


両側に卯建が連なるメインストリート

旧名鉄美濃駅。「私鉄沿線」を唄った野口五郎は美濃市出身

隆盛を誇った紙問屋の旧今井家住宅

火伏の神の秋葉様を祀る家も所々に

メニュー多彩な山水本館の「ざるそば」

此の花亭の銘菓「うだつが上がりますように」

繁栄をもたらした湊に立つ木造の川湊灯台
長良川に湊を設け、水運による和紙や生糸など物資の集散地として栄え、紙問屋など豪商が出現。その富によって卯建(うだつ)や化粧瓦、格子、虫籠窓を施した2階建て、切妻造りの商家が軒を連ねた。
中で目につくのは火除けの卯建。本来は隣家からの延焼を防ぐための防火壁だが、設置に費用を要することから、次第に富を示す証になった。今や死語に近いが、立身出世を意味する「卯建が上がる」はここからきている。
この卯建の上がる趣ある町並みが1999年に国指定の重要伝統的建造物群保存地区に認定されて、観光客の姿が絶えない町になった。
その美濃市を訪ねたのは高山本線と長良川鉄道の列車。美濃市駅で下車して、廃線になった旧名鉄線美濃駅に野外展示の3両の車両を見てから古い町並みに入った。
食堂や呉服、化粧品、菓子、精肉、銀行、酒屋など暮らしに身近な店が連なる。電柱を地中に埋めたすっきりした通りを気持ちよく歩いていると、道の両側に肩を寄せ合う低い2階家が透視図法で描いたような古くて美しい町並みがあった。空に突き出す卯建がアクセントになっていた。
歩きの途中で目に止まり、足を留めたのが地酒「百春」の蔵元の小坂酒造所や古い建物が連なる丸佐商店、美濃一番の紙問屋だった広壮な旧今井家住宅・美濃資料館など。今井家の中庭にある水琴窟の響きに心が澄んだ。
美濃和紙の店や菓子屋、そば屋、和洋食の店、カフェなどが古い面影を抱いたまま点々と並ぶ。定食や丼物など何でもある山水本店で「ざるそば」で腹ごしらえ、御菓子司・此の花亭では、ずばりチョコレート生地にクルミののった「うだつが上がりますように」を買った。
昼食後は石垣と展望所のある城跡の小倉山へ。山並みに囲まれた美濃市が見渡せ、間近に屋根瓦波打つ市街地が見下ろせる。右手に水清い長良川が見えた。
山を下りて、その川岸に木造灯台(川湊灯台)の立つ上有知湊に行った。流れゆく水を眺めながら、この町並みの歴史を改めてしのんだ。
〈交通〉
・JR岐阜駅から中央本線美濃太田駅乗り換え、長良川鉄道美濃市駅下車
〈問合せ〉
・美濃市観光課☏0575・33・1122