風土47
えっ、知らないの!? うちの県では当たり前… 知られざる人気商品 Part III
季節の変わり目 健康を保つ お弁当の友 Part III がんばろう!東北 知られざる人気商品 Part I 知られざる人気商品 Part II
今月も先月、先々月に引き続いて各県の知られざる人気商品のご紹介です。
いやぁ、どの県にもあるんですね。地域限定のロングセラー商品って。
「どうしてこれが○○県で愛されて続けてきたのだろう?」と考えるのもこの取材の楽しいところです。
今月はカレーにラーメン、パン、油揚げ、わかめ、炭酸飲料と、食材自体はポピュラーなものばかり。でもその県だけの特徴ある商品が並びます。
取材/撮影 中元千恵子(トラベルライター 日本旅のペンクラブ、日本旅行作家協会会員)
※ご紹介した商品は品切れしている場合があります。在庫を各アンテナショップにてお確かめください。
 また、商品の価格は掲載時のものですので、変動があることをご承知おきください。
仙台市・定義とうふ店
三角定義あぶらあげ(5枚入り 550円)
 地元では“定義(じょうげ)の油揚げ”としてとても有名な品だという。手のひらからはみ出るほどの大きな三角形の油揚げで、厚さは1センチはある。
 作っているのは、仙台市西部の定義山の門前町にあるとうふ店。定義山には定義如来・西方寺があり、平日でもたくさんの参拝客でにぎわっている。みやげ物店や旅館が並ぶ参道の一角に定義とうふ店があり、店の前はいつもに揚げたてを買い求める客でにぎやかだという。
 「店頭で揚げたてのアツアツに醤油と七味をかけて食べられるんです。揚げたては本当にうまいですよ。外はカリッとして中がふわふわで」とショップの方。
 家でオーブンであぶって食べてもなかなかおいしかったが、揚げたてとは中のふわふわ感が違うのだろうなあ…。現地でぜひ揚げたてが食べてみたい。
三角定義あぶらあげ
アルバ熟成カレー
千代田区・KGF
アルバ熟成カレー(180g 390円)
 「アルバのカレーは松井秀喜選手もよく食べていたらしいですよ」と、ショップの方に紹介された。「カレーの市民アルバ」は、石川県小松市に本店を置く1970年創業のカレーチェーン店。これはそのカレーをレトルトにしたものだ。販売者は千代田区のKGFになっているが、味は小松発のアルバのもの。
 ヨーロッパで2年間西洋料理の修業をした創業者が、タマネギをたっぷりと使い、野菜と牛肉をじっくり6時間以上煮込んだ深い味わいのルーを完成。開業以来人気となり、チェーン店の一つである金沢鳴和店には星陵高校時代の松井選手も通ったと言われる
 石川県では「金沢カレー」と呼ばれる独自のカレーがあるが、アルバカレーもよく似ていて、黒っぽいルーはドロッと粘度が高い。トンカツと千切りキャベツをのせて、全部混ぜて食べるのが地元流だという。
 その通りにして食べたがおいしかった。ルーは辛みも甘みも強くてコクがあるので、トンカツがあってちょうどいい。ライスだけだとルーの存在感に負けてしまう。キャベツや福神漬け(この日は切らしていたので高知の生姜漬け)もいい味のアクセントになった。
 “アルバ”はスペイン語で夜明けや日の出を表す言葉だという。
長野市・信陽食品
ポンちゃんラーメンみそ味(73g 134円)
 ポンちゃんラーメンは、長野では誰でもが知っているご当地即席ラーメンだという。
 製造元の信陽食品は、昭和39年創業。主にそば粉の製粉を行い、そば製品も製造している。ポンちゃんラーメンは創業時から発売している超ロングセラー商品。開発のきっかけは、当時発売されたインスタントラーメンを見て、社長が「これは売れる!」と思い、長野発の即席ラーメンとして販売を開始したという。鶏ガラと野菜を使ったあっさりスープの醤油味と、コクのあるみそ味があり、合成保存料、合成着色料は一切使用していない。
 みそ味のカップラーメンを購入。実はあまり期待していなかったが(ごめんなさい!)、けっこうおいしかった。みそ味の加減もちょうど良く、ワカメやコーンがたっぷり入って具だくさん。量もほどよくて、飲んだあとの締めにちょうど良かった。
ポンちゃんラーメンみそ味
天然板わかめ
大田市・渡邊水産食品
天然板わかめ(12g 399円)
 「今でこそ一年中販売されていますが、昔は春の風物詩でした。行商の方が板わかめを売りに来ると、ああ、春だなあと感じたものです」と副店長さん。“板わかめ”とは、早春の海から採ったわかめをきれいに洗って、板状に広げて干したもの。通常よく見かけるわかめと違って薄くて繊細なので、みそ汁などに入れず、軽くあぶって揉んでご飯にかけて食べる。海苔のような扱いだ。
 「おそらく島根の海では三陸海岸のような太いわかめは育たないのでしょう。だから昔は特に貴重だったんでしょうね」。
 軽くあぶると鮮やかな緑色になる。それを手でギュッと握ると、セルロイドのようにパリパリと細かく砕ける。炊き立ての五分づき米にかけて食べてみたが、おいしい! わかめの旨みとほんのり効いた塩味、磯の香が口に広がり、米の甘みを引き立てる。一口ごとに広がる繊細な味わいに、日本人に生まれてよかった…と思えた。
高知市・ヤマテパン
ぼうしパン(1個 178円)
南国市・ひまわり乳業
リープル(200ml 73円)
 「高知県出身の方が来店すると『あ、ぼうしパンや!』とみなさん大喜びされます」と、ショップの方が話してくれた。高知県の人なら誰でも知っているのに、なぜか県外不出と言われるこのパン。昭和30年代に高知市の永野旭堂本店が作ったのが始まりと言われ、今ではいろいろなパン屋やメーカーが製造している。丸いパンの上にカステラ生地を帽子のツバのように重ねて焼くものが多いそうだ。
 ほかのメーカーのものはどうかわからないが、このぼうしパンはいたって素朴な味だった。周りのツバの部分はカステラ生地で甘くてサクサク。真ん中の丸い部分は空気を多く含んでやわらかい。
 「パサパサして口の中の水分がなくなるから、リープルとセットで食べてね」と言われたが、確かにちょっとパサパサ。ちなみにリープルも高知で古くから愛される乳酸飲料で、フルーツ牛乳のような甘酸っぱい味がする。
 どちらも“昭和”を思わせる懐かしい味だった。子どものころ、夏休みに川で遊んだあと、扇風機と蚊取り線香のある部屋でおやつに食べているような…。世間には無数のおいしいパンがあふれているが、また食べたいなあと思わせるところが不思議。
ぼうしパン、リープル
ルートビア
浦添市・湧川商会
ルートビア(355ml 120円)
 ルートビアは、アメリカで19世紀に生まれた清涼飲料水。新薬を作ろうとハーブを混ぜたのが始まりとされ、実に体にいいものが入っている。整腸や不眠の解消に効果があるといわれるタチアオイ、消化を助けるというリコリス(甘草)の根、バニラ、ユリ科のサルサパリラなど。しかもカフェインレスで保存料無添加、ノンアルコールだ。
 アメリカでは一般的だが、日本ではほとんど見かけない。でも、沖縄では誰もが知っているという。
 「沖縄で展開しているアメリカのハンバーガーチェーン店“A&Wレストラン”(地元では“エンダー”と呼ばれる)の定番なんです。薬草のような味がするので県民の間でも好き嫌いが分かれます」と店長さん。
 確かに独特の味。甘くて苦くて、小さいころ飲んだ子ども用の液体風邪薬のような、あるいは養○酒のような……。私はちょっと苦手でしたが、みなさんはいかがでしょうか?