
先月号の続きになりますが、釜山に来たからには、有名な「国際市場」に行かねばなりません。朝鮮戦争が終わった後、米軍の軍用物資と釜山港に密輸入された品物を扱った闇市が起源だそうですが、現在は1,500余りの様々な店が集まり、活気あふれる市場です。しかし、私のお目当てはもう一つの名物である屋台です。

どこまでも続く国際市場の屋台
最初に「おでん」を食べてみました。韓国では2種類ほどのおでんがおいてあるのが一般的ですが、実は形が違うだけで味は一緒なのです。しかし、釜山ではタコなどの海産物、野菜、チーズ等を練り込んだおでんが10種類以上ありました。珍しいことに米モチとコンニャクもあり、どれを食べようかと悩みつつ選ぶ楽しみも大きかったです。お値段は一つ600ウォン。価格はソウルとほとんど変わりませんが、大きさが1.5倍ほどもあります。

屋台のおでん。韓国では珍しく種類が多い
普通のおでんは、昆布、干した小イワシ、大根、唐辛子などで出汁を取りますが、釜山では贅沢なことにカニも使うので、さっぱりとしている中にカニの風味が効いていてとても美味しいと思いました。
タレは大きい容器に入っているので、小皿に必要なだけ取ります。おでんは醤油ベースのタレ、米モチとコンニャクはコチュジャン・タレを付けて食べます。スープも小さな器に取って好きなだけいただきます。食べ終わったら串の本数を自分で数えて計算し代金を渡すのが韓国のおでんの食べ方です。要するに最初から最後まで自分でやらなければならないのです。
プルンプルンしている釜山のおでんを食べながら、うれしい反面、よそではこの値段でこの味を楽しむことはできないと思うと少し残念な気分でした。

タレは醤油ベースとコチュジャンベースの2種類
次は、冬ならではの味覚「ホットック」です。ホットックは、小麦粉に砂糖、塩、牛乳、砂糖、イーストを入れて良く練ったあと30分ほど寝かせて発酵させた生地で黒糖を包み込み、油を引いた鉄板で平たく焼きます。
一般的なホットックはこれで出来上がりですが、国際市場では、ホットックにハサミで切れ目を入れ、中にピーナッツ、ヒマワリの種、アーモンドなど10種類ほどのナッツを刻んだものをたっぷりと入れてくれます。

ホットックを買う人で大混雑
マーガリンを使うからでしょうか、カラッと焼き上がり、香ばしさがたまりません。表はサクサクしているのに、中は柔らかくてモチモチしています。噛めば噛むほど甘〜い黒糖と香ばしいナッツの味が混じり合ってとてもおいしいです。ただ、中がとても熱いので冷ましながら食べなければならないのに、待ち切れなくて舌をやけどする人も少なくありません。

生地をまとめて黒糖を包むはしから焼き上げていきます
ホットックは、中身が垂れても良いように紙コップに入れてくれます。代金はお客さんが現金箱に入れ、おつりもそこから自分で取り出します。時間も節約もできるし、ホットックを作りながら会計をするより衛生的で良い方法ですね。
一つ900ウォンはやや高いような気もしますが、食べてみると決して惜しいと思いません。有名なことはうわさで知っていましたが、寒い中、こんなに長い列に並んで何かを求めることは生まれて初めての経験でした。ホットックのお店は何軒もあり、並ぶ人が多すぎて今自分がどのお店の列で待っているのかも分からないくらいの混雑でした。

ハサミで切れ目を入れて刻んだナッツをたっぷりトッピングします
最後は「ビビン春雨」です。注文があると春雨を湯通しして、ホウレンソウ、ニンジン、ネギなどの野菜と刻んだおでんをトッピングし、醤油タレをかけて出してくれますが、ここまで10秒もかかりません。
さっぱりとしていて、醤油タレは粉唐辛子が入ってピリカラで春雨と良く合いました。こんな食べ方があることを面白いと思っている間に、一緒に行った親戚のおじさんは10秒で食べてしまいました。一杯2,000ウォンとお安く量も少ないので手軽に食べられてなかなか良いと思いました。

ビビン春雨。作るのも食べるのも10秒!
◎ハングル単語メモ
- 오뎅(オデン):おでん
- 호떡(ホットック):ホットック。日本では「ホットク」と表記されることが多い。
- 비빔 당면(ビビン ダンミョン):ビビン春雨
- 국제 시장 (クッジェ シジャン):国際市場
- 부산 항 (プサン ハン):釜山港
- 金昭英(キム・ソヨン)1979年江原道江陵市生まれ
東京の語学スクールで日本語を学び、現在は水原市で日本語通訳として働いている。