風土47
ショップスタッフのマイブーム品 Part Ⅴ
スタッフのマイブーム品の取材は、その方の好みが表れて楽しいです。
「私はお酒が好きなので……」とおつまみ系を挙げてくださる方、「私は料理が好きなので……」とだし系の食材を挙げてくださる方など、いろいろ。
今月もバリエーション豊かに揃いました。
おまけコーナーにでもいくつかご紹介しましたので、ぜひ最後までご覧ください。
今月は南の県から並んでいます。
取材/撮影 中元千恵子(トラベルライター 日本旅行記者クラブ、日本旅のペンクラブ会員)
※ご紹介した商品は品切れしている場合があります。在庫を各アンテナショップにてお確かめください。
*記載の商品価格は、2014年4月の消費税増税後の税込み価格になっております。
〈須崎市・吉平商店〉
吉平のあわせしょうが(360mℓ 1380円)
 「吉平商店の親父さんは、商品について語り出したら3時間は止まらないよ」と話すまるごと高知の店長さん。
 それを聞いただけでも、この「吉平のあわせしょうが」がどれだけこだわって作られているかが分かる。店長やスタッフのみならず、多くの人に愛されている商品で、実は私もまるごと高知がオープンして以来、買い続けている一人だ。
 大きな特徴は、材料がショウガと上白糖のみで、水は一切使われていないこと。生姜が名産の高知県にあっても、無水製法の生姜シロップはこの商品だけではないかとのこと。
 製法はまず、原料となる高知県産ショウガ「土佐一」をすりおろして、手で搾る。搾り汁と上白糖を釜に入れ、約2時間半、つきっきりで火加減を調節して撹拌しながら炊き上げる。手間ひまかかる手作業なので、限られた数しかできない。しかし、出来あがった“生姜蜜”ともいえるシロップは、ショウガの味が濃く、それでいてまろやかな唯一無二の味。
 水やお湯で薄めて飲んだり、あるいは料理に使ってもいい。
吉平のあわせしょうが
ツナマヨっち
〈鳥取市・㈱ちむら〉
ツナマヨっち(1本 260円)
 鳥取県の名物として有名なとうふちくわ。その歴史は古く、始まりは江戸時代に遡るという。漁港の整備が遅れていて漁獲量が少なかった鳥取では、魚は貴重だった。そこで、当時の鳥取藩主池田公が魚の代わりに豆腐を食べるようにと、質素倹約を奨励した。そのため、ちくわにも豆腐が使われるようになったという。
 とっとり・おかやま新橋館のショーケースにはさまざまな種類のとうふちくわが並んでいる。チーズ、イワシ、ショウガ、ネギ、アゴ……。その中で男性スタッフが「ハマってます」と選んでくれたのがツナマヨっち。キハダマグロとマヨネーズが練り込んである。
 おいしい。そのままでもいいが、軽く油で炒めると香ばしさが加わってご飯がすすむ。やはりツナマヨは鉄板。今まで何種類かのとうふちくわを食べたが、これが一番万人受けしそうだ。
 保存料無添加の安心の商品。子どものお弁当のおかずにも重宝しそうだ。
〈志摩市・まるてん㈲〉
波頭(46g 540円)
 「今、これが気に入っています」と女性スタッフが挙げてくれたのがこの商品。
 何の予備知識もなく、冷やっこやおひたしの上にかけて食べてみたが、確かにおいしい。鰹節削り器で鰹節をかいた直後のような、いい香りがする。もちろん風味もいい。どうしてこんなに食べ心地がいいのだろうと疑問に思って説明書を見て納得した。「本枯節を輪切りにし、繊維を切って削ることにより、食感も抜群です」。なるほど、繊維を感じないので、すっと心地よく食べられるのだ。
 ここまでこだわって削り節を作るなんてすごいなぁと思って調べたら、さすが三重。すごい歴史が隠れていた。メーカーのまるてんがある志摩市の波切は、奈良時代からカツオ漁が行われ、「波切節」とよばれる鰹節が作られていた。それは朝廷や神宮に献上されていたそうだ。まるてんでは、今も当時の、一本釣りで釣ったカツオを備長炭の原料薪で燻し上げる伝統の製法を受け継いでいるという。地元には鰹いぶし小屋があって見学もできるそうだ。ぜひ行ってみたい。
波頭
紅あずま
〈行方市・野菜ソムリエ農家のはら〉
紅あずま(3本 450円)
 スタッフはもちろん、お客さんたちもハマりまくっているというのが、野菜ソムリエ農家のはらが作るサツマイモ。
 「茨城マルシェでは、寒い季節に焼き芋を販売するのですが、それに使うのもこの『のはら』さんの紅あずまです。焼き芋を食べてあまりのおいしさに感激して、生のサツマイモも買っていかれるお客様も多いです」と女性スッタフ。
 『のはら』は、野原亮一さんという方が営まれる小さな農園のようだが、日本野菜ソムリエ協会が主催する野菜と果物の品評会で2013年にサツマイモ部門で大賞を受賞している。
 確かにおいしくてびっくり。焼き芋にするのが一番のおススメだそうだが、まずは蒸かしてみた。でもおいしい。「栗!?」と思うようなほっくりとした食感と上品な甘み。噛むとなめらかな食感に変わり、甘さがにじみ出てくる感じがする。サツマイモはこれからがシーズン。ぜひお試しを。
〈東成瀬村・手造り工房しらたき〉
くんせい豆腐(9枚 390円)
 「お酒が好き」という女性スタッフがハマっていると教えてくれたのが、このくんせい豆腐。名前の通り、豆腐の水分をほどよく抜いて、燻製にしている。秋田の燻製文化を生かしたこの商品は、秋田県特産品開発コンクールで奨励賞を受賞している。
 どうですか? 豆腐というより、チーズみたいでしょう?
 味もチーズに近かった。まず、袋を開けると燻製のいい香りが漂う。その香りにつられて思わずパクリ。食感もチーズだが、やはりチーズよりはさっぱりして、後から豆腐の味もする。
 あっさりしているので、アレンジが効いて、自分好みの食べ方を見付けるのが楽しそう。わさび醤油で食べるもよし、クラッカーにのせて少しこってりしたものと合わせてもいい。どんなお酒にも合うつまみが作れそうだ。
 何よりうれしいのが、チーズよりはるかに低カロリーだということ。秋の夜長、晩酌のお供にいいかもしれません。
くんせい豆腐
若さぎからあげ塩味
おまけ1〈潟上市・佐藤食品㈱〉
若さぎからあげ塩味(60g 401円)
 実は、秋田でもう一つ挙がったのがこの「若さぎからあげ塩味」。これもおつまみにぴったりです!
 秋田県八郎潟のワカサギを2度揚げして、カラッと仕上がっている。サクサク、ポリポリ、おいしい。塩味も濃すぎず、薄すぎず、絶妙です。
 油っぽくないので、お子さんのおやつにもお年寄りのお茶うけにも、幅広い年代で食べられます。
おまけ2〈伊賀上野市・桔梗屋織居〉
いがむいたら栗(4個 1304円)
 実は、三重県でもこれも候補に。栗を丸ごと1個渋皮煮にしたものを黄身餡と合わせ、パイ生地で包んである。渋皮煮の甘さがほどよく、栗の味が引き立つ。上品な黄身餡とサクッとしたパイ生地との相性も抜群でおいしい。
 この商品の説明で初めて知ったのですが、四方を深い山で囲まれた伊賀はどの都から見ても「九里」離れているということと、栗のイガにかけて「いがむいたらくり」といわれていたのだそうです。そんなうんちくを知ると、お菓子の味もひと味違ってきます。
いがむいたら栗
中元千恵子
中元千恵子 旅とインタビューを主とするフリーライター。埼玉県秩父市生まれ。上智大卒。伝統工芸や伝統の食、町並みなど、風土が生んだ文化の取材を得意とする。また、著名人のインタビューも多数。 『ニッポンの手仕事』『たてもの風土記』『伝える心息づく町』(共同通信社で連載)、『バリアフリーの宿』(旅行読売・現在連載中)。伝統食の現地取材も多い。(朝日新聞デジタル連載記事