風土47
老舗の逸品
変化の激しい時代ですね。数年前に飛ぶ鳥落とす勢いだった会社が赤字に転落、などという記事も目にします。
そんな折は、時代を越えて愛される商品を作り続ける“老舗”の偉大さに改めて思い至ります。
今月は各地で長~く愛される老舗の逸品を集めました。
歴史の浅い(と思われる)順に並べ、トリはなんと創業300年余り!
飽きられない秘密はどこにあるのか探ってください。

取材/撮影 中元千恵子(トラベルライター 日本旅のペンクラブ、日本旅行作家協会会員)
各ショップお勧め「老舗の逸品」
※ご紹介した商品は品切れしている場合があります。在庫を各アンテナショップにてお確かめください。
 また、商品の価格は掲載時のものですので、変動があることをご承知おきください。
<神津島・丸金(まるきん)商店>
イカの塩辛<辛口>(190g 750円)
 これはおいしかった。さすが東京愛らんどで人気NO.1の商品。
 プリプリと弾力のあるイカの身、まるで獲れたてのようなマイルドで甘みのあるワタの味、そして効いているのがピリッとした島唐辛子の辛みだ。唐辛子効果で後味がすっきりとし、他の多くの塩辛で感じる生臭さも感じられない。これは本当においしい。甘口、中辛、辛口があるがこれは塩味の強さではなく、唐辛子の分量による違いだという。多くの人がまず<中辛>を買うが、ほとんど<辛口>に移行するそうだ。
 使われている赤イカは、神津島では4月初旬から8月末ころまで獲れる。産卵前の5月から6月にかけては特に身が厚く、上品な味わいの中に甘みもあって、その味覚は「イカの王様」といわれるという。
ご飯がすすみますよ!
イカの塩辛<辛口>
白松がモナカ
<仙台市・㈱白松がモナカ本舗>
白松がモナカ(ミニ20個 1,155円)
 この商品はすごい。「白松が本舗」のモナカと羊羹といえば、仙台市はもちろん、宮城県の人なら誰でも知っている商品だという。
 ショップでのスタッフとの会話。
 「本当に県民のほとんどが知ってるんですか?」「はい。すごく有名で手土産や引き出物にもよく使います。手土産に迷ったら、とりあえずこれを持っていけば間違いないという商品です」「つまり東京でいうと虎屋の羊羹みたいな感じ?」「あ、そうですね!」。それはすごい。そこまで信頼されるなんて。
 厳選素材で作る最中は上品な甘み。そして“口の中に張り付かない”と称される皮も、サックリと香ばしく、餡となじみがいい。
 HPには、昭和7年に開店した創業者の方の印象的な言葉が載っていた。「…最も吟味した最高の製品を創り上げる可く…(中略)…此の製品だけはお客様からの委託加工である事を、かたく心に秘めて、其れに僅かな加工賃だけを頂戴し本当の原価販売という商法。これが私の商法であり、偽わらざる白松の商道であります。…」。“お客様からの委託加工”の言葉からお客様第一の精神が伝わってきました。
<山口市・㈲御堀堂>
外郎(ういろう)(小5個入り 525円)
 これもおいしい。御堀堂の外郎は、おいでませ山口館で不動の売れ筋NO.1を誇る商品だ。
 外郎の多くは米粉や小麦粉が使われるが、山口の外郎にはわらび粉が使われる。なので、ぷるんとしたなめらかで独特の弾力のある食感が楽しめる。わらび粉と小豆あんを練り上げて、せいろで蒸し上げて製造。味は三種類あり、上品な甘さの白外郎、黒砂糖のコクが加わった黒外郎、香り高い抹茶外郎。
 御堀堂は昭和2年創業だが、店のパンフレットによれば山口外郎の歴史は古く、大内氏が治めていたころからと書かれている。大内家第24代の弘世(ひろよ)は長門・周防国の守護に任じられ、1360年ころに政庁を山口に移して京に模した町造りを始めた。その後、山口は栄え、文化・文明が育ったので、おいしいお菓子も誕生したのだろう。風土が生んだ逸品です。
外郎(ういろう)
ふやき御汁「宝の麩」
<金沢市・㈱加賀麩不室屋(ふむろや)>
ふやき御汁「宝の麩」(3個入り 578円)
 私事で恐縮ですが、若かりし頃、「能登・金沢」のガイドブックを3年ほど作り続けたことがあった。取材で、特に金沢市内をくまなく廻ったが、その時一番驚いたのが不室屋。「麩って、こんなにきれいでおいしいものだったのか」と感動したことが忘れられない。
 慶応元年(1865)創業の不室屋は加賀麩の老舗。麩は小麦粉のタンパク質を利用して作る。小麦粉に水を加えてこねると粘弾性のあるグルテンが形成され、これを焼き麩や生麩にする。不室屋の麩はなめらかでもっちりと弾力があり、出汁をよく吸っておいしい。
 「宝の麩」は箱状の麩の中に具が入っていて、穴をあけてお湯を注ぐと、お椀の中に具が花のように広がる。具もたっぷり。もちろん麩もおいしい。現地(金沢)には不室屋直営の麩のレストランもある。また行きたい…。
<高知市・㈲西川屋老舗>
ケンピ(13個×3袋 315円~)
 まるごと高知のショップで大人気なのが、「けんぴ」と「塩けんぴ」。サツマイモの細切りを油で揚げて砂糖を絡めたお菓子だ。
 「でも、実は元祖のケンピはこれなんです」と、店長さんが紹介してくれたのが西川屋の商品。西川屋の創業は元禄年間(1688~1704)の初め。素麺の製法からヒントを得て製造したというこのケンピは、小麦粉を練って薄く延ばし、細切りにして窯で焼いた干菓子。非常に硬いことから堅干(ケンピ)と名付けられた。土佐藩主にも愛され、西川屋は代々御用菓子司を務めたという。
 原材料は小麦粉と砂糖と水飴、卵だけ。本当に素朴な、硬めのクッキーという感じ。ただ、硬いけれど、噛み砕くとそのあとはなめらか。甘みはしっかりしているが後味がやさしい。テーブルの上にあると不思議と手が伸びる。これだけおいしいお菓子が世にあふれている時代に、このケンピが生き残って、しかも愛され続けていることは感無量です。
ケンピ
ぶどう被蓋宝石箱
<京都市・象彦(ぞうひこ)>
ぶどう被蓋宝石箱(1個 7万1400円)
 最後を飾るのは京漆器の老舗「象彦」の宝石箱。何も言うことはありません。京都の伝統工芸はすばらしいですね。1000年の歴史の中で、朝廷や貴族、神社や寺院、さらに茶道や華道の家元の高い要求に応えてきた京の匠たち。生み出される作品は逸品ぞろいです。
 象彦は寛文元年(1661)の創業。以来、京漆器の伝統を受け継いできた。漆器は木地作り、下地工程、塗り、加飾(蒔絵など)の工程があり、それぞれに細かい作業を繰り返す。気の遠くなるような時間をかけて作られる。
 象彦のHPに老舗についての記載があった。
 「…時代を越えて栄え続ける老舗には皆、独自の商品や商法、個性があります。象彦もまた、京漆芸の老舗として一つの信念を貫いております。それは価値ある確かな品だけをお届けすること。…」。品質第一。当たり前なことでありながら、それを守り続けるのがいかに難しいか、ということなのでしょう。
中元千恵子
中元千恵子 旅とインタビューを主とするフリーライター。埼玉県秩父市生まれ。上智大卒。伝統工芸や伝統の食、町並みなど、風土が生んだ文化の取材を得意とする。また、著名人のインタビューも多数。 『ニッポンの手仕事』『たてもの風土記』『伝える心息づく町』(共同通信社で連載)、 『バリアフリーの宿』(旅行読売・現在連載中)。伝統食の現地取材も多い(http://tabipen.net/report/nakamoto01.html