風土47
旅空子の「味」な旅・見出し
 
広島県■雅な朱塗りの社殿が鎮座する神の島・宮島


大修復工事が終わった色鮮やかな大鳥居

平安朝の雅が伝わる朱塗りの廻廊と社殿

キリっと佇む和洋折衷の建築美の五重塔

厳島神社所蔵の文化財を保管する厳島宝物館

飲食、土産物の店が連なる表参道商店街

宮島が発祥の紅葉饅頭。藤い屋の「もみじまんじゅう」

ふっくらで風味がよい快心友の「あなご弁当」
 新しい年が明けた。コロナ感染が続く心晴れない日々だが、改暦一新、気持ちも新たに神社・仏閣に初参りする人は多い。

 その年初めは各地の社寺が最も人出でにぎわう時。広島県では日本三景、世界遺産でおなじみの宮島・厳島神社が一番人気で、隣県からの参拝客も多い。

 シンボルの大鳥居が屋根の葺き替えや柱の塗り替えなど3年半に及ぶ修復工事を完了したばかり。新年は丹塗りも鮮やかな大鳥居を拝することができるので例年以上の人出が見込まれる。大鳥居の建造は明治8年(1875年)で、平安時代から数えて8代目である。

 島へは山陽本線宮島口駅前の桟橋からフェリーで10分。紅葉饅頭やあなご飯,カキ料理、宮島杓子など飲食・土産店が軒を連ねる表参道商店街を抜けると、海の中に大鳥居が見えて、左手正面に朱塗りの鮮やかな社殿が鎮座している。

 厳島神社の創建は推古元年(593年)。
大鳥居や幣殿、拝殿を構える本社本殿を中心に客(まろうど)神社、大国神社、天神社などが配されている。絵巻を思わせる雅な寝殿造りは、平安後期、平家の全盛期を築き、権勢を奮った平清盛の着想による。潮の干満差は最大4m、周期は約6時間。後世の権力者の帰依が厚く守られてきた。

 社殿を結ぶのは、板敷床、柱、釣り燈籠で構成された鍵の手に延びる廻廊。満潮時には足元の青い海に朱塗りの社殿が投影、それが波にゆらめき、神秘的な趣をたたえる。視線を上げると、檜皮葺の屋根と廻廊の柱にスッキリ佇む五重塔が美しい。

 神社は檜皮葺の本社本殿を中心に客神社、大国神社、天神社などが配され、鮮やかな朱塗りの柱、美しい反りの檜皮葺の屋根、釣り燈籠など雅な建築美に目を見張らされる。

 廻廊の西出口の先には、平家の繁栄を祈って奉納した平家納経などを所蔵する厳島宝物館や開運、商売繁盛、芸術上達にご利益のある大願寺、宮島の歴史文化資料を展示する宮島歴史民俗資料館、清盛を祀る清盛神社など見どころが幾つもある。

 周辺の柳小路や滝小路には、宮島の暮らしを支え、伝統や風習を守る住民の住まいや店が並んでいる。また表参道商店街の一筋山寄りの町家通りも宮島を支えた商家が連なる。

 人気土産の「紅葉饅頭」の発祥はここ宮島。明治後期、宮島の和菓子職人が賓客の多い旅館の女将からの注文で納めたのが始まりで、宮島に20軒の店が味を競い合っている。目の前の大野瀬戸で獲れる甘辛いタレのアナゴが名物。日本一のカキ料理は12月~2月が一番おいしい時である。


〈交通〉
・JR山陽本線宮島口駅下車、フェリーで10分
〈問合せ〉
・宮島観光協会☏0829・44・2011
 
中尾隆之
中尾隆之(なかおたかゆき)
高校教師、出版社を経てフリーの紀行文筆業。町並み、鉄道、温泉、味のコラム、エッセイ、ガイド文を新聞、雑誌等に執筆。著作は「町並み細見」「全国和菓子風土記」「日本の旅情60選」など多数。07年に全国銘菓「通」選手権・初代TVチャンピオン(テレビ東京系)。日本旅のペンクラブ代表、北海道生まれ、早大卒。近著に「日本百銘菓」(NHK出版新書)