風土47
今月の特集「主役にも名脇役にもなる…酒の肴」
酒の肴 暑さを乗り切る一品 夏のスタミナ、この一品 夏バテ解消、この一品 食欲の秋、この一品 心も身体もほっとになる逸品
今年も残りわずかになりました。
お酒を飲む機会が増える今月は、酒の肴の特集です。
みんなでわいわいつつくもよし、一年を振り返ってひとりでしんみり飲む時でもよし……。
酒の味を引き立て、「今年も無事に過ごせた。また来年もがんばろう」と、そんな風に思わせてくれる心温まる品を選びました。
ショップ揃い踏みでご紹介した酒と見比べて、あなたのお気に入りの組み合わせを選んでみてください。
取材/撮影 中元千恵子(トラベルライター 日本旅のペンクラブ、日本旅行作家協会会員)
アンテナショップおすすめ「酒の肴」
※ご紹介した商品は品切れしている場合があります。在庫を各アンテナショップにてお確かめください。
 また、商品の価格は掲載時のものですので、変動があることをご承知おきください。
釜石市・中村家
三陸海宝漬(330g 2800円)
 おいしい。最近、いろいろなところで評判になっているが、それも納得できる味わいだ。親潮と黒潮がぶつかる三陸沖は、世界三大漁場ともいわれる魚介の宝庫。そこで捕れる新鮮なアワビ、イクラ、メカブを使っている。メカブのとろりとした食感と磯の香り、イクラの塩味、アワビの食感。それぞれ別々に食べてもおいしいが、すべてが一体となったときの奥深い味わいはまさに海の宝。食材を知り尽くした地元の料理人ならではの発想だと思う。年末年始はちょっと贅沢に、これを肴に一杯といきたい。ご飯にのせて丼にしても、おかゆに入れてもおいしい。
三陸海宝漬
焼くさや
新島村・新島水産加工業協同組合
焼くさや(60g 1050円)
 伊豆諸島に古くから伝わるくさやは、トビウオやアジを“くさや液”という液に浸け、天日干しにした干物の一種。この“くさや液”は、発酵した魚醤のような液で、独特の風味と匂いが特徴だ。「くさやはおいしいけど、焼くときの強烈な匂いが苦手、という方にはこの焼くさやがおすすめです」と、店長。焼いた身がほぐして瓶詰にしてあるので、出して皿に盛るだけと手軽。軽くあぶると、さらにくさやの深い味わいが増す。島唐辛子や醤油をかけるとさらに風味がアップし、マヨネーズを合わせるとはまろやかになるそうだ。島焼酎とよく合う。ショップ併設のレストランでも味わえる。
近江八幡市・(有)森商店
味付け赤こんにゃく(200g 420円)
 近江八幡名物の赤こんにゃくは、その由来にいくつか説がある。派手好みの織田信長がこんにゃくまで赤く染めさせたとか、豊臣秀吉の時代から続く左義長祭りの山車が、赤い紙で飾られているのを見て近江商人が考案したとか。どちらにしろ、古くから近江八幡では当然のようにこんにゃくは赤かったという。店舗では普通のブロック状のこんにゃくと、小さく切った味付きのものを売っている。食感としてややなめらかさに欠けるような気がする。味付きは少し甘みが強いので、好みの味にするにはブロック状の購入がおすすめ。味は普通だが、話題性は抜群。おめでたいお正月の席などにふさわしい色だ。
味付け赤こんにゃく
でべら
三原市・石田政造商店
でべら(1袋 1050円)
広島ゆめてらす/広島県
 尾道の冬の風物詩といわれるのが、でべらを干す風景。正式にはタマカンゾウヒラメという魚で、瀬戸内海の尾道近海でよく捕れる。食べ方がユニークで、まず金づちで硬い背骨を砕く。少しあぶってから、ポン酢や、醤油とみりんを合わせたタレ、マヨネーズや七味で食べる。香ばしい味わいが酒とよく合う。天ぷらや唐揚げにしてもいいし、焼いたでべらをほぐしてわさびや海苔をのせて、お茶漬けにしてもいい。また、フグヒレ酒の要領で、よく焼いたでべらを器に入れて熱燗を注げば風味のいいでべら酒になる。この発売元は嘉永元年創業の老舗。伝統の味を酒のお供に。
高知市・(有)福辰
極上酒盗(120g 1050円)
「土佐の生んだ酒肴の最高傑作といわれるのが酒盗です」と店長。土佐といえば酒好きのお土地柄。そこで最高傑作と評されるのだから、酒に合わないわけがない。酒盗は新鮮なカツオの内臓を塩辛にしたもの。この極上酒盗は、カツオの胃(ジキ)のみ使用していて歯ごたえがいい。塩分を控えめにしてまろやかに熟成させてあり、さらに無農薬栽培のゆずの果汁を加えて爽やかな味に仕上げてある。10~2月の限定販売だ。酒盗という名は、第12代土佐藩主の山内豊資(とよすけ)公が「これはよい、酒がいくらでもいける。酒を盗みおったわい」と絶賛したことからだといわれている。
極上酒盗
ひもの丸丁
佐伯市・高橋水産株式会社
ひもの丸丁・さばの開き(1尾 450円)
ひもの丸丁・あじの開き(2尾 450円)
 脂がのっていておいしい。身の味が濃くて、噛みしめると甘みのある脂がにじみ出る。干物特有の臭みがまったく感じられないのは、新鮮なうちに調理している証拠だろう。豊後水域は潮流が速く、脂がのって身が引き締まった上質な魚が捕れる。関アジ、関サバに代表されるように、特に青物類の宝庫だ。その豊後の魚を大正2年から扱っている老舗干物店の商品。ピチットという食品用脱水シートを使い、低温熟成加工している。こうすることで生臭みをなくし、また体に有害とされる脂の酸化を抑えているという。伝統と最新の技術が混じり合って誕生した逸品。