風土47
~あなたの街の〝ゆかり〟を訪ねて~塩原直美の「あんな古都 こんな古都 京都物語」
堺で生まれた千利休と与謝野晶子 新名所がオープン!!(2015年3月1日)
 

千利休と与謝野晶子、堺で生まれた偉人二人を通じて堺の魅力と歴史を楽しめる新施設「さかい利晶の杜」は3月20日オープン
 毎回、京都のお話しから、ゆかりの街へ訪ねていくコラムですが、今回は逆バージョンでお届けします。

 3月20日、大阪・堺に新名所「さかい利晶の杜」(りしょうのもり)がオープンします。「利」は千利休、「晶」は与謝野晶子のことです。この二人、時代は違えども、堺の生まれ。茶人・利休と歌人・晶子の足跡を紹介する「さかい利晶の杜」。一体どんな観光施設なのか? 京都にもゆかりのある二人なので、気になります。

堺の歴史と文化が楽しめる「さかい利晶の杜」
 

利休と茶の湯をテーマに歴史文化で構成された「千利休茶の湯館」

歌人・与謝野晶子の作品の世界を映像とゆかりの品々で触れることが出来る「与謝野晶子記念館」
 オープン前ですが、簡単に施設概要をご紹介します。「さかい利晶の杜」は主に4つのゾーンに分かれています。

 まず1つ目の「千利休茶の湯館」には国宝の茶室・待庵の復元があります。「待庵」とは京都・大山崎にある利休作の唯一現存する茶室。その茶室を館内に再現します。またタッチパネルによって利休か生きた中近世の国際都市・堺を解き明かしていきます。千利休を通じて学ぶゾーンです。

 2つ目に「茶の湯体験施設」。立礼呈茶が誰でも気軽に体験できるコーナー。そして予約が必要ですが、初めての方でもOK、茶室でのお点前体験のエリア。

 3つ目は「与謝野晶子記念館」。歌人・晶子の作品世界の紹介と生家再現、着物などの愛用品などの展示があります。

 最後に「観光案内展示室」。堺の観光情報、昭和初期の堺のミニチュアジオラマなどがあります。

 観覧料金は大人300円。第3火曜日が定休。最寄駅は阪堺線「宿院駅」下車徒歩1分。オープンを機に土日祝のみ観光周遊バスが運行を開始するそうです。

 詳しくは http://www.sakai-rishonomori.com/

茶人・千利休ゆかりの京都
 

北野天満宮の境内に建つ「北野大茶湯」の石碑。開催は1587年

安倍晴明を祀る晴明神社の前に建つ「千利休居士聚楽屋敷跡」

千利休が茶の湯に使用したと伝わる「柳の水」
 京都には利休ゆかりの場所が沢山あります。有名なのは大徳寺です。秀吉の怒りをかい切腹の原因の一つとなった利休の像が安置されている山門(金毛閣)。そして利休の墓がある境内塔頭の聚光院。ここは茶道三千家の菩提寺でもあり、利休の命日の28日には毎月、供養の茶会が行われています。大徳寺以外では、秀吉と友好な関係の頃に開催された「北野大茶湯」。会場となった北野天満宮には、その時に使われたとされる井戸も残ります。

 そして、利休の京屋敷のあった晴明神社の前には石碑が建っています。その向かいにある一条戻橋は切腹後、利休の首が晒された場所。

 さらには町の中心部にある「柳の水」は利休が茶の湯で使用した名水。今も黒染物の敷地内に井戸が残っています。

 まだまだ利休ゆかりがあるはず。劇的で無念な最期ではありましたが、利休の偉大さは誰もが知る所であり、また、今も脈々と茶の湯の世界で利休の精神性は受け継がれています。政治権力は栄枯盛衰、儚さ、危うさがありますが、文化・芸道においては、受け継がれていく強さ、逞しさがあり、時代の流れで変化しながらも、ある意味で永久に不滅です。

情熱的な恋の歌人・与謝野晶子と京都
 

永観堂の境内、弁天池のほとりに与謝野晶子の歌碑が建つ

三角関係の恋の心情を思い出と情景に載せて読んだ歌が刻まれた碑

ツツジの開花に合わせて一般公開される蹴上浄水場

晶子が滞在した宿の跡に出来た蹴上浄水場。施設の片隅に晶子の歌碑が残されている
 一方、歌人・与謝野晶子も京都にゆかりがあります。京都市内には晶子の歌碑が12もあるそうです(昭和56年の頃の調査数なので、もしかしたら現存していないものもあるかもしれません)。

 紅葉の名所、見返り観音で知られる永観堂に、歌碑の一つがあります。後に夫となる与謝野鉄幹(当時は寛)と山川登美子の3人で訪れています。鉄幹はまだ、この時妻子がいて、また山川も鉄幹に恋をしており、三角関係での旅。翌年は、鉄幹と昌子は再び京都で落ち合い、2人きりで過ごします。その時に詠まれた歌が永観堂の弁天池の脇に建つ碑に刻まれています。

 「秋を三人椎の実なげし鯉やいづこ 池の朝かぜ手と手つめたき  晶子」

 また、その際に3人、翌年は2人で泊まった宿はもうありません。現在、その宿があった場所は京都市上下水道局の蹴上浄水場となっています。

 日頃は一般の方は入れませんが、ツツジの咲くゴールデンウイークには開花に合わせて施設の公開をしています。その時、施設を散策すると晶子の歌碑に出会えます。

 「御目ざめの鐘は知恩院聖護院 いでて見たまへ紫の水」

 まだまだ京都には晶子の歌碑があるはずです。堺の新しい観光施設と合わせて、歌碑を探してみてください。

 今回は堺の新施設オープンに合わせ、京都のスポットをご紹介しました。

プロフィール:塩原直美(しおばらなおみ)
東京生まれ、國學院大學卒業後、スポーツ新聞社を経て京都市へ転居。東京に戻り京都市の「京都館」勤務、2012年春退職。現在、首都圏と京都を繋ぐ観光アドバイザーとして活動中。BS朝日「京都1200年の旅」、「京都検定」講師。京都観光文化検定1級取得。「京都観光おもてなし大使」