風土47
地元老舗の愛される味-ご飯の友編-
今月は、地元で親しまれている老舗の商品の中から、ご飯に合いそうなものを選びました。
移り変わりの激しい現代に合って、何年にもわたって愛され続けるってすばらしいことですよね。
味の良さももちろんですが、毎日の仕事に決して手を抜かない作り手の方たちの誠実さがあってこそなのでしょう。
どんな方たちが作っているのか、思わず想像しながらいただきました。
取材/撮影 中元千恵子(トラベルライター 日本旅行記者クラブ、日本旅のペンクラブ会員)
※ご紹介した商品は品切れしている場合があります。在庫を各アンテナショップにてお確かめください。
*記載の商品価格は、4月の消費税増税後の税込み価格になっております。
〈釜石市・永野商店〉
銀だらみそ粕漬け(2切れ 972円)
 どうですか? おいしそうでしょう? おいしかったです、これ。
岩手県釜石市で4代続く永野商店が作る銀だらのみそ粕漬け。脂ののった大ぶりのアラスカ産銀ダラの切り身を、釜石の地酒「浜千鳥」の酒粕と、魚の旨味を活かす特製味噌だれに漬けている。
切り身は、一切れずつ小分けしてあるので便利だ。味噌を軽くぬぐって、ゆっくりと焼いてゆく。大ぶりのふっくらした身が何ともおいしそうで、焼き始めると味噌の焼ける香ばしい匂いがまた食欲をそそる。味は酒粕と味噌、タラの脂が調和して、あっさりとした中にもコクがある。酒の味も味噌の味も強すぎないのがいい。まろやかでおいしい。
永野商店は干物も生産している。不要な添加物を使わず、魚本来の味を引き出すことを心がけているという。干物もぜひ食べてみたいと思いました。
銀だらみそ粕漬け
福尽漬
〈須賀川市・阿部農縁〉
福尽漬(150g 432円)
 「80歳くらいかなぁ、そのお母さんが20年以上前から作っている漬け物で、おいしいと評判になって。今は娘さんが作り方を受け継いで作っているんですよ」。ショップの方がそう紹介してくれたのがこの漬け物だ。老舗、というのとはちょっと違うが、20年愛されるのは立派なこと。
 パッケージには「うまい野菜にとことんこだわる農家が作った“素材がうまい”福尽漬けです」とある。材料は、福島県産のキュウリ、大根、ニンジン、シソの実、国産の蓮根、ショウガ、そして醤油と砂糖と酢。国産材料のみを揃え、それをすべて手切りにし、独自の醤油だれに漬け込んでいる。もちろん、着色料、保存料は無添加。
 キュウリもニンジンも、身がしっかりとしていることに驚く。ポリポリとしたキュウリの歯ごたえがいい。醤油味も甘みも控えめで、野菜の良さが引き立つ。後味もすっきり。田舎に帰ったら、おばあちゃんが畑から採ったばかりの野菜で作っておいてくれた、そんなやさしくて安心できる味がする。
〈金沢市・佃食品〉
匠作品 能登かき(115g 1026円)
 能登七尾湾の西側に位置する中島町は牡蠣の名産地。その中島産の一年ものの牡蠣を使った佃煮だ。商品名に“匠作品”とあるのは、石川県食品協会から匠賞を受賞した匠職人が作っているから。牡蠣のやわらかさ、新鮮さを保ち、今までの佃煮の常識を覆すほど、塩分や糖度を抑え、なおかつある程度日持ちするように作っているという。名人の技を駆使した自信の品だ。
 あめ色のツヤがいかにもおいしそう。牡蠣はふっくらとやわらかく、甘みも塩味もそれほど強くない。噛みしめると牡蠣そのものの味と磯の香りが口に広がる。
 牡蠣は“海のミルク”とよばれるほど栄養のバランスがいい。朝・夕食はもちろん、お弁当や酒の肴、お茶漬けなどにして、少しずつ楽しもう。ざっと20個くらいは入っている。
匠作品 能登かき
油紙 特上しそ昆布
〈尾道市・川原食品㈱〉
油紙 特上しそ昆布(200g×2袋 1240円)
 これ、おいしいです。もう何年も前からファン。昆布の歯応えとシソの香りが心地よく、本当にご飯がすすみます。 創業は戦後間もない昭和21年。若夫婦が自宅4畳半の台所で小鍋と七輪で佃煮づくりを始め、しだいにお客が増え、会社が大きくなったという。その間、一貫して創業社長の口ぐせは「目先のもうけを追うな」「子や孫に安心してたべさせられない食品はつくるな、売るな」。今も『正直・安全・安心』が最優先だという。
 材料となる昆布は、釧路産の天然極上物。モチモチとした食感と豊かな旨味が特徴だ。その厳選した昆布を、創業以来継ぎ足してきた秘伝の調味液を使い、とろ火でじっくり炊き上げている。製法での大きな特徴は、「熟炊き製法」を用いていること。大量生産に向いているのは、昆布を湯でボイルして十分にふやかしてから調味液に浸して炊く「浮かし炊き製法」だが、「熟炊き製法」では昆布をそのままじっくり長時間かけて炊き上げていく昔ながらの製法だ。モチモチとした食感と昆布の旨味を逃がさず抱き込んでいくという。
 油紙のパッケージも素敵。200g 700円の商品もある。
〈阿蘇市・合名会社志賀食品〉
たかな油炒め(120g 324円)
 高菜(たかな)漬けは、熊本県や福岡県で栽培の多いタカナを使った漬け物で、この地方の名物としても知られている。そのままでもご飯に合うが、刻んで油炒めにするとコクが出て、ご飯がさらにすすむ。
 阿蘇にある志賀食品では、阿蘇でしか採れない「阿蘇たかな」と「熊本たかな」を使用。この商品は阿蘇たかなが60%用いられている。活火山である阿蘇山のカルデラに位置する阿蘇地方は、標高は約500m。九州とはいえ夏は涼しく、冬は積雪も珍しくない。阿蘇たかなは10月頃に種をまき、それが芽を出して10cmほどに葉を広げた状態で冬を越す。雪に埋もれ、まるで冬眠するかのように春を待つ間、辛味や風味を貯えるのだといわれる。寒さが厳しい阿蘇の土地では、冬場の作物が育たず、常備食として古くから阿蘇たかなの漬物が作られてきた。
 志賀食品では、契約農家が栽培した阿蘇たかなを使用。それに、茎も肉厚で葉もかなり大きい熊本たかなを合わせている。
 このたかな炒めは、よく漬け込んた高菜漬けが使われている。チャーハンや、ラーメンのトッピングに使うのもおすすめ。
たかな油炒め
 
〈枕崎市・枕崎市漁業協同組合〉
かつおの腹皮(180g 465円)
 腹皮ってご存知でしたか? 私は今回初めて知りました。
 カツオの腹皮といってもカツオの腹の皮ではなく、腹の身の部分のこと。カツオの部位の中で一番脂がのっているところで、マグロでいえばトロにあたるのだという。
 枕崎は昔からカツオ漁が盛んで、カツオ節の生産量も日本一を誇る。カツオの腹皮は、カツオ節の原料となる身の部分を取り除いた後に残るので、枕崎では手軽に手に入り、昔から焼酎の肴やごはんの友としてよく食べられていたそうだ。現在は、カツオ節用ではなく、刺身用のカツオの腹皮も食べられている。
 どんな味なのか、クセが強かったらどうしよう……と不安に思いながら食べてみると、、、おいしい! 焼くことでほどよく脂が落ち、香ばしさが際立つ。塩味はしっかり効いているが、魚の旨味とよく混じり合って、尖った味がしない。ただ、歯が弱い方は食べられないのではないかというくらい弾力があり、その分、食べ応えもある。生臭さが全くなく、鮮度のいいものを使っているのだなと思った。
 全国にはまだまだ知らないおいしいものがたくさんあるのだと実感した一品でした。
中元千恵子
中元千恵子 旅とインタビューを主とするフリーライター。埼玉県秩父市生まれ。上智大卒。伝統工芸や伝統の食、町並みなど、風土が生んだ文化の取材を得意とする。また、著名人のインタビューも多数。 『ニッポンの手仕事』『たてもの風土記』『伝える心息づく町』(共同通信社で連載)、『バリアフリーの宿』(旅行読売・現在連載中)。伝統食の現地取材も多い(http://tabipen.net/report/nakamoto01.html