


2月下旬から咲き始める梅の名所の秋間梅林

往時をしのばせる茅葺で復元の旧安中藩武家屋敷

安中宿の面影を伝えるメイン通りの旧中山道

天然醸造の製法にこだわる醤油の老舗の有田屋

店内では醤油製品や醤油スイーツを販売

風味が評判の醤油スイーツ”峠の贈り物”セット
ここ安中は江戸と京を結ぶ大動脈、中山道の宿場町。かつて高崎を出て板鼻、安中、原市、松井田、五料、横川、坂本の7宿を経て碓氷峠を越えた。皇女和宮はこの街道を京から江戸に向かう途次、泊まったのは板鼻宿だが、安中宿は城下町でもあったので、復元の長屋門と曲り家づくりの旧安中藩郡奉行役宅や旧安中藩武家屋敷が残っている。
近くには安中藩士の長男として江戸屋敷で生まれた教育者・思想家、同志社大学の創立者・新島襄が両親のもとで布教のために安中で過ごした旧宅もある。
この時、新島の思想に共鳴した地元の味噌・醤油醸造・有田屋の湯浅治郎は、自ら建てた民間で初めての無料閲覧できる図書館・便覧舎で、旧藩士とその家族30名とともに新島襄から洗礼を受けた。その信者らが建てた安中教会が今も残る。
湯浅家は地元教育や同志社大学、義弟・徳富蘇峰らを支援した素封家で、天保3年(1832)の創業以来、天然醸造製法にこだわる老舗。7代目の現在でも通常より1.5倍の原料と時間をかけた再仕込み醤油を醸造。卵専用しょうゆやバターめししゅうゆなどいろいろな醤油や醤油スイーツを販売している。
この有田屋の再仕込み醤油を使って、市内の菓子店ではそれぞれお菓子の家あんの和洋饅頭「あん中さま」や扇堂のチーズクリー餡のふわふわのブッフェ「あんなかぽふぽふ」、鉱泉入りの磯部煎餅で醤油風味のクリームをサンドした菓舗たむらの「醤油薫るクリーム磯部煎餅」など7菓入りの”峠の贈り物“のセットも販売していて、甘しょっぱさが人気を呼んでいる。
・JR信越本線安中駅下車、または北陸新幹線安中榛名駅下車
〈問合せ〉
・安中市観光課☏027・382・1111
・安中市観光機構☏027・385・6555
・有田屋☏027・382・2121


白壁土蔵の美しい米蔵を活用した倉敷考古館

美観地区にやわらぎを空間を与える倉敷川

柳並木と調和する白壁、格子窓の家並み

魚介豊富な冬期限定のカモ井の「ぬく寿司」

皮と餡がフィットした橘香堂の「むらすずめ」

赤レンガ工場を活用したアイビースクエア
ご存知のように倉敷は江戸時代に幕府直轄の天領とされ、米や綿花、塩、砂糖など物資の積み下ろしで栄えた一大商都。明治時代は紡績産業、戦後は文化観光都市を目指し、今は工業地帯を含めて人口48万余の町である。
駅前から中央通りを7~8分、人の流れに従うと、おなじみの蔵の町の風景がパッと開けた。掘割のような川のほとりにはギリシャ神殿風の大原美術館、重要文化財の旧大原家住宅、黄や緑に見える屋根瓦の大原家別邸(有隣荘)、白壁・格子窓の料理屋・旅館、なまこ壁の倉敷考古館、洋風建物の倉敷館など趣深い建物が連なる。
この一角は倉敷紡績の大原家が昭和5年に日本初の私立西洋美術館を開設するなど文化に目覚めた町。終戦のわずか5年後、江戸時代の土蔵造りの米蔵を改造して考古館や民藝館を開館。砂糖などの問屋は旅館や料理店などに。のちに旧倉敷紡績の蔦のからまる赤レンガの工場がホテルや記念館、陶芸工房などに生まれ変わった。
重く分厚い蔵の扉を開けて新しい風を入れて、町全体が芸術や文化の香る魅力ある町づくりを進めた。それが飽きさせない魅力を保っているのだろう。
そんな蔵屋敷を改装した食事処・カモ井で瀬戸内のエビやアナゴ、ママカリなどを盛って蒸し上げた名物の「ぬく寿司」を食べた。気持ちもほこほこ温まるちょっとしたご馳走だった。橘香堂では銘菓「むらすずめ」を買った。
本町・東町を歩けば、職人や商人の格子窓の住まいが並び、川沿いとはまた違った庶民的な暮らしがしのばれた。
そういえば倉敷出身でプロ野球の投手や監督での活躍をたたえた星野仙一記念館が目新しかったが、その直後に訃報に接して、倉敷がまた気になる町になった。
・JR山陽本線倉敷駅下車
〈問合せ〉
・倉敷市観光課☏086・426・3411
・倉敷観光コンベンションビューロー☏086・421・0224