風土47
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北門海鮮鍋(북문 해물탕:ブックムン・ヘムルタン)

 2009年6月から連載してきた「韓国・庶民のたべものあれこれ」は、今月が最終回となりました。

 これまで、このコラムを愛読してくださったすべての方々に感謝の気持ちをお伝えします。つたないコラムではありましたが、韓国の庶民の食文化について少しでも興味と理解をいただけたとしたら大変嬉しく思います。

 今後も何らかのかたちで韓国の情報をお伝えしていくつもりですので、よろしくお願いいたします。

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世界文化遺産・華城の北門

 さて、最終回ということで、今月は私のとっておきのお店をご紹介します。

 水原市を訪れた多くの人々に紹介して、最も喜んでもらえたのが「北門海鮮鍋」というお店です。世界文化遺産である華城の北門から徒歩で5分ほどの距離にあるこのお店は、30年以上も海鮮鍋だけにこだわってきました。いまやその味と量で水原市の名物のひとつになっています。

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数年前にリニューアルし、外観も店内もすっきりとしました

 メニューは海鮮鍋の大(50,000ウォン)と小(35,000ウォン)のみで、今回は知人ら3人で小を注文しました。

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海鮮鍋の小。鍋一杯に海鮮物が入っています

 海鮮鍋なのに、海鮮より野菜の方が多くてがっかりすることがしばしばありますが、このお店では、ワタリガニ、エビ、タコ、イカ、タチ、ホタテ、カキなどが鍋いっぱいに盛り込まれており、だれでもこれを見た瞬間、お約束のように歓声をあげるほどです。しかも鍋の底までぎっしりなことにもう一度驚かされます。これでこの値段? 信じられないほど良心的な価格です。

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タイミングを見計らってお店の人が具を切り分けてくれます

 タコが生きているので、鍋の外に出ないように蓋をし、テーブル上のガスコンロで煮ます。タコが茹で上がる頃を見計らってお店の人がタコと海鮮物を食べやすく切り分けた後、鍋の下にあるモヤシを一番上にのせ、蓋をせずに弱火で煮ながら鍋を楽しみます。

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モヤシを鍋の上にのせて煮込みます / 今日のバンチャンです

 濃い味付けに慣れている人にはちょっともの足りないかもしれませんが、この鍋は調味料の味がほとんど感じられず、アサリをベースにしたスープと海鮮物が調和した豊かな味わいがあります。

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お店の人が味付けをしてくれます / さて、いただきましょう…

 唐辛子粉、刻んだキムチ、ニンニク、塩、ゴマ油などで味付けし、モヤシと大根が入っていて、辛いながらも磯臭さが少なくすっきりとした味です。これにセリも特有の香りを加えます。時間が経つほど海鮮物から出るダシがより濃い香りと味を感じさせます。

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シメはご飯や刻み海苔などが入った鍋にスープを移し / 雑炊を作ります。これがまた美味しい

 水原に来る機会があれば是非とも味わっていただきたい鍋なのですが、「北門海鮮鍋」は予約が不可能で、しかも材料が無くなり次第お店を閉めるので注意が必要です。

 食事を終えて店の外に出ると、冷たい風が激しく吹いていたのですが、おいしくて健康的で手ごろな価額の夕食に満足し、夜になると美しくライトアップされる華城の城壁に沿ってしばらく歩きながら、一日一日の食物の大切さと影響を考えていました。

  • 金昭英(キム・ソヨン)1979年江原道江陵市生まれ
    東京の語学スクールで日本語を学び、現在は水原市で日本語ガイド兼通訳として働いている。
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