風土47
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チョダン・スンドゥブ(초당 순두부)

 ひんやりと澄んだ空気を感じる季節になると、秋空のようなさっぱりとして少し暖かいスープが欲しくなります。そんなことで、先月に続いて私の故郷である江陵の名物、チョダン・スンドゥブを紹介してみたいと思います。

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チョダン・ハルモニ・スンドゥブのスンドゥブ定食

 チョダン・スンドゥブは全国的にもかなり知られており、江陵を訪れる人々に最も人気がある料理のひとつです。

 チョダン(草堂)は江陵市内の地名で、スンドゥブは大豆を煮て作る豆乳を「にがり」で凝固させたもので、これを押し固めると豆腐になります。チョダンでは近くのきれいな海水を「にがり」の代わりに使うので、水分が多くてふんわりと柔らかいのが特徴です。

 チョダンで何代にもわたって豆腐を作って販売していた人々が食堂を出し始め、今では20以上にお店が増え、盛んに商われています。「元祖」「100年の伝統」さらには「400年の伝統」などと謳うお店もありますが、私は子供の頃から行きつけのチョダン・ハルモニ(お祖母さん)・スンドゥブというお店にしか行きません。

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チョダン・ハルモニ・スンドゥブの入口

 地元で栽培された質の良い大豆だけを使い、豆腐本来の味を出すために、お店の片隅にある作業場で昔のままの手作りで一日に4、5回スンドゥブや豆腐を作っています。見学することもできますが、その過程における時間と労力を考えると、スンドゥブ定食の6,000ウォンという値段は安いと感じました。

 朝7時から開くので朝ご飯にもぴったりだと思います。入口からは小さくみえますが、中に入ってみると古い建物が何軒かつながっており意外に広いのです。
 お店の周辺には松がたくさんあり、のんびりと秋を楽しみながらお散歩するにも最適です。

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スンドゥブ定食をいただきます / サイドメニューの豆腐

 私はスンドゥブ定食と豆腐を半分(3,500ウォン)頼みました。

 おかずは、普通のキムチと1年以上熟成させたキムチが出てきました。上手く熟成させたキムチならではの酸味とその匂いだけでも韓国人にはたまりません。1年以上になるとキムチの辛さよりも酸味の方が大事になってきます。このお店のキムチのうまさだけで、他の料理の味が大体想像できます。

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普通のキムチと古漬けのキムチ

 自家製の味噌を使った青唐辛子の味噌漬けは、塩を控えたおいしい味噌をたっぷりと、青唐辛子もサクサクして、ご飯なしでもついつい手が行ってしまいます。

 チゲには大根しか入っていませんが、シンプルながら淡白でコクのある味噌をむしろよく生かしているので、田舎の祖母が沸かしてくれた味噌チゲの味を思い出しました。

 どれも美味しくて、しかも必要なおかずだけが付いているという絶妙さに思わず嬉しくなってしまいました。

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青唐辛子の味噌漬け / ふんわりと柔らかいスンドゥブ

 スンドゥブは好みで唐辛子と醤油、古漬けのキムチをスンドゥブに入れて食べたりしますが、この店のスンドゥブは美味しい大豆の味がしっかりしてとても柔らかいので、口に入れたとたんにスーッと喉を通るほどですが、すこし噛んでみると新鮮な豆の香ばしさと海の塩味を感じることができます。

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松並木に囲まれたチョダン・ハルモニ・スンドゥブ

 食事を終えた後は、松の木立の間から吹いて来る涼しい秋風が気持ちまで満足させてくれました。

  • 金昭英(キム・ソヨン)1979年江原道江陵市生まれ
    東京の語学スクールで日本語を学び、現在は水原市で日本語通訳として働いている。