風土47
~あなたの街の〝ゆかり〟を訪ねて~塩原直美の「あんな古都 こんな古都 京都物語」
~京都の絵馬に願いを託して、五角形に秘められた物語~(2014年2月1日)

 寒さ厳しい毎日ですが、いかがお過ごしでしょうか?インフルエンザやノロウィルスなども流行っておりますので、健康には気を付けて冬を乗り切りたいですね。

 さて、新年に皆様は、お寺や神社に初詣、破魔矢の授与、おみくじを引きにいかれた方も多いはず。受験シーズンでもあり、神様仏様に最後のお願いにあがる学生さんもおられることと思います。

 そうした社寺で願い事を書いて奉納する絵馬。これを、こっそり読むのが趣味という訳ではありませんが、読むことありますよね。祈願者の切実な願いに胸が熱くなり、時にニヤケ、時に同情します。私は、この絵馬を集めており、現在、その数134点、コレクションにしています。そこで、今回、宣伝になってしまうのですが、初めての企画な上、無料なのでお知らせします。

2月4日~19日、六本木にて「京の絵馬展」開催

平安神宮の四季折々の絵馬
 毎年2月に、京都市などが主催となって、東京で京都の大イベントを開催しています。その名も「京あるきin東京」。今年で4年目を迎えます。東京にいながらにして、京都を味わえる、京都を感じる、学べる企画が盛りだくさん。東京に出店している京都のお店や施設、大学が協力して構成されています。スタンプラリーで名産品プレゼントや、さらにクイズ正解者、アンケート協力で宿泊券などが当たるプレゼントも用意されています。詳しくは京あるきのHP(www.kyoaruki.jp)または、東京八重洲の京都館で冊子をGETなさってください。

 その沢山のイベントの企画の一つとして、今回、私の収集している絵馬を展示します。その名も「願いが叶う!京の絵馬展~京都の神社・寺院の絵馬大集合~」です。絵馬に秘められた物語、ご利益、デザインが意図するイイ話など、面白い京都が発見できるはず。京都に行きたくなるような雰囲気でお待ちしております。絵馬一つ、一つに私が短いキャプションを付けていますが、それでは物足りない、もっと話が聞きたい!という方は、会場に京都検定合格者がスタッフとして常駐していますので、絵馬をきっかけに京都の話に是非、花を咲かせてください。

例えばこんな絵馬が…と言って話が尽きない…

2014年&午年にちなんだ絵馬
 右の写真をご覧ください。2014年、午年にちなんだ絵馬を並べています。左上の馬が1頭描かれている絵馬は上賀茂神社。5月5日の賀茂競馬の様子です。右下は菖蒲の節句発祥の地であり、馬の神様、競馬ファンの信仰も厚い藤森神社の絵馬。そして右上は「蹴鞠」の絵。今年はFIFAワールドカップが6月に開催されますよね。蹴鞠、サッカーの神様、白峯神宮(摂社の地主神社が蹴鞠の神)の絵馬です。

 それぞれ説明をもう少し加えると、上賀茂神社は世界遺産の一つ。京都三大祭の葵祭でも知られます。この絵馬にある5月5日の賀茂競馬も、実は葵祭の一環なのです。境内の芝生で、馬が駆け抜ける姿は勇壮美。

 藤森神社は、あまり聞かないかもしれませんが、アジサイの名所として御存じの方もおられるでしょうか?「菖蒲の節句発祥の地」であり、菖蒲は尚武⇒勝負に繋がるなどもあって、勝運の神でもあります。藤森神社でも5月5日には「駈馬神事」というアクロバット的な馬乗りが行われ、迫力満点。京都市の民俗無形文化財に指定されています。

 白峯神宮は西陣にある神社です。境内にある地主社は蹴鞠の宗家である飛鳥井家の邸宅があった場所であり、蹴鞠道の神である精大明神が祀られています。そのことから、近年のサッカーブームも追い風となり、有名になった神社の一つです。時折、日曜日に蹴鞠保存会の皆様が境内で練習しています。(本番は様々な神社で蹴鞠を奉納するとき)このように、3枚だけでも、話は尽きません。

絵馬は五角形とは限らない、あんな形、こんな形に意味がある

絵馬の形も色々とあるのです
 右の写真をご覧ください。絵馬定番の五角形ばかりではありません。左上からキツネ、瓢箪、イチョウ、イノシシ、星、ハートの形となっています。

 キツネはご存じ、お稲荷さんですね。伏見稲荷大社の絵馬です。キツネ目が愛らしいです。

 次に瓢箪。これは豊国神社の絵馬。祀られてる人物は超有名な歴史上の人物、武将。そう、豊臣秀吉です。秀吉の馬印が瓢箪だった由縁です。

 イチョウは、これは難問。「御金神社」と書いて「みかね」神社と読む神社の絵馬です。ここの御神木が立派なイチョウであることから絵馬がイチョウ形にと言われています。裏は取れていませんが、イチョウは秋になると金色に紅葉することから、お金をイメージするとも聞いたことがあります。商売繁盛、お金の神様です。

 イノシシは御苑の西、「護王神社」の絵馬です。護王神社の御祭神は和気清麻呂という奈良時代の貴族。宇佐八幡宮へ行く道中、刺客に襲われ足を怪我して難儀していたところ、300頭ものイノシシが現れ、清麻呂を宇佐まで案内し、さらに足も完治していたという伝説から、護王神社の神の使いはイノシシとなっています。この足が治った功徳から、足腰守護の神社として崇められています。神社には通常、狛犬が鎮座していますが、ここは狛猪がおられます。

 下の星は五芒星と言って、陰陽道とゆかりが深いマーク?です。これでお分かりの方もおられると思いますが、この絵馬は安倍晴明を祀る晴明神社の絵馬。五芒星と言いますが、晴明神社では桔梗紋と言い神紋となっています。また境内には桔梗苑があり、桔梗が咲き誇ります。

 最後にハート型、本当は葵の葉の形なのですが、もうハート形で縁結びという方が主流になりつつあります。でも葵の葉なのですよ。これは上賀茂神社にある摂社・片岡社の絵馬で、恋愛成就、縁結び、家内安全のご利益があります。なぜ?というのは、是非、会場で。…という様に、絵馬に描かれた絵や形は由緒や祀られている神様、逸話や伝説などが深く関わって、ご利益となっています。知られざる話、隠された物語を是非、絵馬を通して楽しんでください。

 今回は134点、まだまだ授かりしそびれている絵馬がありますので、これからも収集し続けたいと思います。絵馬は収集するものではありません。でも、そこに描かれている縁、ご利益を知ることで、勉強させてもらえたらと思います。一つ、一つに訪ね歩いた思い出があり、全てが私のかけがえのない宝物です。是非、お近くにいらしたら、お立ち寄りください。入場無料です。

 最後に134点の中で、私のお気に入りの絵馬は…このサイトだけに告白しておきます。整理番号42番43番です、会場でご確認を。

願いが叶う!京の絵馬展

  • 開催期間:2月4日火曜日~19日水曜日(休館は5日と12日のみ)
  • 開館時間:12:00~18:00  入場無料
  • 場所:京のお稚児さん(六本木7-14-6六本木FFビル地下1階)
  • アクセス:東京メトロ・都営大江戸線「六本木」駅下車 4a出口を出て、そのまま進行。信号を渡らず、左手へ進む。モスバーガーのあるビルの地下1階、駅から徒歩1分。
  • 問い合わせ: 京のお稚児さん 電話03-3408-5170
  •        京都商工会議所会員部 電話075-212-6441
プロフィール:塩原直美(しおばらなおみ)
東京生まれ、國學院大學卒業後、スポーツ新聞社を経て京都市へ転居。東京に戻り京都市の「京都館」勤務、2012年春退職。現在、首都圏と京都を繋ぐ観光アドバイザーとして活動中。BS朝日「京都1200年の旅」、「京都検定」講師。京都観光文化検定1級取得。