


レンゲ畑と新幹線の向こうにいただきを見せる富士山(写真提供:富士山観光交流ビューロー)

みなと公園からの港、工場、富士山の景観

田子の浦みなと公園にある山部赤人の歌碑

やはた亭で食べた「駿河三色丼」。1000円

晴れれば富士山がバッチリ見える岳南電車

金沢豆腐店の「味付けがんも」。170円

和と洋の贅沢な「ようかんぱん」。194円
富士市は50年前に吉原市、富士市、鷹岡町の合併で誕生し、富士山の湧水や富士川の水に恵まれ製紙業を中心に工業都市として発展。山麓ではブルーベリーやお茶栽培、沿岸ではしらす漁が盛んな人口25万余の県下第3の都市である。
地元の人の案内で最初に向かったのはなじみの地名の田子の浦。万葉歌人の山部赤人の「田子の浦ゆ うち出て見れば真白にぞ 富士の高嶺に雪は降りける」で知られた景勝の地だが、掘り込み式で造られた港には大型外航船や漁船が出入りする。
港の南側に山部赤人の歌碑や沖合で座礁したロシア軍艦ディアナ号のモニュメントを野外展示する小高い丘の田子の浦みなと公園からは、港、工場、煙突群の向こうに富士山が大きく浮かぶ。振り向けば伊豆半島を間近に洋々たる駿河湾が広がる。
その海では4月1日にしらす漁が解禁され、漁協食堂(0545・61・1004)の「ぷりぷり生しらす丼・富士山盛り」が1000円以内で食べられる(10名以上予約)とあって団体バスが押し掛ける。港の西に延びる10軒余の販売店が点々と連なる“富士山しらす街道”や市内の飲食店が大いに活気づく時である。
そんな中で通年しらすが食べられるやはた亭(0545・64・5131)で、生、釜揚げしらすと桜エビを盛った「駿河3色丼」を賞味。最後に少し残してお茶漬にして喉越しサラサラとおいしく完食した。
田子の浦港に近い吉原は江戸時代、東海道の宿場で賑わったあたり。ここを起点に岳南江尾まで10駅・9.2キロを結ぶ岳南電車が走っている。1日フリー乗車券(700円)で気ままに乗り降りし、岳南原田駅で下車して噂の「味付けがんも」(スイーツがんも)の金沢豆腐店(0545・52・1640)を探す。具材に砂糖を混ぜて油で揚げた甘いおやつだが、ぷりっとした食感からにじむ旨みはおかずにも。富士では昔から珍しくはないそうだ。これをパンではさんだ「富士がんもいっち」も売っていた。
珍しいといえば富士製パン(0545・51・2128)の「ようかんぱん」もご当地ならでは。粒餡、バニラクリームのあんを包んだパンの上に羊羹をかけた菓子パンだ。他に「つけナポリタン」など他地にはないご当地グルメがあって楽しかった。
富士山の景観だけが観光名所と思っていたが、日本3大だるま市の妙法寺の毘沙門天大祭(旧暦2月7日~9日)や旨いものなどを知ってまた行きたい町になった。
・JR東海道新幹線新富士駅、または東海道本線富士駅下車
〈問合せ〉
・富士山観光交流ビューロー☎0545・64・3776
・富士市観光課☎0545・55・2777
・岳南電車☎0545・53・1111


桜に包まれて華やぐ鑁阿寺境内の経堂

3つの門を抜けると正面に孔子廟がある

学生たちの学習の場の方丈と台所の庫裏

鑁阿寺表参道に立つ足利氏8代目の尊氏像

地元では“大日さま”と呼ばれる国宝・鑁阿寺

香雲堂本店の「古印煎餅」。6枚入り514円

うっとりするあしかがフラワーパークの大藤棚
創建は平安時代の小野篁(たかむら)、鎌倉時代の足利義兼などと諸説はあるが、16世紀、来日した宣教師・フランシスコ・ザビエルが「日本国中最も大にして最も有名な大学」と世界に紹介。最盛期には三千の学徒が学んだという。1921年に「史跡足利学校」として国の指定を受け、日本最古の学校といわれている。
入徳、學校、杏壇の3つの門をくぐると奥に孔子廟(聖廟)があり、創始者小野篁と孔子坐像が祀られている。隣接するのは講義や学習の場に使われた茅葺きの方丈、台所や食堂だった庫裏、庭園など江戸中期の足利学校の姿の復原である。ここでは儒学や漢学、医学などが講じられたという。
平安末期~鎌倉初期に足利氏の居館跡に建てられた鑁阿寺(ばんなじ)も必見のスポットで、石畳の参道には室町幕府をひらいた衣冠束帯姿の足利尊氏像がある。堀に架かる太鼓橋、楼門を抜けた正面には大日如来像がご本尊で、4年前に国宝指定になった本堂がある。
国内では最大級の多宝塔、釈迦如来を祀る経堂(国重要文化財)、朱塗りの瑞垣に囲まれた霊廟の御霊屋など境内は桜で華やぎ、参拝客も多かった。
近くにはNHK大河ドラマの資料展示や土産品売店のある太平記館や織物のまちとして栄えてきた歴史を伝える足利まちなか遊学館があった。
食事なら「そば」が人気で、「ソースカツ丼」も名物とのこと。土産には足利学校や鑁阿寺に伝わる古印や落款を模したパリッとした皮の中にしっとりの小豆餡がたっぷり詰まった香雲堂本店(0284・21・4964)の「古印最中」や香ばしい「古印煎餅」を買った。足利藩士で南画の巨匠・田崎草雲に因む草雲羊羹本舗(0284・21・4771)の「草雲羊羹」もきめ細やかな甘さの逸品だ。
ついでながら4月下旬~5月中旬が盛りの樹齢150年の大藤棚が大いに人気のあしかがフラワーパーク(0284・91・4939)と合わせれば足利の旅は一層ときめく。
・JR両毛線足利駅、または東武伊勢崎線足利市駅下車
〈問合せ〉
・足利市観光交流課☎0284・20・2165
・足利市観光協会☎0284・43・3000
・史跡足利学校☎0284・41・2655
・鑁阿寺☎0284・41・2627