風土47
新生活を応援!毎年恒例のお弁当の友PartⅤ
このサイトが立ち上がって5年目。 毎年、4月に特集しているのが“お弁当の友”です。
4月は新生活をスタートさせる方も多いでしょう。
まだまだ花冷えの日も多く、しかも新しい環境で緊張して思いのほか体力を消耗しがちです。手作りのお弁当で心身とも健やかに過ごしていただきたい……そんなスタッフ全員の想いを込めて、今年もおすすめのおかずをご紹介します。
取材/撮影 中元千恵子(トラベルライター 日本旅のペンクラブ、日本旅行作家協会会員)
各ショップお勧め「お弁当の友」
※ご紹介した商品は品切れしている場合があります。在庫を各アンテナショップにてお確かめください。
 また、商品の価格は掲載時のものですので、変動があることをご承知おきください。
<釜石市・水野水産㈱>
天かま ごぼう
(4枚 290円)
 宮城のアンテナショップには、笹かまぼこや揚げかまぼこなど、お弁当のおかずにも便利な食材がずらりと並んでいる。その中で今回選んだのは水野水産のごぼ天。
 おいしかった。ぷりっと弾力のあるかまぼこは魚の風味がよくて、ゴボウの香りが効いている。油っぽさがなく、後味もいい。冷めてもおいしいので、お弁当のおかずにもぴったり。
 かまぼこの原料となる魚のすり身にも、牛肉と同じようにランクがあるのだという。水野水産の揚げかまぼこに使用しているすり身は、最高ランクのFA、SAクラス。世界中で最もキレイな海といわれるアラスカの海の船上で、捕れたてのスケトウダラを加工し、急速凍結させて鮮度を保つのだという。こだわりの品だ。
天かま ごぼう
白エビのおすいもの
<富山市・シラホフーズ㈱>
白エビのおすいもの
(1食分 168円)
 “富山湾の宝石”といわれる白エビを使ったお吸い物。お弁当の横にアツアツのこのお吸い物があったら、ちょっと贅沢な気分になれそうだ。
 フリーズドライされた中身を取り出して、お椀に入れてお湯を注ぐだけ。香ばしいエビの香りがふわりと漂う。ひと口吸うと、白エビの味が濃いのに驚く。釜揚げされた白エビが姿のまま浮いているのもうれしい。
 白エビは、漁が成り立つほど生息するのは世界でも富山湾だけだといわれる。富山湾は日本三大深湾の一つといわれるように、沿岸から急に水深1000mに落ち込む地形。しかも海底斜面には深い谷が多く刻まれている。この海底谷に白エビは生息するそうだ。富山湾の神秘をお弁当にどうぞ。
<御所市・㈱井上天極堂>
葛もち(2個 420円)
 お弁当のデザートにおすすめなのがこれ。本葛で作ったぷるんとおいしい葛餅は、お昼の時間を優雅な時間にしてくれそうだ。
天極堂(てんぎょくどう)は奈良県で吉野本葛を造り続けている創業140年の老舗。吉野本葛は、葛の根を繊維状に粉砕して水と混ぜて澱粉をもみだし、吉野晒という吉野地方独自の製法で精製する。吉野晒は、1~2月の極寒期に何回も水にさらして桶で清める工程を繰り返す方法。しだいに葛が純白の澱粉となり、沈殿していく。
葛は栄養価が高く、根や花が昔から漢方薬としても使用されている健康食品。今では根を掘る人も、良質の葛根が掘れる山も少なくなって、葛粉は貴重なものとなっている。
きな粉と黒蜜をつけて贅沢に味わおう。
葛もち
あじハンバーグのとまと風味
<境港市・㈱角屋食品>
あじハンバーグのとまと風味
(50g 168円)
 境港で水揚げされた新鮮な真アジを使ったハンバーグ。アジのすり身に県産の白ネギを加え、フワフワな食感にするために里芋や長芋を練り込み、それをトマトピューレで煮込んである。
 ハンバーグと言えばデミグラスソースが一般的だが、トマト味にしたのはなぜ?……と、ひと口食べて分かった。これはペスカトーレ(魚介類とトマトソースのスパゲティ)の味だ。魚介にはトマト味が合う。アジの匂いが気にならない。魚のすり身なので、肉のハンバーグよりも身が詰まってもっちりした食感。もちろんだけど、アジの味がする。
 小ぶりだし、無添加なのに常温で保存ができて便利。お肉が苦手な人や、魚介とトマトの組み合わせが好きな方におすすめだ。
<今治市・㈱グリップ>
バリィさんの白めしもういっぱい
(40g 270円)
 これはおいしかった。瀬戸内海のヒジキを使ったふりかけで、“生タイプ”とあるように、乾燥ではなく生のヒジキの食感にこだわって作ったという。
 瀬戸内海の潮流にもまれて育ったヒジキは太くてしっかりと歯ごたえがあるのが特徴。しっとりとしてほどよい噛み応えがあり、この商品はその特徴を充分に生かしている。シソがほんのりと香り、ゴマがちょうどよい味のアクセント。バランスが絶妙だ。ヒジキ独特の磯の香りなども抑えられていて、とても食べやすい。
食卓に出すとあっという間にひと袋完食してしまうので、お弁当の友として毎日少しずつ楽しむのがいいかもしれない。
バリィさんの白めしもういっぱい
手造りすり身えび
<指宿市・㈲カワノすり身店>
手造りすり身えび
(15枚 683円)
 鹿児島の錦江湾で獲れたエビを使ったすり身。そのまま揚げても野菜を混ぜて揚げても、おいしいさつま揚げになる。
解凍したら、袋の端を切って、そこからすり身を搾り出して揚げるだけ。忙しい朝でも簡単にお弁当のおかずができあがる。
さつま揚げだけでなく、汁に入れれば出汁たっぷりのつみれ汁になり、野菜スープやみそ汁でもおいしい。豆腐ハンバーグやだて巻きの材料としても利用できる。
エビのすり身は、弾力があって、エビの香ばしさが効いて味がはっきりしている。小さめに絞って揚げたら、ひと口サイズで食べやすい。ビールにもご飯にもよく合う。ほかに、上品な味わいの鯛のすり身、お魚好きに好評のアジのすり身も売っている。
◆今月のおまけ~旅先で見つけたおいしいもの~
<岩美町・旬魚たつみ>
1.もさえび御膳1350円
鳥取県
 今月半ば、鳥取県岩美町のモニターツアーに招いていただきました。鳥取市の東隣にあるこの町は、山陰随一の海岸美と称される浦富(うらどめ)海岸を有する町です。そして、“幻のエビ”といわれるモサエビをはじめ、海産物のおいしいことでも知られています。
今回もおいしいものにたくさん出会いました。今月はその数々をご紹介します。
まずは地元で大人気の食事処「たつみ」のもさえび御膳。この店、大人気で開店とほぼ同時に行ったのに1時間待ちの札が出ていました。モサエビは鮮度が落ちやすく流通量が少ないので“幻のエビ”とよばれます。とろりと濃密な食感でありながら、きわめて上品な甘みは他のエビでは味わえないものです。そのエビがお造り、焼き、煮て、揚げてと7匹も味わえます。*今季は終了したそうです
もさえび御膳
はたはた御膳
<岩美町・旬魚たつみ>
2.はたはた御膳1000円
鳥取県
 私のお気に入りはハタハタです。産地として秋田が有名ですが、岩美も漁獲量が多く、美味。白身で淡白で上品ながら、味はしっかりしてます。煮ても揚げてもおいしいのですが、干して焼いたものがご飯に本当によく合います。全7匹ついて1000円でした。
 さて、写真のモデルを務めてくださっているのは、今回モニターツアーでご一緒させていただいたよしもとのガールズユニット“つぼみ”のメンバー、松下千紘さんと中上亜耶さんです。赤いセーターのかたが松下さん、ポニーテールのかたが中上さん。アイドルなので可愛らしいのはもちろんなのですが、お二人とも礼儀正しくて、本当に気立てのいいかたでした。「おいしいですね!」と言いながら、サッとポーズを決めてくださるところはさすがプロ。私も現地の方たちもすっかりファンになってしまいました。
<岩美町・旬魚たつみ>
3.えびフライ御膳850円
鳥取県
 モサエビではないですが、エビフライが2本のったえびフライ御膳。登場したときにあまりの大きさに歓声が上がりました。
えびフライ御膳
岩井屋の夕食の一部
<岩美町・岩井温泉>
4.岩井屋の夕食の一部
鳥取県
 宿泊した岩井温泉「岩井屋」の夕食に登場したお造りです。モサエビがありますね。モサエビは生か焼くのがおいしいです。後ろに見えるのは但馬牛のしゃぶしゃぶです。盛り付けも美しくて、先付けなど目でも楽しめました。
 ただ、旅館の夕食はプランや季節で内容が異なりますから、もし宿泊される時は内容をご確認ください。
 岩井温泉は今は宿3軒の静かな温泉街ですが、湯治場として古くから栄え、かつては鳥取県に泊まる半数がこの温泉に泊まったといわれています。食事や、旅館の対応、しつらえなどに、長い年月、人を迎え入れてきたもてなしの文化を感じたように思いました。
<岩美町・岩井温泉>
5.岩井屋の夕食の一部
鳥取県
 デザートのイチゴの大きさにもびっくりしました。スプーンと比べていただいたら分かりやすいでしょうか。通常のイチゴの3倍くらいあります。町の名産の“あきひめ”という品種だとか。町ではこの品種のイチゴ狩りも楽しめるそうです。おなかいっぱいになりそうですね。
岩井屋の夕食の一部
いわみ八宝の昼食
<岩美町・福乃屋>
6.いわみ八宝の昼食
鳥取県
 2日目の昼食は、“いわみ八宝”といわれる食材の中から、季節の食材を使った料理をいただきました。
 ぶぶあられを衣にいれた天ぷらなどどれもひと工夫されていておいしかったです。
 いわみ八宝は、岩美町を代表する名産品で、赤がれい、松葉がに、岩ガキ、マコモタケ、モサエビ、白イカ、ばばちゃん、新雪(梨)です。ばばちゃんは、アンコウに似た深海魚で、本当の名前はタナカゲンゲというのだとか。味はタラ以上と称されます。
<岩美町・福乃屋>
7.いわみ八宝の昼食
鳥取県
 いわみ八宝の昼食を作ったのは、かつて民宿を営んでいて、今は食事処となった福乃屋の女将さん(左)。 郷土料理研究会に所属して、地元の食材を使った料理の研究に励んでらっしゃるそうです。
 明るくて楽しい方でした。中上さんも熱心に説明を聞いていました。
岩井屋の夕食の一部
いわみ八宝の昼食
<岩美町・ホンダ・コンフェクト>
8.ばばちゃんエクレア
鳥取県
 岩美名産の“ばばちゃん”をかたどったエクレアです。岩美では“ばばちゃん”という食材の名前がよく登場します。
 これを見れば、なんとなくどんな姿か雰囲気が分かりますね。しっぽまで付いて、凝った作りでした。味もおいしかったです。
 つぼみのお二人も“ばばちゃん”には興味津々でした。
<鳥取市・こころび>
9.干しはた焼き
鳥取県
 鳥取駅近くの“こころび”というお店もおいしかったです。これは私お気に入りのハタハタ。写真は1匹ですが、はた干し焼きは大きめ3匹で590円でした。日本酒にも合います!
岩井屋の夕食の一部
いわみ八宝の昼食
<岩美町・こころび>
10.カニみそ
鳥取県
 「カニみそ100%だよ」とご主人おすすめのカニみその甲羅焼き。こんな感じの海の幸がごろごろ出てきます。
ぜひ山陰へ出かけてみてください。
中元千恵子
中元千恵子 旅とインタビューを主とするフリーライター。埼玉県秩父市生まれ。上智大卒。伝統工芸や伝統の食、町並みなど、風土が生んだ文化の取材を得意とする。また、著名人のインタビューも多数。 『ニッポンの手仕事』『たてもの風土記』『伝える心息づく町』(共同通信社で連載)、 『バリアフリーの宿』(旅行読売・現在連載中)。伝統食の現地取材も多い。(朝日新聞デジタル連載記事))