風土47
~あなたの街の〝ゆかり〟を訪ねて~塩原直美の「あんな古都 こんな古都 京都物語」
~~サッカーワールドカップ いよいよ開幕~~(2014年6月1日)

 いよいよ今月13日(日本時間)にサッカーワールドカップブラジル大会が開幕します。サッカーファンのみならず、野球ファンの私でも、やはり連日、昼夜逆転?寝不足の日々…となることでしょう。ブラジルと日本の時差は-12時間。ブラジル国内でも2時間の差があり3つのエリアに分かれているそうです。とは言え-12時間なので、計算しやすいですね。

 さてTVの前の応援と共に、我々に出来る事と言えば「神頼み!」や「願掛け」。選手たちが怪我なく、思う存分、自分たちの力を発揮してくれることが一番。…とは思いますが、出来る事なら勝ち続けて欲しい!…と願ってしまう。いうことで今回は「SAMURAI BLUEを応援できる京都」をご紹介します。その前に…。

戦勝祈願した歴史人物にあやかり「必勝だるま」の展示~本庄市~

本庄市役所1階市民ホールに6月末まで展示されている「必勝だるま」写真提供:本庄市
 日本各地に神社は数あれど「日本」という国名がついた唯一の神社「日本神社」がある埼玉県本庄市児玉町。この神社は平安時代、蝦夷軍(現在の東北地方で朝廷軍に激しく抵抗していた軍)の鎮圧、平定に当たった征夷大将軍・坂上田村麻呂が必勝祈願したと言われる伝説が残されています。そして田村麻呂は長年に渡って戦った蝦夷軍をついに降伏させます。

 その勝負運にあやかり2006年、2010年のサッカー男子日本代表、そして記憶に新しい2011年の女子、なでしこジャパンへ「日本神社の必勝だるま」を本庄市が贈呈。監督や選手のサインが入った歴代の「必勝だるま」の3体が現在、本庄市役所の1階ロビーで展示されています。(6月30日までの土休日を除く、平日8:30~17:15の展示)

 本庄市は「日本サッカーを応援する自治体連盟」に加盟しており(全国に280ほどの自治体が加盟)、今回も本庄市児玉町商工会青年部が「日本神社の必勝だるま」を日本代表に贈呈する予定とのこと。応援する我々の願いの一つの形ですね。祈願叶って「だるま」に目を入れ、祝杯を挙げたいな。

※ちなみに坂上田村麻呂は、あの京都・清水寺を創建した人物としても知られている平安時代の武将です。

サッカーに通ずる、蹴鞠の神「白峯神宮」の精大明神にお参り

蹴鞠の神様「精大明神」を祀る白峯神宮の「地主社」
 さて、サッカーに通ずる「蹴鞠」のお話しから始めます。

 15年ほど前までは、境内はいつも静かだった京都上京区にある「白峯神宮」。ここ5~6年?で何故か?有名になり、いつでも修学旅行生の姿が見られるようになりました。お目当ては「蹴鞠の神」「球技の守護」へのお参りなのでしょうか。授与品も当初は「闘魂」と縫われたお守だけでしたが、今は部活ごとの「叶う輪」やリストバンド、ヘアーバンドなど、スポーツ色が豊かになりました。

 蹴鞠の神にお願いする前に、まずは本殿にお参りを。白峯神宮のご祭神は崇徳天皇と淳仁天皇です。そして球技・芸能の神は境内の東にある摂社・地主社に祀られている精大明神です。平安時代から蹴鞠と和歌の宗家・師範として朝廷に仕えた公家・飛鳥井家の守護神が精大明神。この場所に飛鳥家の屋敷があったとされています。それゆえ「地主社」。球技・スポーツ、学芸上達の社として全国から崇められています。


蹴鞠碑は撫でて球運を授かります。蹴鞠の庭では、時折、練習する保存会の皆様に出会うことも。蹴鞠は皆で輪になり、鞠を地面に落さないようにプレーします
 当社には実際にプロや日本代表が使用して奉献されたボール(触ることも出来る)や、蹴鞠碑を撫でて球運を授かり、功徳を受ける参拝客で賑わっています。

 また蹴鞠の庭という15メートル四方の「まり庭」もあり、時々、蹴鞠保存会の方々が練習をしています。平安装束をまとっての本番はお正月4日、下鴨神社で「蹴鞠始め」ほか、各社での蹴鞠奉納行事です。

 今年、そのお正月の「蹴鞠始め」にワールドカップにちなみ、なんとブラジル人が飛び入り参加したのですよ!

まずは怪我なく、選手が力を発揮できますように…足腰守護を願う

蹴鞠がデザインされた白峯神宮の絵馬のほか、足腰守護のご利益のある社寺の授与品の数々
 さて、勝ち進んで優勝して欲しいという期待はありますが、何でしょうかね…親心というか、選手が皆、怪我なく、自分の力を出して悔いなく戦ってくれること、それを願わずにはいられません。

 そこで今回、私の知り得る限り?の京都における「足腰健全、足腰守護」の社寺を列挙します。


護王神社は狛犬ではなく、ご祭神の道中を助けた故事にちなみ狛猪が鎮座する
 まず「足腰の神」として筆頭に挙がるのは京都御苑の西側にある「護王神社」。御祭神である和気清麻呂が道中、沢山の猪に助けられ、足萎えも治ったという伝説から「足腰の神」として信仰があります。私も膝を痛めた経験もあるので、他の部位よりも自己ケアし、何度もお参りしています。痛みは再発していません。

小さな社でつい見逃してしまいそうな福徳社。足腰の神とされている
 それから杜若の名所で有名な大田神社の参道前にある末社「福徳社」も足腰の神。(余談ですが、北大路魯山人誕生の碑が社の背後に建っています)

大蓮寺は観光社寺ではありませんが「走り坊さん」の健脚にあやかりお守りを頂くことは何時でも可能
 また知られざる寺では、市営地下鉄東西線「東山」駅の近くにある大蓮寺の「走り坊さん」。「走り坊さん」は、洛中洛外を阿弥陀如来のお使いとして走りに走りまくった健脚の持ち主。その健脚にあやかり「足腰健常守り」が授与されます。

珍しい正座の観世音菩薩像がおられる宇治の「三室戸寺」
 そして、もう一つ。宇治の「三室戸寺」には仏像では珍しい正座をしている観世音菩薩(重文)がおられます。特別公開の時だけ後ろ向きに安置され、その両足裏の指の付け根を拝ませていただけます。仏様の足裏に手を合わせて、足の健康を願うということですね。

 簡単ではありますが足腰守護のご利益社寺をざっと、ご紹介しました。ご自身の足腰守護祈願に合わせ、是非、選手たちの足腰を守って!とお願いにお参りください。

JFA お馴染みのシンボル「八咫烏」に必勝祈願

下鴨神社・糺の森にある河合神社にある「任部社」は八咫烏命が祀られており、サッカー必勝祈願の社となっている
 最後にJFA(日本サッカー協会)のシンボルマーク、エンブレム、マスコットに採用されている、お馴染みの3本足の八咫烏の事も。八咫烏は熊野の大神のお仕えで、神武天皇東征の際、道案内をした故事でも知られます。全国にある熊野神社は、この八咫烏に縁がありますので、境内のどこかに、その図案やモチーフが発見できるはず。お近くの熊野神社で日本代表の活躍、勝利を願いましょう!!

 その八咫烏に因んだ、切り札!? 先日行った際、何やら絵馬が増え、その内容もブラジル大会のことが目立ち、続々と祈願者が訪れている気配を感じました…ズバリ・京都の下鴨神社・糺の森にある河合神社の「任部社」。この社には八咫烏命が祀られています。もう、それで「サッカーの必勝祈願の社」と言っても過言ではないですね。頑張れ SAMURAI BLUE!

プロフィール:塩原直美(しおばらなおみ)
東京生まれ、國學院大學卒業後、スポーツ新聞社を経て京都市へ転居。東京に戻り京都市の「京都館」勤務、2012年春退職。現在、首都圏と京都を繋ぐ観光アドバイザーとして活動中。BS朝日「京都1200年の旅」、「京都検定」講師。京都観光文化検定1級取得。「京都観光おもてなし大使」