風土47
開運招福 Part Ⅱ
“新年”があるのはありがたいですね。
気持ちが一新して、新たな希望と活力が湧いてきます。
食べ物やグッズでもその気持ちを盛り上げましょう。
今月は開運招福に因んだ品々のご紹介です。
皆さんにとって、今年もよい一年でありますように。
取材/撮影 中元千恵子(トラベルライター 日本旅行記者クラブ、日本旅のペンクラブ会員)
※ご紹介した商品は品切れしている場合があります。在庫を各アンテナショップにてお確かめください。
*記載の商品価格は、4月の消費税増税後の税込み価格になっております。
〈伊勢市・伊勢醤油本舗㈱〉
伊勢醤油 祝・紅白(100mℓ 各540円)
 昔から、伊勢参りのために全国から訪れる参拝客をもてなしてきた伊勢醤油は、たまり醤油の深いコクと濃口醤油の華やかな香りを併せ持つ醤油の逸品として知られる。海の幸に恵まれた伊勢の料理に欠かせない品として、刺し身や寿司の付け醤油として、また煮つけなどにも使われてきた。毎年、伊勢神宮にも奉納されているという。
 これは、その伊勢醤油の限定品。パッケージに特徴があり、上部のデザインを変えることで、一つでも、紅白セットでも、まるでお社のような縁起のよい形になる。中は醤油差しなので、そのまま使えて便利だ。
 封を開けてまず驚くのが香りの良さ。焦がし醤油のような香ばしさが鼻をくすぐる。味は、大豆の旨味成分が多いたまり醤油のよう。コクと上品な甘みがあるが、後味はまろやかで濃口醤油の良さも併せ持つ。白身魚や伊勢エビなどの刺し身にとっても合いそう。あるいは餅や焼きおにぎりに付けて、醤油を主役として味わいたい。
伊勢醤油 祝・紅白
とらふく
〈下関市・㈱河久〉
とらふくちりセット 19㎝
(ふく切身150g 1296円)
〈下関市・㈱日高食品〉
とらふく刺身 19㎝
(刺身20g 皮湯引き10g 1296円)
国産とらふく焼きひれ(5g 540円)
 冬の味覚の代表格に挙げられるフグ。フグの本場といえば、フグの水揚げ量が日本一といわれる南風泊(はえどまり)漁港を持つ山口県下関市だ。下関の人たちは、“福”に通じるとして、濁らずに“ふく”と呼ぶ。
 食用のフグ22種類のなかで、最もおいしいとされるのがトラフグであり、1㎏数万円の高値で取り引きされる。けれど最近は養殖技術が進歩し、比較的リーズナブルに食べられるようになった。なんと、おいでませ山口館では“とらふく”のてっさもてっちりセットも1296円! 毎年、人気の商品だそうだが、それも納得。この価格でもおいしくいただけます。ついでにひれ酒用のふくひれも買ってふく三昧を楽しもう。
 フグは6000年前から食べられているそうだが、昔の人は毒にあたらなかったのだろうか。豊臣秀吉が禁止令などを出していたが、明治21年、伊藤博文の許可が下りて山口でいち早くフグが食べられるようになった。本場の味でぜひ招福開運を願おう。
〈三郷町・㈱大直〉
めでたや炭々(1個 1620円)
 名前も姿もおめでたさいっぱいの室内用消臭炭だ。炭を粉末にして富士山の形に成形してある。
 説明書きによれば、炭は非常に細かいパイプの集まりで、穴の内部表面がなめらかではないため、空気中の微粒子が吸着しやすく、一度付いたら離れにくい。この商品は温度別に焼き分けた炭を配合しているので、生活臭から有害化学物質まで幅広く吸着、分解することができるという。匂いを吸着し、湿気を取るだけでなく、シックハウス症候群の原因ではないかといわれるホルムアルデヒドの吸着除去効果も実験結果として得られているそうだ。
 効果は半永久的というから驚く。同じ消臭炭を置くなら、富士山の姿をしていた方が断然ご利益がありそうだ。
めでたや炭々
すんき
〈木曽町・おんたけ有機合同会社〉
すんき(200g 432円)
 すんき漬は、長野県木曽地方で300年以上も昔から食べられてきた保存食だ。12月にテレビ番組で紹介され、今、健康食品と注目を集めている。木曽町商工会のHPで見ると、各販売店で売り切れ続出らしい。銀座NAGANOでも、その日は私が買ったのが最後の1袋だった。
 地元ですんき菜とよばれる赤カブの葉と茎を、複数の植物性乳酸菌で発酵させて作る。日本で唯一、塩を使わない漬物だそうだ。海が遠い木曽では昔は塩が貴重品だったため、この方法が生み出されたとされる。
 番組では、すんきには20種類以上の乳酸菌が含まれ、この乳酸菌が腸内環境を整え、免疫力を高め、アレルギー症状の緩和や感染症の予防に効果が見込めると紹介された。
 味は古漬けのような酸味があるが、塩味がないので量を多く食べられる。一般的には蕎麦に入れるそうだが、確かにカツオだしとよく合い、酸っぱいながらもパクパクと食べられる。冬、雪に覆われる木曽地方では、このすんきは大切な食物繊維であり、栄養源だったことだろう。先人の知恵に脱帽です。健康長寿を願って新年に味わってみては?
〈上島町・浦安水産〉
蒸し焼きレモン鯛(600~700g 1836円)
 すごい。鯛まるまる一匹。見ているだけでもおめでたく、招福開運につながりそうだ。
 作っているのは、瀬戸内海に浮かぶ岩城島で鯛の養殖を営んでいる浦安水産。生の鯛はもちろん、料理に使いやすいフィーレ(三枚おろしにした片身)や、蒸し焼き、鯛めしなどの加工品も全国配送している。
 この商品は、真鯛の内臓を取り、岩城島で無農薬で栽培されたレモンをまるまる1個、スライスして入れ込んで蒸してある。レモンの爽やかな風味とほどよい塩味が、ふっくらとした鯛の身に移っている。解凍して温めればすぐに食べられるという点もとても便利。お正月の食卓にぜひ乗せたい一品だ。
 鯛は瀬戸内海産の味が格別といわれる。レモンも瀬戸内海の名産品で、愛媛県は広島県に次ぎ、生産量第2位。愛媛の美味しいものがコラボした商品だ。
蒸し焼きレモン鯛
黒豆 豊粒
〈大潟村・大潟村農業協同組合〉
黒豆 豊粒(160g 540円)
 この黒豆はおいしかった。豆が大きくてふっくらホクホク。甘さも控えめで、ついつい食べ過ぎてしまったほど。
 産地の大潟村は、秋田県の中西部に位置する。村の全域は、かつて日本で2番目の面積を誇る湖沼であった八郎潟を干拓したもの。豊饒な土地で質の良い農作物ができるという。
 この“豊粒”は源泉した黒大豆を丁寧に時間をかけて煮込んである。見た目もツヤツヤふっくらできれい。ぜひおせちに入れたい一品だ。
 黒豆は、“まめ”が、勤勉や健康を表し、「まめに働く」などに通じること、それに黒は魔よけの意味があるとされたそうで、おせちに欠かせない品となったようだ。新年から豊饒な土地の恵みを食べ、今年もまめに暮らしましょう。
◆今月のおまけ
伊勢市・伊勢醤油本舗㈱
〈今月のおまけ - 1〉
伊勢醤油 祝・紅白(100mℓ 各540円)
 特集の最初でご紹介した伊勢醤油ですが、皿に出すとこんな感じです。色も特に濃いわけではなく、とろみも無いのですが、見えないとろみを感じるほど旨味があります。白身魚によく合いました。
 料理が上手くなりたければよい醤油を使え、とよくいわれますが、料理に使ってしまうのはもったいないほどおいしかったです。
中元千恵子
中元千恵子 旅とインタビューを主とするフリーライター。埼玉県秩父市生まれ。上智大卒。伝統工芸や伝統の食、町並みなど、風土が生んだ文化の取材を得意とする。また、著名人のインタビューも多数。 『ニッポンの手仕事』『たてもの風土記』『伝える心息づく町』(共同通信社で連載)、『バリアフリーの宿』(旅行読売・現在連載中)。伝統食の現地取材も多い。(朝日新聞デジタル連載記事