


訪れる人が多い磯原海岸・二ツ島の初日の出

生涯や作品を展示する野口雨情生家

雨情が遊んだ天妃山からの海の眺め

岡倉天心が設計した六角堂と五浦海岸

黒餡・海苔餡入りの五浦最中(風月堂菓子舗)

濃厚スープのあん肝ラーメン(まるみつ旅館)

冬はあんこう漁で活気づく平潟漁港
なかでも大津漁港~平潟漁港の間に張り出す五浦海岸は5つの入江(浦)からなる絶景の地で、岡倉天心や横山大観、菱田春草らが移住した近代美術の聖地である。
車でなら常磐自動車道北茨城ICから国道6号線を北上。鉄道ならJR常磐線の磯原駅や大津港駅が起点。今回訪ねたのは磯原駅に立ち寄ってのドライブ旅行。作動する駅前広場のからくり時計で「シャボン玉」や「七つの子」「青い目の人形」のメロディと人形を眺めてスタートした。
ここ磯原は童謡詩人・野口雨情の生まれ故郷。車で2~3分の国道沿いに磯原御殿と呼ばれた廻船問屋の立派な生家が今も残る。近くのレンガ造りの民俗資料館(雨情記念館)とともに、雨情の生涯や業績などを展示。詩の優しさを改めて思った。
生家前の天妃山は幼い日の雨情の遊び場。白砂の浜の前には紺碧の海のはるか水平線まで目に入る。記念館前の「♪天妃山から東を見れば、見えはしないが見えたなら、あれはアメリカ合衆国」の歌碑に雨情のユーモラスな一面がしのばれた。
青い海に沿って1.3㌔に白浜が延びる二ツ島の岩は磯原海岸のシンボル。昔は2つあったが波に削られて今は1つ。夏は絶好の海水浴場で賑わうが、早い初日の出を見ようと泊まる人も多いという。
北に向かうとアジ、サバ、イワシなどが揚がる県内有数の大津漁港で、白い船が舳先を揃えて多数並んでいた。海沿いに走ると白亜の灯台が立つ五浦岬に出た。
高台からは5つの浦が入り組んだ五浦海岸が見下ろせる。赤い六角堂が立つ岬が近代美術の先覚者・岡倉天心が移住して10年ほど住んだ天心邸のあった所。今は五浦美術文化研究所になっている。
対岸の五浦観光ホテルで海鮮料理を賞味して、日本美術院研究所跡の天心遺跡公園に立ち寄り、さらに北へ向かって岬と岩に抱かれた天然の良港の平潟港に着いた。
ここはアワビ、ウニ、ヒラメの水揚げの漁港だが、冬は全国屈指のアンコウ漁で知られる。名物のアンコウ鍋、とくにあん肝を練り込んだ濃厚な味噌仕立ての“どぶ汁”の発祥地で、冬は多くの人が押し寄せる。
伊豆大島に行かずに「波浮の港」の詞を書いた野口雨情がモチーフにしたのがこの平潟港とか。東海岸だから夕焼けはどう?、鵜の鳥はここにはいるが、大島にはいない?。そんな疑問も消えるほど、港旅情にあふれている。雪もほとんどなく温暖な、この季節に訪ねたい海辺の旅路である。
・JR常磐線磯原駅または大津港駅下車
〈問合せ〉
・北茨城市観光協会☏0293・43・1111(市役所商工観光課内)