
先頃ネパールに行き、ヒマラヤトレッキングに挑戦してきました。ヒマラヤトレッキングに行ってきたというとみんな驚いたり大変でしたねといいます。確かに大変なこともありましたが、一緒に行ったメンバーの思いやりと応援もあってとても楽しい経験でした。
ヒマラヤトレッキングを無事に終え、カトマンズに来る機会があったらぜひ行って見たかった「平壌玉流館(평양옥류관:ピョンヤン・オン二ュグァン)」という北朝鮮国営のレストランに寄りました。オープンして一年余りでカトマンズの他にドバイにもお店があるそうです。

カトマンズ市内にある平壌玉流館の外観
韓国でお店に入る時とは違って、好奇心はあるもののやはり多少の緊張感はありました。入口からは大きなホールの奥に楽器が並んでいるのが見えました。毎日午後8時から演奏があるそうです。そして、北朝鮮の有名な山の名前を付けた個室もいくつかありました。
お客さんの姿がほとんど見られませんでしたが、忙しい時間帯を避けて行ったからでしょう。おかげで2人だけの私たちを大きなテーブルとカラオケ機器が置かれた部屋に案内してくれました。

カラオケ機器がある個室 / ハングル、英語、簡体文で“写真撮影禁止”と書かれている
席に着くと、韓国と似ているような似ていないような様々な料理の写真入りメニューを渡されました。どれも美味しそうで、全部試して見たい気持ちを押さえて、看板メニューの平壌冷麺を二種類オーダーしました。
お値段は両方とも365ネパールルピー(約330円)で、税金とサービスチャージは別です。


写真入りのメニュー / 手書きの勘定書。全部で1,292ネパールルピー(約1,200円)
平壌にある本店は平壌冷麺の最高峰として韓国でもその名を知られています。
そもそも、平壌冷麺が有名になったのは、朝鮮戦争の際、現在の北朝鮮から逃げて来た人々によって韓国全土にその味が広められたことによります。主に夏に食べる料理として知られていますが、かつてはマイナス20℃前後の厳しい寒さの中で、暖かいオンドル部屋で歯が冷える位の冷麺を食べることを楽しんだといいます。
平壌冷麺の特徴は他の冷麺に比べて薄口で淡白な味付けです。
まず、牛骨で取ったスープを冷やして脂肪を取り去り、トンチミ(冬に冷たくして食べるあっさりした水キムチ)の汁を混ぜて、塩、醤油、酢などで味付けしたタレを作ります。ソバ粉と片栗粉を混ぜて作った麺を茹でて冷水で洗い、煮込んだ肉、キムチ、ゆで卵、ナシなどをトッピングして冷たいタレをかけて食べます。お好みで、酢、砂糖、マスタードなどを入れて食べます。

つきだしのキュウリと大根の酢漬け
最初につきだしとしてキュウリと大根の酢漬けが出ました。キュウリの酢漬けにニンニクが多めに入っていること以外は韓国とほとんど同じ味でした。

これが平壌冷麺 / 韓国の餃子(マンドゥ)と同じ
水冷麺の方は、豚肉、牛肉、ナシ、キュウリ、ゆで卵、キムチ、大根など具沢山でした。一緒に出てきた、醤油、粉唐辛子、ネギ、ゴマ、コショウをなどで作られたタレを好みに合わせて入れて食べます。このお店のスープは牛と豚の両方を使っているそうです。麺はソバの風味がしますが片栗粉も入っているので、普通のソバよりシコシコして噛むほどにソバの味が強くします。
ビビン冷麺の方は水冷麺よりシンプルな具で、ニンジン、ナシ、キュウリだけです。平壌から取り寄せた唐辛子で作ったコチュジャンに、粉唐辛子、ニンニク、ゴマなどを入れてタレを作ります。ビビン冷麺は非常に辛いですが、韓国の冷麺よりしょっぱさも甘さも少ないので強烈な味付けに慣れている韓国人には少し物足りないかも知れません。淡泊な味付けが好きな人にはちょうど良いと思います。
知らない香りのスパイスが使われていたので聞いてみましたが、韓国では使われていない単語だったので結局わかりませんでした。ほとんどの言葉は通じますが、韓国では外来語を多く受け入れたり単語も変化している一方、北朝鮮では昔のままの言葉が使われているのでお互いに理解できない場合も多いのです。
北朝鮮のテレビ映像で見るアナウンサーの強い口調とは違って優しい言葉使いで話してくれたのが印象的でしたが、食べ物以外の写真撮影は禁止なのと、お店の人との会話も話題が限られているので少し淋しく思いました。
最近、韓国の若者のなかには南北統一を望まない人もいます。経済格差が大きいので統一した時に生ずる韓国の負担に対する懸念と、現在大きな不便を感じることもないので統一しなくとも良いという考えなのです。
もしかすると、北と南が越えなければならない山はより高いかもしれませんが、私はアンナプルナの高く険しい峰々の間から昇る日の出を見ながら世界の平和を祈りました。
今年は皆様の家庭にとって平和な一年でありますようお祈りします。
◎ハングル単語メモ
- 북한(ブカン):北韓〜韓国では北朝鮮のことを北韓と言うことが多い
- 남한(ナムハン):南韓〜韓国を指す
- 호기심(ホギシン):好奇心
- 긴장감(ギンジャンガム):緊張感
- 반반(バンバン):半々
- 산(サン):山
- 평화(ピュンファ):平和
- 金昭英(キム・ソヨン)1979年江原道江陵市生まれ
東京の語学スクールで日本語を学び、現在は水原市で日本語通訳として働いている。