風土47
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ジャージャー麺(자장면 / 짜장면)

 先月のコラムをお休みしてしまったことをお詫びします。
 インドを旅行中に原因不明の高熱に見舞われ、1週間以上も熱が下がらないため、這々の体で韓国に帰ってきました。まだまだ本調子にはほど遠いのですが、がんばって原稿を書きます。

 さて、韓国で中華料理といえば、最初に頭に浮ぶのがジャージャー麺です。韓国では中華料理店のことををジャージャー麺家と呼ぶ人もたくさんいるくらいポピュラーなのです。辛さが少なく甘味が強いのでこどもたちにも大人気です。価格の手ごろさと気軽に出前を利用できる便利さもあって、みんなが好んで食べる韓国の代表的な食べ物の一つといえます。

 ジャージャー麺とは、チュンジャン(春醤:甜麺醤よりもカラメル成分が多く、より甘くて辛味は少ない)に肉と野菜を入れて炒めた餡を麺と一緒に良く混ぜて食べる韓国独自の中華料理です。

 仁川のチャイナタウンにあった中国料理店「共和春」が1905年にメニューに加えたのが発祥といわれ、中国人が好んで食べるチャオジャンメンを韓国人の口に合うようにアレンジしたものがジャージャー麺と呼ばれるようになりました。

 ジャージャー麺の餡の作り方は、まず、チュンジャンに油を加えて10分ほど炒めておきます。次に、フライパンに適当な大きさに切った豚肉とみじん切りのニンニク、生姜を入れて軽く炒め、ここに先に炒めておいたチュンジャンを加えます。さらに、小さめのサイコロに切ったタマネギ、ジャガ芋、ズッキーニを入れ、醤油と酒を加えます。最後に細かく切ったキャベツを入れて、砂糖とオイスターソースで味を調えた後、水溶きの片栗粉を少し加え、とろみがついたら完成です。

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「ハリムガク」の外観 / 店内のようす

 今回は二つのお店を取材しました。

 まずは、水原市にある「ハリムガク」というお店です。食べに来るよりも出前の注文の方が多いそうで、周辺地域の隅々まで配達をしています。

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麺と餡は別々で出てくる / 韓国式に良〜く混ぜてからいただきます

 お店の一番人気メニューはやはりジャージャー麺(4500ウォン)ですが、少し贅沢にイカとエビなどをたっぶり使った海鮮ジャージャー麺(7000ウォン)を頼んでみました。

 香ばしくて適度に甘いチュンジャンの味が麺とよく合っており、さらに海鮮食材が加わったことで上品な味になっています。

 韓国料理ではチュンジャンを使うことがないため、普段とはまったく違う料理を食べているような気がするのか、ジャージャー麺を食べる時はこどもも大人もみんな嬉しそうな顔をしています。

 急な来客時や、体調が悪くて炊事ができない、あるいは食欲がなかったりする時など、家まで配達してくれるこのような中華料理店は欠かせない存在です。

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店内には出前用の箱が並んでいた / お店の前に止めてあった出前用のバイク

 次に紹介するお店は、富川市にある手打院(スタウォン)です。お店の名前からも分かるように手打ちの麺で有名です。

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手打院(スタウォン)の外観 / 店内のようす

 やはり一番人気メニューはジャージャー麺(6000ウォン)で、麺がシコシコして美味しいのはいうまでもなく、オープンキッチンで麺を打っている姿がホールからも良く見えるので、見る楽しみも加わります。

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オープンキッチンで麺を手打ち

 食べている間は麺の美味しさばかりに気が向くので、美味しい麺に良く合う基本に忠実でシンプルな味の餡の美味しさに気付くのは食べ終わってからです。

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手打院のジャージャー麺 / やっぱり良〜く混ぜてからいただきます

 見た目は少し油っぽい感じがしますが、タマネギを多く使っているからでしょうか、それほどしつこくなく、餡も残さず最後まで美味しくいただくことができました。お好みで粉唐辛子をかけたり、酢漬けのタクアンのスライスを一緒に食べます。

 このお店は出前サービスがないのですが、遠くから車でやって来るお客さんが多いそうです。

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マネージャーさん / 名刺の裏にはイラストマップ
 韓国では2月14日のバレンタインデーと3月14日のホワイトデーに次いで、4月14日をブラックデー(Black Day)と呼び、付き合う相手がいない人々がジャージャー麺を食べる日として知られています。いつから始まったのかも、その理由も良く分かりませんが、韓国の若者の間に定着しています。

  • 金昭英(キム・ソヨン)1979年江原道江陵市生まれ
    東京の語学スクールで日本語を学び、現在は水原市で日本語通訳として働いている。