72・3017

愛知県■レンガの煙突や窯場が連なる焼き物の町・常滑


坂道に招き猫が連なるとこなめ招き猫通り

土管と焼酎瓶が重ねられた常滑のシンボルの土管坂

赤レンガの煙突や放られた陶器に感じる焼き物の里

常滑らしい銘菓の森田屋の朱泥おこし」(1本500円)
 知多半島中西部、常滑(とこなめ)は古くから知られた焼き物の町です。中部国際空港(セントレア)の玄関口として存在感が増しましたが、やはり窯場や煙突、陶器、土管、陶片など散りばめられた陶郷の風情に浸りたくて、起伏のある丘陵を迷路のように巡る道をあるきました。

 駅から南へ、大通りを左へ歩いて最初に目に止まったのはコンクリートの壁に点々とはめ込まれた39体の「招き猫」。常滑は小判を抱えた2頭身の招き猫の全国生産が約8割という招き猫の町なのでした。

 陶磁器会館をスタートに付けられた「やきもの散歩道」を歩くと、坂の上からはレンガの煙突、路地には黒板塀の窯屋、空地には土管や陶片など街全体が土の温もりや懐かしさに包まれていました。

 とくに印象深かったのは土管坂。切り通しの坂道の左右の壁に土管と焼酎瓶の壁があり、滑り止めに陶片が埋め込まれや焼き物ぐるみの一角で、常滑のシンボルです。この坂を手押し車を杖代りに上って行くお年寄りに出会いました。会釈をすると立ち止まり、腰をのばしてひと息ついてから「坂の上に家があるの。眺めはいいのよ」とにっこり。

 ところで常滑焼は12世紀初頭を起源とする古陶です。無釉(むゆう)や自然釉を肩に流した壺や甕(かめ)など主でしたが、のちに朱泥焼が伝わり、急須や花器、茶器、さらに土管、火鉢、植木鉢など幅広く日用雑器がつくられています。

〈交通〉
・名鉄名古屋駅から名鉄常滑・空港線急行で37分、常滑駅下車
〈問合せ〉
・常滑市観光案内所☎0569・34・8888
・常滑市商工観光課☎0569・35・5111
中尾隆之
中尾 隆之(旅行作家)高校教師、出版社を経てフリーランスライターに。月に10日は取材旅行の現場主義で、町並み、鉄道、温泉、味覚等の紀行コラム、エッセイ、ガイド文を執筆。とくにお菓子好きで、新聞、雑誌にコラム連載のほか、『全国和菓子風土記』の著書もある。2007年8月に「全国土産銘菓選手権初代TVチャンピオン」(テレビ東京系)に。