


市街の中心近くに立つ重厚な国宝・松本城

明治初期の和洋の建築美を示す旧開智学校

駅舎1階にあって便利な欂木野の信州そば

数多い湧水の中でも主役級の鯛萬の井戸

松本の誇る高級フレンチのレストラン鯛萬

ニッキと松の実が珍しい開運堂の「開運老松」

皮と餡とクルミの風味富む翁堂「女鳥羽の月」
街には松本城の城下町の名残の歴史や文化がそこここに宿り、近代化の中にも白壁土蔵・なまこ壁の商家や武家屋敷の面影が入り組んだ道に今も息づく。清冽な水あふれる井戸や湧水群が街角や路地に清々しさと潤いを添えている。
残暑の余韻残る季節、城下町の名残を求めて久し振りに松本の町を歩いた。
目指すは駅から歩いて15分ほどの日本最古の5重の天守閣や小天守、櫓をもつ松本城(0263・32・2902/610円)。黒い下見板張りから烏城(うじょう)と呼ばれる重厚な城で、当時の築城技術や展示の甲冑や火縄銃などに歴史の重みを感じる。さすが松本の誇りの国宝である。
誇りといえば城の北、徒歩5分に立つ明治9(1876)年に建てられたわが国最古のハイカラな洋風校舎の旧開智学校(0263・32・5725/300円)もその1つ。白壁に望楼風の八角塔、色ガラス、彫刻などの細工に文明開化のハイカラさが漂う。地元住民の熱意と寄付で建てられた、教育県を象徴するようなモダンな国の重要文化財だ。教室を使った展示室にある明治初期からの教科書などに見入った。
近くのフランス人神父が建てた旧司祭館や北杜夫ら多くの人材が巣立った旧松本高等学校、時計博物館などの洋風建物も目をひく。美術館、博物館、セイジ・オザワ松本フェスティバルの音楽ホールなど文化の香りがそこここに漂う。
街を歩けば目に付くのが迷うほどある浅田やそば庄など香り高い名物「信州そば」の店や「開運老松」の開運堂など和・洋の菓子店。食事なら木造3階のレトロな洋食店のおきな堂(0263・32・0975)や蔦のからまる外観も店内ムードもいいフレンチの高級レストラン鯛萬(0263・32・0882)もお薦めだ。
歴史、文化、自然、食などに恵まれた松本は中心街だけでも1~2日はたっぷり楽しめる懐深い「学都」「楽都」。秋に訪ねたい趣深い町である。
〈交通〉・JR篠ノ井線・大糸線松本駅下車
〈問合せ〉
・松本観光コンベンション協会☎0263・34・3295
・松本市観光情報センター☎0263・39・7176


宿場の面影伝える土浦まちかど蔵「大徳」

電柱を外し旧街道の面影が濃い中城通り

城下町のモニュメントの土浦城址の櫓門

土浦名物の福来軒のレンコンラーメン

御菓子司ときわ木の3色最中と扇最中

ツェッペリンカレーも食べられる喫茶・蔵

中城通りの周辺に残る蔵と土塀の路地
15分ほどの堀水に囲まれた土浦城(亀城公園)は、江戸時代半ば以降9万5000石を治めた土屋氏の居城。今は櫓門、高麗門、霞門と東櫓、西櫓に面影をとどめるだけだが、かつては桜川と霞ケ浦の水を引いて5重の堀を巡らす大きな城で、水に浮かぶ亀に例えて亀城と呼ばれた。
また城の東側を抜ける水戸街道の宿場町としても大いに栄えた中城通りには、江戸後期の呉服商の4棟の蔵を活用した観光情報・物販の土浦まちかど蔵「大徳」(029・824・2810=観光協会)や江戸時代の母屋、袖蔵、レンガ蔵を改修、民俗資料展示や観光案内をする土浦まちかど蔵「野村」(☎観光協会)などが残る。
その一角にある170年余を経た総瓦葺き2階建、塗籠造りのみごとな町家建築の矢口家住宅や山本五十六、吉田茂、リンドバーグ夫妻など著名人も利用した格式高い名料亭の霞月楼も見落とせない。
中城通りには明治創業の吾妻庵総本店(029・821・0161)やツェッペリンカレーやケーキがおいしいレンガ蔵の喫茶・蔵(☎観光協会)、れんこんラーメンが人気の福来軒(029・821・1162)など個性的な店が点々とある。
ツェッペリンカレーは世界一周のドイツの大型飛行船ツェッペリン伯号が昭和初期に土浦に立ち寄った際に地元民がカレーでもてなしたことにちなむ。その頃、日本海軍の予科練基地では海軍食として毎週金曜日にカレーを食べる習わしがあったことも加わって、土浦はカレーで町おこしをスタート。全国屈指の生産量のレンコン製品や霞ヶ浦のワカサギなどの佃煮も名物になっている。
10月16日まで運行の霞ヶ浦の夏の風物詩・観光帆曳船や80万人が集まる10月1日の日本3大花火大会の土浦全国花火競技大会の年中行事も間近である。
〈交通〉・JR常磐線土浦駅下車
〈問合せ〉
・土浦市産業部商工観光課☎029・826・1111
・土浦市観光協会☎029・824・2810

9月15日は十五夜。満月の月見の宴で出された丸い餅菓子を見て平安の歌人・源順が「池の面に照る月なみを数ふれば今宵ぞ秋のもなかなりける」と詠んだ“もなかの月”が語源といわれる最中。もち米を薄く丸型にのばして焼いた皮種に餡を入れて上下に挟んだ和菓子である。パリパリの歯触りとしっとりの餡の妙味が人気で、多くの菓子店で作られている。
餡は小豆が主流で皮種のパリパリ感を保つため水分を減らしてやや堅めで粘りと照りがあり、求肥や餅入りも少なくない。皮はもともと丸型だが、形状や模様、文字など自在に駆使して形も意匠も風物や動植物などさまざま。皮種は大半が専門の最中種屋で作られる。
丸型の代表は金沢・坂尾甘露堂の「加賀さま」や仙台の「白松がモナカ」。四角では大阪・鶴屋八幡の「百楽」、京都・仙太郎の「ご存じ最中」。形さまざまな栃木・足利の香雲堂本舗の「古印最中」もある。変型には東京・明美の「都電もなか」や群馬・太田・伊勢屋の「スバル最中」、成田・なごみの米屋の「ぴーなっつ最中」がある。
別包装の皮と餡を食べる時に合わせる最中のはしりといわれるのが、33年前に発売した近江八幡・たねやの「ふくみ天平」。昨今はこの手の最中がずいぶん増えた。

坂尾甘露堂(金沢市)☎076・262・4371
加賀藩前田家の剣梅鉢の家紋を許された老舗の最中。香ばしい皮の中に粒・漉し・抹茶の3種類の練りの深い滑らかで上品な甘さの餡が詰まっている。小判5個入り720円。

なごみの米屋(成田市)☎0476・22・1661
ピーナッツの甘煮を練り込んだ白餡を落花生の形をした可愛らしい皮種の中に詰めた千葉県らしい最中。落花生型の紅白のパッケージは贈答にも喜ばれる。5個入り648円。