


鮭加工品販売の老舗である味匠㐂っ川

村上ならではの光景の鮭の吊るし干し

代表的な鮭料理の鮭の焼き漬(㐂っ川)

鮭の切り身にそっくりな落雁(早撰堂)

鮭料理の名店である割烹・新多久

鮭の生態や漁法などが分かるイヨボヤ会館

電柱を撤去して街並みを修景したメイン通り
その玄関口はJR羽越本線村上駅。駅前の観光案内所で地図やパンフレットをもらい、古い街並みの町屋エリアへ自転車のペダルを踏んだ。伝統工芸の堆朱や染め物、食料店など古い店構えの通りを10分ほどで着いたのが、鮭製品や村上牛などの飲食店や地酒、菓子など土産店が集まる大町界隈だ。
「鮭」ののれんが下がる老舗の味匠㐂つ川で、鮭の焼漬や塩引き鮭、酒びたしなど数々の鮭製品の中から焼漬を買った。屋内に吊るされた1000本ほどの鮭の光景に目を見張った。周辺には割烹新多久や吉源、井筒屋などの鮭料理や村上牛の店やうおやなど鮭製品の店が多くある。
村上では市街地の北を流れる三面川(みおもてがわ)を遡る鮭を捕らえる漁が平安時代から行われていたと古文書にある。江戸時代には村上藩の財政を支え、将軍家へも献上した古くからの「鮭のまち」なのである。
江戸中期、鮭の漁獲が激減していたところ、下級藩士の青砥武平次が鮭の回帰性に目を付けて産卵用の種川を作るなど孵化・繁殖に成功した。鮭の回帰性の発見は世界で最初といわれている。
それを伝えるイヨボヤ(鮭を指す方言)会館には、鮭の生態や伝統漁法などを展示するこどもサケ科学館や鮭の遡上を観察できる鮭観察自然館がある。2~3分歩いた土手の向こうに中州を抱えて三面川が静かに流れていた。
武家屋敷や村上城は商家や町屋が並ぶ通りの東側。茅葺き、寄棟づくりの旧嵩岡家や旧岩間家、旧藤井家が城下町の面影を伝えている。中でも嵩岡家は5月1日に皇后陛下になられる雅子妃殿下のご先祖にあたることで、ご成婚当時話題となった。
城跡は背後の135mの臥牛山に残り、山上からの日本海の眺めが広い。その南西方向の海岸沿いに高層の宿が見えるのが瀬波温泉である。
明治37年、石油掘削の折の噴出に始まる湯量の豊富さと95度の高温で知られる温泉で、宿の露天風呂で夕焼けの美しさを堪能できる。食事の時に絢爛豪華な「おしゃぎり」(神輿)が練り歩く7月7日の「村上大祭」にいらっしゃいと誘われた。
観光パンフレットの謳い文句に「鮭・酒・人情(なさけ)」とあるように。村上は歴史と文化が豊かで、美味美酒の町である。
・JR羽越本線村上駅下車
〈問合せ〉
・村上市観光協会☏0254・53・2258


佐賀城で唯一の遺構の鯱の門(重要文化財)

本丸御殿を木造で再現した本丸御殿歴史館

藩祖鍋島直茂や先祖を祭る松原神社

砂糖や菓子が運ばれた長崎街道佐賀宿

日本人好みに創製した「丸房露」(鶴屋菓子舗)

高級織物を色柄を模した「さが錦」(村岡屋)

佐賀名物の多彩な「シシリアンライス」(麦)
この通りのまっすぐ南の突き当りに佐賀城跡がある。佐賀城は戦国末期に龍造寺隆信の居城を江戸時代に城主鍋島直茂・勝茂父子が4年かけて拡張整備。偉容を誇った5層の天守閣は火災で失い、明治政府に抗した佐賀の乱で櫓や御殿など多くが破壊された。
今に残るのは鯱の門と石垣の一部だが、城跡には10代藩主直正が再建した本丸御殿の一部を766畳の木造建物で忠実に再現。これを使った佐賀城本丸歴史館をはじめ一帯には県立博物館・県立美術館・県立図書館などの文化施設が集まっている。
北濠の向かいにある佐嘉神社は、医学・学問の普及などに尽くし、名君といわれた10代藩主直正と11代藩主直大を祭り、藩祖直茂を祭るために創建された松原神社とともに鍋島氏ゆかりの社として地元民の信仰を集めている。
2~3分北に向かうと市街を東西に抜ける長崎街道がある。長崎から小倉まで、大名や長崎商館長ら数々の人と物資が往来した九州第一の脇往還で、江戸へ砂糖が運ばれたことから後世、シュガーロードとも呼ばれている。
長崎からこのルートで貴重な砂糖が佐賀に入り、菓子が伝わった。その代表菓子がポルトガル船員から伝わった丸ボーロだ。小麦粉に砂糖を練り込んで焼き上げたシンプルな菓子で、保存食ゆえにとても堅かったという。
これに鶏卵などを加えてサクッとした歯ごたえで中はふんわりした日本人好みにして「丸房露」の名で売り出したのが、嘉永16年(1639)創業の藩の御用菓子司の鶴屋菓子舗である。
北島の「丸芳露」など20軒を数える店で「丸ぼうろ」「丸ボーロ」などのネーミングでそれぞれにひいきに支えられて共存共栄。お茶菓子やおやつ、贈り物、祝い事には欠かせず、多くの家で常備菓子になっているという。
中国から伝わった空洞の内側に黒蜜が張りついた「逸口香(いっここう)」や、外がカリッとして中がなめらかな小城羊羹やバウムクーヘンで高級織物を表現した洋風菓子の「さが錦」などいろいろな菓子が生まれている。
長崎街道沿いには呉服屋の旧森永家や履物商の旧久富家、旧牛島家、旧古賀家、旧三省銀行、旧古賀銀行など明治・大正期の町家建築が趣ある道筋をつくっている。
佐賀では一皿にご飯の上に甘辛いタレで炒めた肉と生野菜を盛り合わせてマヨネーズをかけた「シシリアンライス」が人気のグルメ。40年ほど前に市内の喫茶店が考案。諸説はあるが長崎のトルコライスに対し隣国シリアになぞらえた名付けとか。
「武士道といふは死ぬことと見付けたり」で始まる極端な尚武思想「葉隠」で閉鎖性を語られる佐賀藩だが、一方では藩政時代、日本最初の洋式反射炉を設け、近代大砲を鋳造するなど開明性も併せもっている。
・JR長崎本線佐賀駅下車
〈問合せ〉
・佐賀市観光協会☏0952・20・2200