


道具を使って様々な体験ものにチャレンジ。写真は「清水焼の絵付け体験」どんな湯呑が出来るかな?
そんな不器用な私が京都にはまり、時折、チャレンジしているのは伝統工芸体験。これまで友禅染め、和紙で行燈、清水焼絵付け、組紐、和菓子作り、扇子絵付けなど極めて“簡単”なものばかりだが、これがなかなか楽しい。出来栄えは非常に悪い。正直、日常で全く使えない。初心者体験ゆえ、使う道具はわずか数点に限られ、それさえも上手く使いこなせず毎回、誠に情けない。頭で理解していても、実技になると、想定外なことも起こり、力の加減やタイミングを模索しながら作っている。道具のコツがようやく掴めた頃「はい!終了、何となく完成」だ。でも作品の出来よりも、創作過程において大切な事にいつも気が付く。それは、職人さんの高度な技術力だ。無残な自作品と比べ、プロが作った販売品や作品を見ると「凄い、流石、どうして、こう仕上がるの?」と只々、尊敬、敬意しかない。同じ道具で作っているとは思えない…。そして職人さんが道具を大切にし、モノによっては何年も使い続けると深みを身にしみて理解できるようになったのは、こうした体験によるところが大きい。
そんな体験をしつつ、出会ったのが、御香宮神社の境内にある「桃山天満宮」だ。今回はここから始まり、そして兵庫県・神戸と繋がっていく京都物語をお届けする。


お酒、龍馬で知られる京都・伏見にある御香宮神社

御香宮神社境内にある「御香水」名水100選にも選ばれている

御香宮神社には伏見奉行所から移築された小堀遠州ゆかりの美しい石庭がある

御香宮神社にひっそりと建つ「桃山天満宮」は菅原道真が祀られている
そんな御香宮神社の境内にひっそりと建つ「桃山天満宮」。ほとんど気が付かないかもしれない。祀られているのは、学問の神として親しまれている菅原道真。歴史を辿ると600年ほど前に創建されていたようだが、当初はここではなく、伏見城下にあった。その近くに道真を崇拝する前田利家が屋敷を建てたとのこと。古地図や昨年の発掘調査で分かった前田家屋敷の位置関係からも、それは読み取れる。その後、伏見城廃城と共に天満宮も荒廃。後の天保期(江戸時代後期)に地元の寺の住職らが現在の近鉄・桃山御陵前駅あたりに天満宮を移築した。その時、使った大工道具一式が社に奉納され、1969年に御香宮神社境内へ天満宮は移転。江戸時代に奉納された大工道具一式59点が現在、兵庫県神戸にある「竹中大工道具館」に委託され保管・展示されているのだ。


新神戸駅から直ぐの「竹中大工道具館」は日本唯一の大工道具専門博物館

「竹中大工道具館」では収集されている3万点超の中から選りすぐった大工道具約1千点を常時見ることが出来る
前述の「桃山天満宮」の大工道具(天保期)は、地下1階の「歴史の旅へ」コーナーに展示されている。その中には現代では見られない穂先形状の錐があり、錐は穴をあけるための道具なのだが、この穂先形状型の使い方は不明…なんとも歴史ロマンを感じる道具の一つだ。

桃山天満宮の完成時に奉納された大具道具一式。一人の大工がもっていた一式が、ほぼ、そのままに伝わる非常に貴重なもの (公財)竹中大工道具館 写真提供
また、同館では企画展やワークショップも定期的に開催。土日祝日には「ちょこっと木工」という木工体験があり(100円~1500円とキットにより料金変動)、工作キットが用意され家族でも気軽に楽しめる(ほかイベント等で開催しない日もあるのでHPで要確認)。「大人の木工教室」などもあるが、これらは日時・要申込み制のため事前にHPでご確認を…。
そういえば、私が昔、作った鉛筆立ては、隙間から物差しが横に倒れ出ていたのを思い出した。リベンジにもう一度チャレンジしたいな…と不器用なくせに、嫌いじゃない私。モノづくりの楽しさは、“道具”が教えてくれて、モノづくりの醍醐味は“自分で試行錯誤すること”なのだろうなと…。
日頃、モノづくりから離れてしまっている皆様も、手先器用でお得意よ!の皆様も「竹中大具道具館」で木工体験、京都で工芸品体験をする「創作の秋」はいかがでしょうか。
京都市観光協会・体験施設一覧