
この間、友人から今年も残りわずかだねという書き出しのメールをもらいました。
それを読んで、もう冬が来るのだなと思うとちょっとセンチな気持ちになりましたが、一方でチゲや鍋がおいしい時期でもありますからこちらは楽しみです。
チゲや鍋は寒い季節が一番おいしいと、冬になると韓国にやって来る日本の知り合いもいるくらいですから。
そういうわけで、この肌寒い時期にぴったりの豆腐とキノコを使ったジョンゴルを紹介しましょう。
ジョンゴルとは日本の寄せ鍋のような料理で、素材一つを中心に作るチゲとは異なり、ジョンゴルはいろいろな材料を使い、食卓の上で煮ながら食べます。
材料の下ごしらえに手間がかかるものの料理自体は意外とシンプルです。
まず、数種類のキノコ(松茸やマッシュルーム、平茸、椎茸、こま茸など)を4〜5センチ程度の大きさに切り分けます。豆腐や春菊、長ネギ、ニンジン、赤唐辛子、青唐辛子も適当な大きさに切っておきます。これらの材料を鍋に盛り付けてから、牛肉または煮干しで作った出汁を注ぎ、粉唐辛子、醤油、ニンニク、胡椒、塩で味を整えます。

お店の前には石臼のモニュメント / 看板には店名の由来である円頭幕の絵が
今回は、水原市にある自家製の豆腐とキノコを使う「ウォンドゥマッ」というお店にお邪魔しました。お店の入口には石臼の形をした噴水がおいてあります。一歩店内に入ると店名の由来である円頭幕を模したカウンターなど、木を使ったインテリアに懐かしさを覚えました。

円頭幕をイメージしたカウンター / ウッディなインテリアの店内
お値段は、中(2人前)が20,000ウォン、大(3人前)が30,000ウォンで、ご飯は別料金で1,000ウォンです。

店内のメニュー / ジョンゴル(中)とセットのおかず
われわれは、豆腐とキノコのジョンゴルの中を頼みました。
まず、14種類ものおかずが出てきました。サラダのドレッシングにはオレンジやキウイを使うなど、化学調味料を使わず塩分も控えめで、味付けも他の店に比べて優しいのですが、どれもおいしいのでジョンゴルが出る前におかわりをするほどでした。
自家製豆腐が売りのお店なので、豆腐のチヂミや湯豆腐など豆腐を使ったおかずが多かったですが、中でもコンビジチゲ(豆腐を作る時に残るビーズとキムチ、長ネギ、ニンニク、粉唐辛子などを入れて作ったチゲ)は専門店のように良い味でした。

サラダ / 湯豆腐 / 豆腐のチヂミ

チンゲン菜 / シシトウ / ジャガイモ煮物

ツルニンジン / コンニャク / モヤシ

チャプチェ / エゴマの葉 / コンビジチゲ
いよいよお待ちかねのジョンゴルが出て来ました。松茸、こま茸、平茸の三種類が入っていましたが、もう少しキノコの種類が多くても良いかなと思いました。とはいえ、お店で栽培している平茸は料理を作る直前に栽培ポットから切り分けてくれたのでとても新鮮でした。

お店で栽培している平茸 / これがお目当てのジョンゴル
牛肉、シジミ、玉ネギ、長ネギなど10種類の材料を入れて作った出汁と、キノコから出る旨味で調味料が控えめでも物足りなさを全然感じさせませんでした。青唐辛子が入っているのでやや辛めですが、口に長く残らないさわやかな辛味です。さっぱりした出汁の旨味に、春菊の香りとキノコと豆腐の柔らかさがとても合っており、すぅーっとのどを通りました。
これを一口一口食べるごとにその日の疲れと寒さを忘れ、おいしさと幸せだけを感じました。
このコラムを書き始めた頃は、長く続けて行けるほど素材があるか心配していましたが、取材を重ねるほどに韓国食の豊かさが見えてきたのには驚きました。
韓国と日本のように、さまざまな素材といろいろな調理方法を使う国ってそんなに多くはない、ということを他の国へ旅行するたびに気付かされ、そのありがたみを思います。
この日もそのありがたみと幸せを強く感じました。
◎ハングル単語メモ
- 전골(ジョンゴル):寄せ鍋、すき焼き
- 두부(ドゥブ):豆腐
- 버섯(ボソッ):キノコ
- 송이 버섯(ソンイ ボソッ):松茸
- 느타리 버섯(ヌタリ ボソッ):平茸
- 팽이 버섯 (ペンイ ボソッ):こま茸
- 표고 버섯(ピョゴ ボソッ):椎茸
- 양송이 버섯(ヤンソンイ ボソッ):マッシュルーム
- 원두막(ウォンドゥマッ):園頭幕(スイカ畑を見張るための小屋、東屋)
- 金昭英(キム・ソヨン)1979年江原道江陵市生まれ
東京の語学スクールで日本語を学び、現在は水原市で日本語通訳として働いている。