風土47
冬はやっぱりこれ!さむ~い冬に あったか~い鍋PartⅢ
冬に欠かせないのが鍋料理ですね。
この季節、アンテナショップにも鍋に関する食材がずらっと並びます。
中には、広島県のブランドショップ「TAU」のようにイートインできる店舗も。鍋料理は大勢で食べるイメージがありますが、"一人鍋"も最近増えているそうです。山梨県のほうとうは鍋一つでできて、一人鍋を楽しみたい方にもぴったり。
鍋に関するいろいろな商品をご紹介します。
取材/撮影 中元千恵子(トラベルライター 日本旅のペンクラブ、日本旅行作家協会会員)
各ショップお勧め「冬の一品」
※ご紹介した商品は品切れしている場合があります。在庫を各アンテナショップにてお確かめください。
 また、商品の価格は掲載時のものですので、変動があることをご承知おきください。
<札幌市・(株)佃善>
じゃが豚(28g×12個 1050円)
 北海道出身のスタッフが「これは間違いないです」と勧めてくれたのがじゃが豚(ぶた)。多くのメディアに取り上げられ、道内はもちろん、全国的にも人気の商品だという。
 北海道産のジャガイモを使用したモチモチした食感の皮で、北海道産の豚肉のミンチやキャベツ、ニラ、玉ねぎなどの野菜を包んである。オリジナルのスープが付いているので、これで温めたり、あるいは蒸したり、鍋にしてもいいそうだ。
 今回は付属のスープを使って鍋風にしてみた。白菜などの野菜と一緒に煮込むこと10分。ひと口ほおばると、まずその皮の食感に驚く。羽二重餅のように軟らかいのにもちもちと歯ごたえがあり、つるんぷるんという歯切れのいい弾力もある。おいしい。この皮でお菓子を作っても売れそう。具は餃子風で、豚肉の甘さがジュワっとあふれだす。スープはビーフエキスなどを使った中華風味。これに豚肉のエキスが溶け出すのでコクが増し、野菜もぐんとおいしくなる。納得の一品。
じゃが豚
川俣シャモ鍋セット
<川俣町・(株)川俣町農業振興公社>
川俣シャモ鍋セット
(シャモ肉300gなど 2980円)
 川俣(かわまた)町のブランド地鶏「川俣シャモ」を使った鍋セット。スープ1㎏、シャモ肉のスライス300g、肉団子12個、うどん2袋が付いている。
 川俣シャモは多くの料理人がその味を絶賛。親子丼では日本一有名な東京日本橋の名店で使われていることでも知られている。
 大自然の中でのびのびと育った川俣シャモは、脂肪分が少なく、弾力のある肉質。噛めば噛むほどうま味がにじみ出て、それでいて後味はさっぱり。ついもうひと口、と箸が進む味わいだ。
 この鍋セットは簡単。スープに野菜とシャモ肉、肉団子を入れて煮るだけ。野菜にも、締めのうどんにもうま味がしみ込む。
 絹織物の産地だった川俣町では、織物屋の旦那衆らの娯楽として闘鶏が盛んだった。そこから昭和58年に町興しの一環として川俣シャモが誕生したという。町興しの成功例の一つでもあるんですね。
<北杜市・(有)横内製麺>
地粉のほうとう
(麺300g、みそ100g、すりごま5g 610円)
ほうとう野菜具材(2人前160g 250円)
 山梨県の鍋料理といえばほうとう。幅広のうどんを、カボチャや里芋、ゴボウ、すりゴマなどの栄養価の高い具材とみそ仕立ての汁で煮込んだ郷土料理だ。栄養価に優れた野戦料理として、戦国武将の武田信玄が好んで食べたと伝えられている。
 ほうとうの決め手となるのが麺だ。横内製麺の麺は、地元でも人気が高いという。地場の小麦を使ったこの半生麺は、茹でるともちもちとした食感。同じく横内製麺の具材も販売しているので、この2つがあればお鍋一つですぐにほうとうが食べられる。一人でもお鍋が食べたい、というときにも便利。
地粉のほうとう・ほうとう野菜具材
干しあゆ
<彦根市・木村水産(株)>
干しあゆ(80g 1050円)
 アユは塩焼きや甘露煮はもちろん、出汁にしてもおいしい。うどんやそば、鍋料理にも使いたい。上品で軽やかな味になる。
 締まった身や皮の色めがいかにもおいしそうなこの干しあゆは、木村水産の商品。材料のアユは、養殖用の種苗に琵琶湖産鮎を使用し、鈴鹿山系の伏流水から汲み上げたミネラル豊富な良水を使って育てている。通常の養殖は育成機関が4~5ヶ月だが、木村水産では5~6ヶ月かけるという。養殖池の中に河川上流と同じ速さの流れを作ることで、無駄な脂が落ちて身が締まり、上品で淡泊な味わいを持つ鮎に仕上がる。アユ独特の芳香が損なわれないよう、餌にも気を遣っている。
 アユ好きには、そのままあぶって七味とマヨネーズをつけて食べるのもおすすめ。雑炊や釜めしなど応用範囲も幅広い。
<別府市・(株)脇屋商会>
牡蠣土手鍋(1杯 450円)
 広島ブランドショップ「TAU」のイートインコーナーでは、2月末までの予定で牡蠣土手鍋を販売している。1日限定50食。金、土、日曜には蒸しガキもあるそうだ。
 予想以上の味だった。カキは身がぷりっとして、中が軟らかい。みそ味の汁も濃すぎず、具材の味を引き立てている。汁の染みた白菜もおいしいが、個人的には苦みのある春菊がほどよい味のアクセントになっていてお気に入り。豆腐なども入ってボリュームもあるので、銀座散策の途中に小腹を満たして温まるのにはおすすめ。店内で販売している2種類の土手鍋の素をブレンドして作っているそうだ。カキも地元広島県の㈱クニヒロのものを使用。この会社、カキのむき身では全国一の出荷量を誇るという。
 2月中旬までは、店内でカキも販売している。産地直送のカキはやはりおいしい。身が大きくふっくらして、ジューシでフレッシュ感が断然勝る。売り切れていなければぜひお試しを。
牡蠣土手鍋
地鶏つくね
<西都市・(有)オー・エヌフーズ>
地鶏つくね(350g 945円)
 これはおいしかった。宮崎県中央部に位置する西都市(さいとし)妻(つま)で自然飼育された妻地鶏を使用している。
 今回は寄せ鍋に使用。昆布で出汁をとって塩としょう油で薄く味をつけた中に、たっぷりの野菜とこのつくねを入れた。それだけなのに驚くほど深い味わいに。白菜の甘いこと甘いこと。鶏から出るうま味とすっきりした脂でびっくりするくらい野菜がおいしくなる。もちろんつくね自体も美味。肉がしっかりとして、軟骨入りなのか、こりこりとした歯応えもある。かすかにハーブの風味が。
 妻地鶏は(有)オー・エヌフーズの登録商標だそうだ。飼育密度を制限して、鶏がストレスをためないよう、運動がしやすいように育てるという。肉に締まりが出て、うま味が増すのだとか。揚げてもおいしかったので、買っておけばお弁当などにも活躍しそう。
<おまけ1>
バームクーヘン
 先日、群馬県のみなかみ町に取材に行き、地元の方のおいしいものをたくさん教えていただきました。その中で印象に残ったいくつかをご紹介します。
 まずはバームクーヘン。これ、おいしかったです。まず見た目がきれい。赤ちゃんの肌のようにふんわりとして、淡い黄金色。食べるとしっとり感がすごかったです。しっとりとした生地って脂っぽいことも多いですが、あっさりとして口どけも軽い。季節によって変わる卵の変化と火加減を調整して生地を焼き、特別な方法で熟成させるそうです。
 取材で各地に行って感じるのは、その土地の食材や特性を生かして、どんどんおいしいものが誕生しているということ。伝統の郷土料理もいいですが、その町の新名物も旅に行ったらぜひ味わってみたいですね。
バームクーヘン
生ハム「はもんみなかみ」
<おまけ2>
生ハム「はもんみなかみ」
 「はもんみなかみ」は、地元の精肉店が作るこだわりの生ハムです。岩中ポーク、群馬麦豚、上州もち豚、オーガニックポーク未来の4種の銘柄豚を使用し、地元の水と風、天然海水塩だけを使って無添加で作り上げるそうです。熟成期間が1~3年という長期間なのにも驚きます。
 これもおいしかったですよ。郊外にレンガ造り風のおしゃれなお店があって、ワインと生ハムなどの食事もいただけます。
 この店は、以前は水上駅近くで育風堂精肉店として営業していたそうです。そのころから一般流通しない貴重な群馬県産増田牛を扱うなど、品質のよさで有名だったそうです。
<おまけ3>
まいたけクッキー
 水上温泉街に、ママさんたちが手掛けるパン屋さんがありました。主婦たちが、無理なく働ける環境を作りながら運営しているそうです。「自分の子どもたちが安心して食べられるパンを」と作られた商品はやさしい味。みなかみ町のブランドまいたけ"すくよか"を使ったクッキーもありました。
 このすくよかがおいしかったです! 通常のまいたけの3倍の約90日かけて作られるそうで、とにかく味が濃い。前日のお昼にすくよかの天ぷらがのったそばを食べたんですが、深い味わいとシャキシャキした食感に驚きました。みなかみ町に行かれたらぜひ味わってみてください。
まいたけクッキー
            
中元千恵子
中元千恵子 旅とインタビューを主とするフリーライター。埼玉県秩父市生まれ。上智大卒。伝統工芸や伝統の食、町並みなど、風土が生んだ文化の取材を得意とする。また、著名人のインタビューも多数。 『ニッポンの手仕事』『たてもの風土記』『伝える心息づく町』(共同通信社で連載)、 『バリアフリーの宿』(旅行読売・現在連載中)。伝統食の現地取材も多い。(朝日新聞デジタル連載記事