風土47
内緒にしておきたかった?店長、スタッフの「私のお気に入り」 Part Ⅳ
今月も店長やスタッフの方に、個人的なお気に入りをうかがいました。
お店の事情も世間の評判も関係なく、「私はこれが好き!」という商品を挙げてもらうと、かなり意外なものが多くてびっくりです。
すすめられなければ手に取らなかったかも…という商品も多いのですが、食べてみると味は抜群。さすがにスタッフの方はよくご存じです。
今月もおいしいものが揃いましたのでご覧ください。
取材/撮影 中元千恵子(トラベルライター 日本旅行記者クラブ、日本旅のペンクラブ会員)
※ご紹介した商品は品切れしている場合があります。在庫を各アンテナショップにてお確かめください。
*記載の商品価格は、4月の消費税増税後の税込み価格になっております。
〈潟上市・㈲秋田味商〉
冷やし鶏中華そば(麺130g、スープ48g 360円)
 これはおいしかった。夏の数カ月間だけ入荷する季節商品だそうで、紹介してくれた女性スタッフも「入荷すると待っていましたとばかりに買って帰ります」とのこと。「本当においしいんです。特にスープが絶品です」と説明にも熱がこもっていた。
 麺を茹で、冷水と混ぜたスープに入れるだけの手軽さだが、味は本格的。やはりスープがおいしい! 比内地鶏ガラスープにユズの果汁を加えてすっきりと仕上げてある。爽やかなユズの香りと上品な鶏の出汁、よく効かせた塩味が絶妙。澄んだスープは見た目も涼やかだ。麺は冷やし専用に作ったという極太の縮れ麺。モチモチとしてコシが強い。具は、普通のラーメンのようにチャーシューやネギ、茹で卵でもいいし、トマトやレタスを添えて黒コショウを振るのもおすすめだという。
冷やし鶏中華そば
味タママツ
〈大河原町・玉松味噌醤油㈱〉
味タママツ(500mℓ 540円)
 男性店長をはじめ、女性スタッフ2人お気に入りに挙げてくれたのがこの商品。地元では有名な味噌と醤油の老舗醸造元が作る万能調味料。店名をそのまま商品名にしているくらいだから自信のほどがうかがえる。
「5倍に薄めて素麺やうどんなどのつゆに使うのはもちろん、煮物に入れたり、冷奴にかけたり。醤油と同じように使えます。昆布やカツオ、シイタケ、ホタテのうま味が濃縮されているので、味わい深くて、しかも甘みもあっておいしいですよ」。女性スタッフが熱心に解説してくれた。さらにおすすめの使い方として教えてもらったのが、漬け物。薄く刻んだキュウリとこの万能調味料を適量、ビニール袋に入れ、少しもんで30分冷蔵庫で寝かせれば、おいしい浅漬けのようになる。大きめに切って一晩おいてもいいそうだ。実際やってみたら本当に簡単にできた。ショウガを少量混ぜたり、ちょっと置き過ぎた時はミョウガを刻んで和えてもおいしい。キュウリやミョウガが豊富で、素麺もおいしい季節。1本あると便利です。
〈鳥取市・㈲深澤製菓〉
黒豆ポン(150g 486円)
 山海の幸が豊富な鳥取県で、女性スタッフがお気に入りに挙げてくれたのが意外にもこの黒豆ポン。「よく買います。お酒のおつまみやおやつとしてそのまま食べてもいいし、お米と炊くと簡単に黒豆ご飯ができで便利ですよ。2倍楽しめます」とのこと。
 材料は黒豆のみで無添加。独自製法でサクサク感を出しているという。それほど固くなく、黒豆の味もしっかりしておいしい。確かについつい手が伸びる。そして、米2合に30粒ほど入れて炊いたら、本当に手軽に豆ご飯ができた。こちらは打って変わって豆の食感がしっとりとする。さらにいっそう黒豆の風味が増して、おいしい豆ご飯になった。
 正直、すすめられたときは、店内にはもっと派手な商品もたくさんあるのに、と思ったけど、こういう正統派で飽きのこないものが長く愛されるのでしょう。人間と同じかもしれないですね。
黒豆ポン
生の椿油 ネイルケア
〈大島町・㈱椿〉
生の椿油 ネイルケア(2.5mℓ 1050円)
 おそらく20代と思われる可愛らしく清楚な女性副店長さんがお気に入りに挙げてくれた商品。大島名産の椿油で作ったペンタイプのネイルオイルだ。
 キャップを取るとほのかなローズの香り。ハケでさっと塗るだけで、爪に適量の椿油がのり、ツヤツヤに。このツヤは間もなく消えてしまうが、爪や甘皮に潤いを与え、乾燥を防ぎ、ささくれや爪割れなどから指先を保護してくれる。“生の椿油”とは非加熱精製油のこと。原料はこの椿油とブルガリア産無農薬ローズ精油のみ。添加物は不使用だ。
 「簡単にネイルケアができるので愛用しています。仕事がら(東京愛らんどは飲食店も併設)マニュキュアなどは出来ないのですが、甘皮や爪のケアはしたいので」とのこと。
 女性にとって、マニュキュアはおそらくメイク類の中で一番贅沢な時間。心と時間に余裕がないとできない。でも手は比較的目につくところなのお手入れもしたい。そういう時に便利な商品だ。ネイルにほぼ興味なしという私でも、これは欲しいなと思いました。
〈高知市・高知県特産品販売㈱〉
ゆずバタークリーム(100g 430円)
 高知県産のユズを使い、牛乳とバターを合わせたなめらかなクリーム。お気に入りに挙げてくれたのは、快活ながっしりとした男性店長さん。ちょっと意外でした。
「高知名産のユズを使った商品は数多くあるけど、これはめずらしいでしょう? 開発の過程も知っているので、愛着もあります」とのこと。
 バターをイメージしていたけれど、とろりとした液体。鮮やかな黄色が美しく、ユズの芳香が爽やかだ。「パンもいいけど、塩味のないクラッカーによく合うと思います」という店長さんの言葉通り。甘さも塩味もしっかりついていて、このバタークリームだけで味のバランスが取れているので、クリームそのものを味わえるクラッカーがおすすめ。写真はたっぷりかけてあるが、ほんの少量で十分。商品のHPを見ると、焼いた鮭や鶏肉などの料理にかけてもいいという。いいアクセントになりそう。今までにない味です。
ゆずバタークリーム
ソマカツオの塩切り
〈南伊勢町・とよや勘兵衛〉
ソマカツオの塩切り(14枚 680円)
 “ソマカツオの塩切り”は、明治のころから南伊勢町に伝わる伝統の味だという。10月後半から12月ころの脂ののったソマカツオ(ヒラソウダガツオ)を半分に開き、内臓ごと樽で塩漬けしたもの。通常は2カ月間漬け込むが、とよや勘兵衛では、漬け込む時間を長くしてさらにじっくり熟成している。味はいっそう濃厚でまろやかになるという。
「おいしいですよ。日本酒にとっても合います。塩が効いているので、小さくちぎっておつまみにしています」と話してくれたのは、お酒大好きという三重県出身の女性スタッフ。熱心な口調からこの商品を愛する気持ちが伝わってくる。締めには、白いご飯にこれをちぎってのせ、お茶漬けにするそうだ。
 晩酌のおつまみにしてみたら、おいしい。カツオの脂とわたのコク、塩は効いてるけど、全体が一つにまとまって、確かにまろやかな印象だ。日本酒がすすみますよ。
中元千恵子
中元千恵子 旅とインタビューを主とするフリーライター。埼玉県秩父市生まれ。上智大卒。伝統工芸や伝統の食、町並みなど、風土が生んだ文化の取材を得意とする。また、著名人のインタビューも多数。 『ニッポンの手仕事』『たてもの風土記』『伝える心息づく町』(共同通信社で連載)、『バリアフリーの宿』(旅行読売・現在連載中)。伝統食の現地取材も多い。(朝日新聞デジタル連載記事