風土47
~あなたの街の〝ゆかり〟を訪ねて~塩原直美の「あんな古都 こんな古都 京都物語」
2020年の大河ドラマは「明智光秀」
 

JR亀岡駅から徒歩すぐ。光秀が築城した「亀山城」跡。お堀を利用した南郷公園
 ようやく決まりました。2020年のNHK大河ドラマの主人公は「明智光秀」、タイトルは「麒麟(きりん)がくる」、主演は長谷川博己さん。良い配役ですね…。脚本は池端俊策さん。これから次第に決まるキャスティングが、本当に楽しみでなりません。
亀岡、南郷公園に建つ「明智光秀公築城亀山城跡」の碑
亀山城の模型(亀岡市資料館)
 …と言うのは、実はもう、何年も前から京都府内の亀岡や福知山、長岡京、大山崎、舞鶴などの観光、地元団体が一体となって、大河ドラマの誘致に力を入れてきました。署名運動もしていて、私も2度、署名しました。でも、それは「明智光秀」の単独主演ではなく、娘の細川ガラシャ、ガラシャの夫・細川忠興、その父・細川幽斎と4人の人物を中心にドラマを描いたらスゴイのよ!と誘致してきた次第なのです。

 私は、戦国時代のダンディズム、細川幽斎が好きなので、その大河ドラマ誘致に賛同し、応援してきました。ようやく、その願いが叶い、うれしい限りです。

 戦国時代、信長や秀吉という超有名人物、天下人、ヒーローがおり「謀反人、下克上」の代名詞のようになってしまっている明智光秀って、どうも印象が良くない…。ですが本当に嫌な人物だったのか? と問えば、どうも違うようです。信長から近畿地方を任かせられるほどの器量があり、信頼もあったわけです、優秀だったのでしょう。そして、庶民や家臣にとっても、「光秀はイイ主君だった!」という痕跡や話が地元には沢山残っているのです。

亀岡の観光PRキャラクター「明智かめまる」
地元、亀岡の土産「かめまるどら焼き」1箱3個入
 信長との確執、本能寺の変の真実、黒幕がいたのでは? など、歴史の醍醐味でもある、ロマンが様々語られていますが、先ほど申し上げた通り、信長の光秀評価は高く、光秀も、その期待に精一杯、応える働きをしています。戦国時代の京都周辺、近畿地方は“光秀の統治力なしには語れない”その史実を、どう描くか興味深いです。

 私、個人としては光秀の活躍はともかく、光秀を取り巻く、個性的な人物たちの生きざまを人間臭く伝えて欲しいですね。

 ある日、突然、謀反人の娘となり悲劇的な人生を送ることになる「細川ガラシャ」は光秀の娘「玉」と言います。細川幽斎の息子・忠興に輿入れし、長岡京市にある勝龍寺で新婚生活を送っています。この時代がガラシャにとって、一番幸せだったかもしれません。非常に仲の良い夫婦だったようです。「ガラシャ」と名前からも推測できるように洗礼を受けたキリシタン。キリシタンは自殺が認められていないゆえ、その最期も劇的でありました。


福知山にある復元した「福知山城」。JR山陰線の車窓からもよく見える街のシンボル

京都府のほぼ中央に位置する福知山。「福知山城」も光秀が築城した城(現在は復元)
 夫・忠興は利休の弟子、茶人としても有名です。秀吉から理不尽な処分にあった利休。蟄居謹慎を命じられ、淀川を舟で堺へ向かう利休を忠興は古田織部と二人で見送りました。利休も忠興を可愛がっていたエピソードも京都に残っています。その師弟関係、利休切腹のシーンもあるのでしょうか? その忠興の父、幽斎は足利将軍の家臣に始まり、信長、秀吉、家康と、激動の時代を見事に生き抜いた武将。当時の超一流の文化人でもあります。関ヶ原の前哨戦とも言われる戦では、田辺城(舞鶴市)で死の覚悟を持って籠城。「もはや、これまで!」というタイミングで天皇から「幽斎を死なせてはならぬ、殺してはならぬ」という“勅命”が出て、籠城を解き、助命します。

 それ以前、幽斎は光秀と友人であり、また親戚関係でありながらも、秀吉VS光秀では、光秀に味方しませんでした。その先を見据えていたのでしょう。


光秀に挙兵され、信長が死した「本能寺」の跡地に建つ碑

秀吉 VS 光秀「山崎の戦」古戦場の碑から天王山を望む
 戦国時代は、まさに、そうだと思うのですが、まずは「生き抜く」こと「生き延びる」こと。それによって時が味方し、流れが変わることも往々にしてあります。「死を持って終わらせること」は、ある意味では容易な選択かもしれません。武士道的には「美学」なのでしょうが、その選択をしない道、英知と勇気、先見の目で「生きる」ことを決断してきた幽斎の描き方にも注目です。上品で華があって、武闘派で超強そうで、賢そうで思慮深い風貌、雰囲気…配役は中村吉右衛門さんしかいないですね(笑)。歌舞伎がお忙しくてだめかもしれませんが、NHKのご担当の方、オファーしてみてください!

 信長、秀吉役に皆様は注目されるでしょうが、私は「細川幽斎」が誰になるのか? 気になります。※細川幽斎と忠興、ガラシャについては2018年1月のバックナンバーをご参照。


山崎の戦「明智光秀本陣跡」の案内板

伏見区小栗栖にある「明智藪」ここで槍に討たれ致命傷を負った光秀
 話を主役に戻しますと、明智光秀の京都ゆかりの場所、沢山あります。撮影もぜひ、京都の所々でロケしていただきたいものです。光秀の城は滋賀県の坂本城が有名かもしれませんが、京都亀岡の亀山城、福知山の福知山城も光秀の築城です。

 今回はキャプションを添えますので、写真を追って、そうした光秀のゆかりの京都スポットをお楽しみください。

 写真は順に亀岡市にある亀山城跡、福知山市にある福知山城、本能寺の変跡碑、天王山の戦い、致命傷を負った明智藪、胴塚と首塚が主なスポット、グルメ情報も。

京都市東山区、地下鉄「東山駅」近くにある「光秀首塚」
      山科区にある光秀の「胴塚」首と切り離
      された胴は、ここに埋められたと伝わる
餅寅の「光秀まんじゅう」
     「首塚」を管理する和菓子屋「餅寅」では
      光秀を偲んで「光秀まんじゅう」を販売
プロフィール:塩原直美(しおばらなおみ)
東京在住。京都市観光おもてなし大使・「首都圏と京都を繋ぐ観光アドバイザー」としてフリーで活動中。BS朝日「とっておきの京都」ブレーン、BS11「古地図で謎解き! にっぽん探究」京都担当、京都商工会議所講演会(東京会場)講師、朝日新聞デジタル「京都旅レシピ」コラム連載など。また中学校へ出向き修学旅行事前学習講義も行う。京都観光文化検定1級。京都市観光おもてなし大使ページ