風土47
~あなたの街の〝ゆかり〟を訪ねて~塩原直美の「あんな古都 こんな古都 京都物語」
その桜に隠れた観光小話

桜茶
 桜、満開の季節となりました。まだ雪深い地域もあると思いますが、桜前線北上中の最中、今回は「京都の桜名所」を他府県出身の人物などと共にご紹介します。

 桜茶でも飲みながら、ご一読下さいませ…

ザ・京都の桜「醍醐の花見」と「哲学の道」

醍醐寺の桜

哲学の道の桜
 戦国時代を終結させ天下統一をした豊臣秀吉はご存じの通り、尾張国の農家に生まれ、あれよあれよと登り詰め、天下人となりました。大阪のイメージが強い秀吉ですが、京都で桜の名所として名高い「醍醐の桜」は秀吉の足跡の一つであります。秀吉が自分の近しい人々1300人を招待してのお花見の宴を催し、その時に700本もの桜が醍醐寺に植えられたと伝わります。今も、その華やかさは変わらず、秀吉の豪華絢爛ぶりをイメージさせています。参道の桜並木を始め、霊宝前の桜なども必見。毎年4月には「豊太閤花見行列」も行われています(2017年は9日・日曜日開催)。

 「醍醐の桜」と共に、京都の桜名所として知られるのが「哲学の道」。この散策路に「桜」が植えられたのは大正時代。徐々に整備され、「哲学の道」という名称は昭和に命名。石川県(かほく市)出身で京都大学教授の西田幾多郎ら、哲学者たちが思案しながら、この道を歩いたことに因みます。約1・5キロの琵琶湖疏水沿いの散策路は銀閣寺前から熊野若王子神社へと至ります。歩きやすくなっている足元の敷石は市電の軌道敷石をリサイクル。美しい景観の中に様々な歴史が刻まれているのです。

戦国~江戸へ 動乱期に生きた人と桜

本法寺の桜

長谷川等伯銅像

建勲神社の桜

立本寺の桜
 安土桃山時代に活躍した石川県七尾出身の絵師・長谷川等伯ゆかりの本法寺は隠れた桜スポットです。本堂前には空を見上げた等伯の銅像があり、まるでお花見をしているかの様。この本法寺には長谷川等伯が描いた「涅槃図」があり、毎年、公開されています(2017年は4月15日まで、期間外の通常は複製を展示)。境内の門から多宝塔にかけての桜も見事ですので、この時期、西陣を散策するのでしたら、お立ち寄りください。

 市バスに乗車していると「建勲神社前・けんくんじんじゃまえ」というアナウンスが流れるのを耳にした方もおられるかもしれません。観光本やネットなどではあまり掲載されていないのですが、この神社は織田信長とその息子である信忠が祀られている神社です。船岡山という小高い山の中腹に社殿を構えています。なかでも麓の一の鳥居の周辺の桜が枝ぶり良くキレイに咲き誇ります。お時間ある方は、是非、本殿まで足をお運びください。
船岡山と言っても階段が整備され、険しくはないので容易に登れます。

 お次は石田三成の家臣・島左近の墓がある立本寺。ここは地元の方しかお花見していない超穴場。私も秘密にしておきたい桜の一つです。島左近は奈良(大和国)の生まれと言われ、後に三成を支えた軍師となり活躍します。関ヶ原の合戦で戦死した記録がありますが消息不明。一説には戦場から京都に逃れ出家し晩年をこの地で過ごしたと伝わります。境内には沢山の桜、しかもどれも枝ぶりが良く、横に枝が広がり、目線の高さに花弁があって、見上げるという行為が不要です。観光社寺ではありませんので、静かに境内を歩いて春爛漫を是非、楽しんでください。

近年、命名された名木桜

京都府庁旧本館中庭の桜

京北・黒田の百年桜
 現在、京都府庁のある場所は江戸時代に京都守護職の上屋敷があった場所。京都守護職を任命された会津藩主・松平容保ゆかりの地です。京都府庁旧本館の中庭は整備された立派な桜が現在6本あり、その1本に「容保桜」と名付けられたヤマザクラの名木があります。平成22年、この地に刻まれた歴史に因み命名されました。旧本館の建物と桜の調和がステキでちょっとレトロさも感じる魅力的な桜名所の一つです。

 最後に京都市中心部からバスを乗り継ぎ約2時間半、京北にある「黒田の百年桜」は見事な八重桜。車の運転が出来るならばレンタカーを借りれば時間は短縮されます。満開は4月中旬ごろ。この「百年」という名称は大阪造幣局が100周年を迎えた際に、この「黒田の桜」の若木が記念植樹され、ならば親木も「百年桜」と命名しようとのことで名付けられました。近くにある常照皇寺の桜も木によっては、この時期に満開となるので、合わせてお花見を。親木だけでなく、大阪造幣局の桜の通り抜けで「黒田百年」も探してくださいね。(2017年の大阪造幣局桜の通り抜けは4月11日~17日)

 京都の桜、まだまだ名所はありますが、他府県とのゆかりのある名所を一部ご紹介いたしました。京都はまさに、もう満開となるソメイヨシノから、紅しだれ桜、八重桜など、これから4月末まで、各種の桜リレーが楽しめます。是非お出かけください。

プロフィール:塩原直美(しおばらなおみ)
東京在住。京都市観光おもてなし大使・「首都圏と京都を繋ぐ観光アドバイザー」としてフリーで活動中。BS朝日「とっておきの京都」ブレーン、BS11「古地図で謎解き! にっぽん探究」京都担当、京都商工会議所講演会(東京会場)講師、朝日新聞デジタル「京都旅レシピ」コラム連載など。また中学校へ出向き修学旅行事前学習講義も行う。京都観光文化検定1級。京都市観光おもてなし大使ページ