風土47
~あなたの街の〝ゆかり〟を訪ねて~塩原直美の「あんな古都  こんな古都  京都物語」
~新年に願うことは「健康」…でも、人に知られたくない…~(2014年1月1日)

 皆様、明けましておめでとうございます。

 今年も「風土47」および当コラム「京都物語」を、どうぞ、よろしくお願いいたします。今年も一年、京都に足繁く通い、他ではあまり紹介されていない京都の魅力を私独自の視点でお伝えして参りたいと存じます。

 さて皆様、初詣に行かれましたか?これからでしょうか?年始に願うことは「商売繁盛・家内安全・金運上昇・合格祈願・良縁・大願成就」など多々ありましょうが、何と言っても「無病息災、健康でありますように…」ですね。

 今回は「健康ご利益」をテーマにしますが、それでは普通なので、当コラムならではの、世間一般的でない、身体の部位にこだわった、かなりピンポイント、ある意味、切実な願いがこもったスポットをご紹介します。該当の皆様はこっそり?!読み切って下さい。但し、あくまでも信心、信仰心です。お参り後、病状、現状が回復、改善しなかったとしても、私、責任は取れませんので、悪しからず。

最近、抜け毛が気になる方、ご主人、彼氏の頭髪の気になる方

嵐山・小倉池の畔にある「御髪神社」

御髪神社の「髪塚」
 京都、嵐山、世界遺産の天龍寺の裏、竹林の道を抜け、北へ進むと小倉池に出ます。多くの観光客は、そのまま池に沿って真っ直ぐ進んで「常寂光寺」や「二尊院」の方向へ歩いて行きます。その時、ふと、池の向こう岸に小さな神社に気づく方もおられるでしょう。でも立ち寄る人は殆どいません。それこそ、髪の神様「御髪神社」です。「みかみ」と読みます。

 宮司さんは他の神社も兼任しているようで、社務所は不在の事が多いです。行ってみると、髪塚などもあり、櫛の形にデザインされた奉納絵馬を読むと髪の毛に関する切実な願いが書かれています。

 こちらに祀られている御祭神は藤原采女亮政之(ふじわらのうねめのすけまさゆき)という人物。政之の父は、中世・鎌倉時代の亀山天皇(のち上皇)に仕え、宮中の宝物係を担当していました。その時、宝物の管理を任されていた政之の父は宝刀を紛失してしまいます。恐らく盗まれたのでしょう。その宝刀探索の為、全国行脚することになります。

 丁度、元寇が日本に攻めてきたタイミングと時重なり、西の防御にも当たらねばならず、政之は父と共に下関に居を構えます。そこで政之は、新羅人から技術を学び、下関で武士の髪結いを始めて小遣いを稼ぎ、父を助けたと言われています。その下関・亀山八幡宮の地には「床屋発祥の碑」が建ち、政之は「髪結い職の祖」とされ、崇められるようになりました。

 では、どうして京都・嵐山に政之を祀った神社があるのか?それは仕えていた亀山天皇の御陵(お墓)が天龍寺の近くにあるご縁から、と考えられます。いずれにせよ抜け毛でお悩みの方、一度、御髪神社にお参りしてはいかがでしょう。ご本人でなくとも、絵馬には「彼氏の髪がこれ以上抜けませんように」とか「主人はハゲ、発毛祈願」など身近な方の切実な願いも絵馬から読み取れます。初詣は“発毛”祈願へ、是非。

美人になりたい!女性の皆様へ 美容祈願に出掛けましょう

泉涌寺の楊貴妃観音堂 この先の建物の中に美しい観音様が安置

八坂神社境内の奥に佇む「美御前社」

下鴨神社境内、糺の森の中にある「河合神社」

河合神社の鏡絵馬、個性豊かに美人顔が描かれている

河合神社で参拝者に人気の「美人飴」
 「美人」はより美しく、それなりの人こそ、今年は「美人」に!と何か手立てはないものか?パーツは手術でもしない限り変わらないので諦めるしかありませんが、肌の手入れや食事、瘠せた太ったで形相も多少変わる?かも…とにかく美人祈願、美容系の神様へ、まず、お参りに。京都には美人祈願にご利益のある社寺が幾つかあります。有名なのは「泉涌寺観音堂の楊貴妃観音(聖観音像)」です。

 玄宗皇帝が楊貴妃の冥福を祈って香木で造らせたという伝承を持った観音様。以前は秘仏であったので、極彩色が残っており、その美しさに思わず見とれてしまう綺麗な仏様です。現在は常時公開していますので、美人祈願はいつでも可能。

 昨年11月に楊貴妃が美しさを保つために毎日、ライチ果実をお茶に入れて飲んでいたという伝説にちなみ、泉涌寺ではオリジナルライチティー「美妃茶」(びひちゃ)も発売。天然ライチ香料を入れた紅茶です。私も次回、泉涌寺にお参りに行ったら授与していただく予定。

 それから八坂神社の境内にある「美御前社」。「うつくしごぜんしゃ」と読みます。

 ここには美人の宗像三女神が祀られています。社殿の前に「美容水」という湧水があり、お肌に良いということで化粧水として愛用している京美人も多い?観光客の方が多い?ということで、女性の参拝者が絶えません。毎年11月には業界関係者による理容美容感謝祭が行われています。

 最後にもう一つ。下鴨神社の河合神社。ここの御祭神は玉依姫命で女性の守護神です。

 この神社の絵馬の形は手鏡の形をしていて、絵馬には始めから顔が描かれているのですが、そこに参拝者が自ら用意されたクレヨンや色ペンで、その顔に色を付けます。要するに絵馬に描かれた顔にオリジナルに化粧を施すというユニークな絵馬です。

 奉納された絵馬を見ると、凄い絵心のある、「上手!」と褒めたくなる作品もあり、それらを見るだけも楽しいです。漫画家顔負けの作品も中にはあります。美人祈願というより、化粧上達なのかな?と“美人”確かに化粧の腕を上げることが一番の近道か?と思い直したりするのであります…。ここの「美人飴」も人気です。

人知れず長年、痔でお苦しみ、ツライ方々へ

宝塔寺にある「秋山自雲」の霊を祀る墓石

伏見大手筋商店街にある本教寺の「秋山自雲」の墓
 痔に苦しむ人は結構多いみたいですが、なかなかカミングアウトは出来ませんよね。あまり聞きませんし。昔の勤務先の上司が辛そうだったことや20年程前に我が父が手術し完治したのを覚えています。

 今回、ある講義で部位のご利益を調べていて、お尻を調べていたら、痔の神様に辿り着き、経緯を示す秘話もあり、お参りできる寺院も沢山ありました。

 まず、痔病平癒の神様とされているのは「秋山自雲」という人物。「しゅうざんじうん」と読むようですが「あきやま」としている所もあるようです。彼の霊を祀る場所は全国に沢山あります。こんなにあるの!と驚きと共に冒頭で述べたように痔で苦しむ方がいかに多いかを示しているとも言えます。皆様のお住まいの近くにも調べたらあるかもしれませんね。その大半は日蓮宗の寺院にあるのが特長です。

 京都には8カ所?あると言われています。確実に裏が取れている京都の社寺を2か寺ご紹介します。

 その前に「秋山自雲」という人物について。秋山自雲は実名・岡田孫左衛門と言います。彼は38歳の時に痔を患い、出家して痔の平癒を祈願し続けたのですが治らず45歳で亡くなります。

 自分の死後、痔で苦しむ人々を救いたいと生前に誓願して、この世を去ったと言われています。友人がその後、痔になり祈願すると治ったとか、尾張公が祈願して完治したなど、そのご利益がある話が伝わっています。

 京都の深草にある宝塔寺、ここの多宝塔から墓地へ向かう途中に秋山自雲の霊を祀る墓があります。

 それから伏見の大手筋商店街に面している本教寺の境内にもあります。境内に入れば直ぐに分かります。商店街の賑やかさから一転して静かな、誰もいないはず?の境内。自雲の墓に一応、私も手を合わせ「痔にはなりたくありません」とお願い。

 まあ、もし、誰かが見ていたら「あの子、痔だ」と見られてしまいますね。取材は人の眼を気にしていたら出来ません。とにかく、この2ヶ寺は参拝者も少なく、誰にも会わずにお参りできるタイミングが多々ありますので、痔の皆様は是非、平癒祈願へ。

 今回は新年早々、マニアックな話題で幕開けです。
 でも健康第一。一年、皆様も、お元気にお過ごしください。

アクセス・問い合わせ 全て京都 最短で行ける駅、バス停を明記しています

  • 御髪神社:嵐電「嵐山駅」下車徒歩15分
  • 泉涌寺:市バス「泉涌寺道」下車徒歩15分
  • 美御前社:市バス「祗園」下車徒歩5分
  • 河合神社:市バス「新葵橋」下車徒歩5分
  • 宝塔寺:京阪電鉄「深草駅」下車徒歩15分
  • 本教寺:京阪電鉄「伏見桃山駅」下車徒歩5分
プロフィール:塩原直美(しおばらなおみ)
東京生まれ、國學院大學卒業後、スポーツ新聞社を経て京都市へ転居。東京に戻り京都市の「京都館」勤務、2012年春退職。現在、首都圏と京都を繋ぐ観光アドバイザーとして活動中。BS朝日「京都1200年の旅」、「京都検定」講師。京都観光文化検定1級取得。