風土47
今月の旅・見出し


ひまわりの里の元祖・北海道北竜町
雲の峰 いくつ崩れて 月の山

 今から325年前、奥の細道の旅の途中、今の暦で7月22日頃、松尾芭蕉が月山で詠んだ一句です。「雲の峰」とは積乱雲のことで、モノの本には陽射しの強いときの激しい上昇気流によって生ずるとあります。もくもく、むくむくと渦動することから「入道雲」の呼び名でも通っています。

 思えば夏の空は表情豊かな白い雲の季節。木は百日紅(さるすべり)の花、野や畑は向日葵(ひまわり)。海も山も川も色も光も輝く季節です。

 旧盆帰省や甲子園球場で郷土意識、広島、長崎の式典で平和意識が高まる月ではないでしょうか。

にっぽん・お菓子紀行~旅で出合った名菓・珍菓~タルト/山田屋まんじゅう(愛媛県松山市)

柚子の香りの「一六タルト」
一子相伝の「山田屋まんじゅう」
 松山はかつて15万石の城下町。中心街の勝山山上に石垣を従えて天守閣が姿を見せます。今は人口51万余、高層ビルが林立する四国第一の都会です。

 江戸時代、藩主松平氏が長崎から持ち帰った南蛮菓子タルトをヒントに生まれたのが餡入りタルト。これを松山銘菓に広めたのが、創業明治十六年に因んで店名と菓名に付けた一六本舗です。カステラ生地で名産のユズを入れたむき餡を手巻きしたもので切り口は“の”の字。さっぱりした甘さと香りが清々しい飽きない和洋のロールケーキです。他にも六時屋が「六時屋タルト」(10切れ・609円)を製造販売。それぞれにファンがありますが、全国区は「一六タルト」(11切れ・648円)でしょう。他に夏目漱石も好んだ「坊ちゃん団子」も松山の名物団子です。

 また江戸時代最後の慶応3年創業の山田屋の一子相伝の製法を守る「山田屋まんじゅう」も名菓で、北海道十勝産小豆のこし餡を独特の極薄皮に包んだ一口サイズの饅頭です。

・一六本舗勝山本店☎089・941・0016
・六時屋☎089・941・6666
・山田屋☎089・978・4818

千葉県■海の幸や眺めに恵まれた南国的な観光地・館山


陸続きの無人島・沖ノ島

波穏やかな館山の海

海がバッチリの休暇村館山の露天風呂

豪華な「炙り海鮮丼」(休暇村)

人気土産のコミヤ味工の「黄金玉らっきょう」
 きれいな海と穏やかな波、広いビーチの三拍子が揃うと、そこは絶好の海水浴場。

 以前に比べれば減少気味ながら、夏の浜辺にはカラフルな水着やビーチパラソルの花が咲きます。そんな様相を見せる町の1つに、房総半島南端の町・館山があります。

 中世は房総一円に威を奮った里見氏の本拠地、近世は稲葉氏1万石の城下町など南房総の中心として栄えてきました。今は花、野菜、果実、魚介などの生産をはじめ、海洋性の温暖な気候と明るい風光に恵まれて観光都市の色合いも増しています。

 内湾で波穏やかなことから鏡ヶ浦と呼ばれる北条海岸は代表的な海水浴場。「夕陽百選」にも認定された夕焼けの名所です。水平線の向こうに浮かぶ富士山が朝日を迎え、夕日を見送るひとときは絶景の極まりです。

 陸続きになった周囲1キロの自然林茂る沖ノ島もかっこうの海水浴場。磯遊びやダイビング等も楽しめます。

 宿泊した「休暇村館山」は全室オーシャンビュー。肌に滑らかな温泉で、魚介や野菜、肉など新鮮な素材を生かした料理に大満足。ランチタイムにご当地グルメの新名物「館山炙り海鮮丼」(休暇村館山、おしゃれ鮨海の花など5店・食数限定・予約可・全店税込み1600円)を食べました、新鮮美味、豪華さで大変人気があります。

 8月4日~11月3日に食べられる魚介も肉もありの豪華な「館山伊勢海老ステーキ御膳」(波奈総本店など3店・食数限定・要予約・全店税込み3900円)も人気です。

<交通>
・JR内房線館山駅下車、徒歩やバス利用
<問合せ>
・館山市観光協会☎0470・22・2000
・休暇村館山☎0470・29・0211
・おしゃれ鮨海の花☎0470・25・5151
・コミヤ味工☎0470・22・2238

和歌山県■黒潮の海がつくる美しい景勝と美味の町・串本


本州最南端の燈台が立つ潮岬

大島の絶景、紺碧の海金剛

萬口の「カツオ茶漬」

餡が透いて見える「うすかわ饅頭」
 紀伊半島南端の串本は黒潮洗う南国的な地。駅のホームや駅前広場で「本州最南端」の看板に迎えられます。観光案内所の「潮岬の緯度は北緯33度26分。八丈島と同じくらいなんですよ」の説明にエエッとなって、地図で確かめると、グッと南と思っていた八丈島とはなるほどほぼ同じでした。

 そんなわけで、驚きで始まった串本の旅。さっそく向かった潮岬は高さ60メートルほどの台地が海に切り立つ辺り。難所の沖合を行く船を守り続けてきた白亜の燈台が海と空の青さの中でキリリと眩しく立っていました。ここはかつての台風銀座。望楼の芝の先端からの水平線は地球の丸みを見せていました。

 東側の道に回ると、大きく横たわる大島が間近。「♪ここは串本、向かいは大島、仲をとりもつ巡航船~」と串本節に唄われたように船で渡った島も橋が架かってあっという間。亜熱帯樹茂る中にキンカン、ミカンの黄色の輝き、粗削りな海金剛のコバルトブルーの海など足を止めさせられる眺めが随所でした。

 串本で忘れられないのが名物の萬口の「カツオ茶漬」(1365円)と橋杭岩をモチーフにしたという儀平菓舗の「うすかわ饅頭」(10個1100円)。

 黒潮の海は色濃い青さで、温暖ですが、潮風が涼やかに抜ける心地よさでした。

<交通>
・JR紀勢本線串本駅下車、バス利用
<問合せ>
・串本町観光協会☎0735・62・3171
・萬口☎0735・62・0344
・儀平菓舗☎0735・62・0075

中尾隆之
中尾隆之(日本旅のペンクラブ代表)
出版社を経てフリーランスライターに。月に10日は取材旅行の現場主義で、町並み、鉄道、温泉、味覚等の紀行コラム、エッセイ、ガイド文を執筆。とくにお菓子好きで、新聞、雑誌にコラム連載のほか、『全国和菓子風土記』の著書もある。2007年8月に「全国土産銘菓選手権初代TVチャンピオン」(テレビ東京系)に。