風土47
元気が出る一品に担当者のメッセージを添えて がんばろう!東北
さむ~い冬に あったか~い鍋 受験生、残業の人たち応援 夜食 この一品 季節の変わり目 健康を保つ お弁当の友 Part III
東日本大震災から約2か月が経ちました。
多くの情報が報道される中で、被災地はもちろんまだまだ大変な状況ですが、周辺地域もまた風評被害という二次被害に苦しんでいることが伝えられています。
「大丈夫なものは大丈夫と発信して!」と、きっと現地の生産者や観光関係者は思っていることでしょう。アンテナショップは郷土と消費者を結ぶ双方向の窓口。その担当者の方々に、震災後の店のようすと各県の今の状況をお話しいただきました。
東北新幹線もやっと全線開通。被災地ではないエリアには積極的に旅に行きましょう。東北が元気を取り戻す日まで、末永く応援していきたいですね。
取材/撮影 中元千恵子(トラベルライター 日本旅のペンクラブ、日本旅行作家協会会員)
※ご紹介した商品は品切れしている場合があります。在庫を各アンテナショップにてお確かめください。
 また、商品の価格は掲載時のものですので、変動があることをご承知おきください。
七戸町・天間林流通加工TG
熟成にんにく 元気くん(200g 1000円)
震災以後のショップのようすについて、広報の伊藤さんは「1週間は流通がストップして商品を入荷できませんでしたが、今はほぼ通常通りの品揃えです。ただ、現地では津波の影響でホタテやわかめなどの養殖が全滅したらしく、海産物はしばらくしたら品薄になるかもしれません。うちはリピーターのお客様が多いので、現地のことを心配して電話や手紙をくださったり、『応援したいからたくさん買うわ』と言ってくださるお客様が多く、本当にありがたいと思っています」と、話してくれた。
 3月5日に東京~新青森間を3時間10分で結ぶ東北新幹線「はやぶさ」が運行を始めたばかりだった青森県。念願だった青森市までの新幹線開通に湧き、地元では新商品の開発も進んでいたそうだ。「新発売のリンゴの地ビール“アップルドラフト”は当店でも人気です。これから毛豆や嶽きみなども入荷しますので、ぜひいらしてください」と伊藤さん。
 そんな青森の元気が出る一品は熟成黒にんにく。白いにんにくを高温高湿で一定期間熟成させたもので、抗酸化作用が強いと注目されている。皮をむいて手軽に食べられ、匂いも控えめ。軟らかく、プルーンのような甘酸っぱい味がする。1日1~2個どうぞ。
熟成にんにく 元気くん
盛岡冷麺
盛岡市・中原商店「ぴょんぴょん舎冷麺工房
盛岡冷麺(2食分 840円)
「震災直後からたくさんのお客様にご来店いただいて本当に感謝しております」と、岩手県東京事務所の大竹さん。通常、平日の来店者数は1100人ほどだが、今もずっと倍以上の来客数が続いている。募金のためだけに来店したり、「応援したいから」と商品を購入する方も多いそうだ。
 「入荷は、魚介類の加工品以外はほぼ通常通りです。加えて、県内で物流が滞っている分、東京で販売してくれないかと入荷が増えたり、各地のデパートで中止になった物産展用の商品を引き受けたりと、商品数は増えているかもしれません。引き続き多くのお客さまにご来店いただければ幸いです」。 沿岸部は被害が大きかった岩手県だが、内陸部は今は通常通りだという。
 「内陸の観光地、平泉や花巻温泉、小岩井牧場などは震災の被害はほとんどありませんでした。沿岸部でも営業している宿もあります。県のHPなどで情報を発信していますので、ぜひ旅行に行って、現地に元気を与えてください」と大竹さん。ただ、被災地に物見遊山で出かける人もいて、車が救援活動の妨げになっているそうなので、そこは節度を持った行動を心がけよう。
 岩手の元気が出る一品は、地元でも大人気の「ぴょんぴょん舎」の盛岡冷麺。キムチ入りなので、麺を茹でるだけで手軽に味わえる。シコシコとした麺がおいしい! キムチもたっぷりで元気が出ます。
仙台市・熊谷屋
仙台駄菓子(13個入り 630円)
震災の被害が最も大きかった宮城県。連日、アンテナショップに多くの人が足を運んでいるという。
「来店者数は通常の5割増し。そして、みなさん、たくさんの商品を購入してくださっています。本当にありがたいことだと思います」と、店長の上野さん。3月の3連休以降は物流が回復し、海産物以外はほぼ通常の品揃えだという。
 「被害が大きかった気仙沼や南三陸町、石巻などはまだまだ大変な状況ですが、仙台市街や松島は少しずつ、通常の機能を回復しつつあります。新幹線も運行再開しましたし、松島では遊覧船の運航も始まりました。少しずつ、通常に戻れるところは戻ろうとした動きが出ています」。
 宮城県の元気の出る一品は、仙台駄菓子。江戸時代から伊達藩の城下町で作られていた素朴な駄菓子の伝統が、今に続いている。うさぎ玉、ネジリ、オコシなどどれもやさしく懐かしい味だ。米や水産資源に恵まれ、豊かな文化を築いてきた仙台の街。仙台駄菓子を食べてその伝統を思い、もう一度元気になっていただきたい、そんな一品だ。
仙台駄菓子
秋田の旬の野菜
横手市・ふれあい直売十文字など
秋田の旬の野菜(ひろっこ250円など)
来客数が増えている、あるいは通常通りに回復したと話す東北のアンテナショップが多い中で、減少したのが秋田県だ。
「あきた美彩館の周りは、品川プリンスをはじめホテルが多いので、東京に観光にいらっしゃる方や、あるいはホテルでの催し物にいらっしゃる方が減ると来店者数も減少してしまいます」と、主任の兼子さんが話してくれた。
 それでも活気を取り戻そうと、4月29日~5月8日のGW期間は、「東北の元気回復プロジェクト ニッポンの笑顔 秋田から!」のフェアを開催。ショップでの秋田県産品のチャリティ販売や福引抽選会、レストランではワンコインで秋田の地酒飲み放題などを実施する。
 そんな秋田の元気が出る一品は、毎日地元から届く新鮮な旬の野菜。「毎日、ガラスケースにいっぱい届きます。秋田の大自然の中で育った野菜はひと味違い、お客様にも大人気です」と兼子さん。
 この日も、春の山菜の王様「たらの芽」や、酢みそ和えにいい「ひろっこ」、アスパラに似た味の「アスパラ菜」のほか、ゴボウ、シイタケ、小松菜などの野菜が並んでいた。こんなに生きのいい野菜を食べたら元気になれそうだ。
南陽市・小林豆腐店
置賜名産 うす皮なす漬(170g 1050円)
スタッフ全員が山形出身のおいしい山形プラザ。震災直後は地元と電話が通じず、家族の安否が分からなくて不安だったという。
「山形は地震自体の被害はほとんどなかったのですが、物流が止まって、2週間は品物もほとんどない状態でした」と、店長の井田さん。当時、東京で不足していた水やヨーグルトを販売したかったが、物はあってもパッケージなどの副資材が足りず、販売できなくて残念だったと話す。
 「地元は今は風評被害に苦しんでいます。野菜が売れなかったり、旅館のキャンセルが相次いだり、二次被災地と言えると思います。今ここでできるのは、山形の野菜は安全ですよ、観光地にも行ってくださいと発信していくこと。山形だけでなく、被災地以外の東北には、ぜひみなさん足を運んでほしい。イメージに踊らされず、安心な食品はぜひ理解して食べていただきたいです」と話す。
 そんな井田店長おすすめの品は、うす皮なすの漬物。店長の出身地である県の内陸南部、置賜地方の名産品。
 文句なしにおいしい。パリッと皮を噛むと中からじゅわっとナスの風味が広がり、ほどよい塩味も食欲をそそる。古漬けにして細長く刻み、生姜とミョウガの千切りを加えてお茶漬けにしてもおいしかった。今はハウスものだがこれから露地物が出るという。これ以上おいしいって……と今から楽しみ。
置賜名産 うす皮なす漬
ちりめん箱入り
南相馬市・黒潮海苔店
ちりめん箱入り(160g 1050円)
「震災直後は物流が止まり、通常1100種ある商品が350種まで減少したんですが、現地の農家や団体が直接運んでくれて、3月16日からは米などのお客様が必要としている商品を販売できました」と、話してくださったのは櫻田店長。
 震災に加え、原発の被害でも苦しむ福島県。何とか応援したいと来客数が増え、3月と4月は通常の260%~300%の売り上げを記録したという。
 「本当にありがたいです。ここで売れることが、地元の生産者やメーカーにとってどれだけ力になっていることか。かかわっている全員が勇気づけられます。残念ながら廃業を決めるメーカーもあるなか、風評被害に苦しむ生産者を応援するためにも、安全なものは安全と発信していきたい」と話す。
 そんな櫻田店長おすすめの商品は、南相馬市産のちりめんじゃこ。南相馬市は原発の屋内退避区域だが、このメーカーでは大金をかけて放射性物質の検査を行い、安全を確認して出荷しているという。天日干しにこだわった最上級品。乾燥具合が高い“上乾”なので、旨みがぎゅっと濃縮されている。