風土47
ショップスタッフのマイブーム品 Part Ⅵ
私事で大変恐縮ですが、11月11日(金)にTV出演します。
今、また改めてアンテナショップが注目されているようで、今年に入ってTVだけでも3回、出演してアンテナショップの情報や各地の名物料理を紹介させていただきました。
大きな情報源の一つが、この「今月の特集」の取材です。
地味で目立たない商品でも、ショップスタッフの方に「絶対おいしいよ!」と教えてもらい、知ることができます。
今月も、派手ではないけれど、食べてみて「なるほど!」と納得する品がそろいました。
ぜひご覧ください。今月も南の県からご紹介しています。
取材/撮影 中元千恵子(トラベルライター 日本旅行記者クラブ、日本旅のペンクラブ会員)
※ご紹介した商品は品切れしている場合があります。在庫を各アンテナショップにてお確かめください。
*記載の商品価格は、2014年4月の消費税増税後の税込み価格になっております。
〈西都市・あかのや〉
鶏ぼこ(200g 820円)
 これはおいしかった。鶏肉のおいしい宮崎県でも珍しい料理だという。
 日本最大級の古墳群である西都原古墳の近くに店を構える創業50年の人気食事処「あかのや」が作るオリジナル商品だ。県産の鶏むね肉を塊のまま蒸して、さらに特別な方法で香ばしく焼いているという。中には地元産のゆず胡椒が挟まれている。一つ一つ手作りで、1本作るのに3日間ほどかかるそうだ。
 むね肉はグリルするとおいしいが、どうしても火を通しすぎるとパサついてしまう。でも、この商品はしっとりとおいしく、さすがプロ!と感激する。中のゆず胡椒も鶏肉に合う。塩味とともにピリリと辛みが効いて、ついもう一切れ、と手が伸びる。ご飯のおかずはもちろん、ビールやワインのおつまみ、サラダやパスタ、サンドイッチ、幅広く使える。
 “鶏ぼこ”とあるから「かまぼこ?」と思うけれど、そうではなく、ハムでも燻製でもない。ぜひ、味わってみてください。
鶏ぼこ
仁多のきねつきもち
〈奥出雲町・㈲井上醤油店〉
仁多のきねつきもち(430g 557円)
 おいしそうなお餅でしょう?
 店員さんの中に多くのファンがいるというこの餅。なめらかで粘りがあって、噛めばコシも強く、甘みのあるもち米の味わいがじわじわとにじみ出てくる。おいしい。
 使用しているのは、奥出雲地方の仁多(にた)郡で作られたもち米。産地である“仁多”は、なんと『出雲国風土記』に「是は豊潤(にた)しき小国(おぐに)なり 故に仁多と言ふ 此の地田良し」と記されているほど、古くから良質な米ができることで知られた米どころだという。
 仁多の米がおいしい理由は、花崗岩から湧き出るミネラルを含んだ水や、昼夜の寒暖差が大きいことなど。さらに、和牛の堆肥を還元した土作りや極力農薬を減らした農法など、自然環境に加えて人的努力も怠らない。
 仁多の米は西日本を中心に高い評価を受けている。餅についても全体の消費量が減少する中、“仁多もち”の売り上げは減少していないそうだ。いいものはやっぱり消費者に伝わるんですね。お正月にいかがですか?
〈京都市・京菓子司㈱平安殿〉
粟田焼(1個 110円)
 今年の秋から、京都館で新しく「京菓子司 平安殿」のお菓子が販売されることになった。平安神宮の大鳥居の前に店を構える和菓子店で、写真の「粟田焼(あわたやき)」をはじめ、「平安殿」「橋殿」などの商品が“京ブランド”に認定されているという。
 “京ブランド”は、正式には「京ブランド認定商品/京都吟味百選」といい、京都府食品産業協議会が選定。味や伝統、安全、さらに包装用紙なども含めてさまざまな設定基準を設け、すべての基準を満たしている商品を認定するそうだ。銘菓の宝庫である京都でも認定数は少なく、和菓子部門では39品種のみだという。
 「粟田焼」はもっちりとした醤油味の薄皮餅の中に、甘さ控えめの上品な粒餡が入っている。焦がし醤油が香ばしく、これが絶妙な味のアクセントに。みたらし団子にも似ているが、ありそうでなかったオリジナルの味。江戸時代初期に京都の粟田という地で誕生した陶器の名を末代まで残したいという思いが込められているそうだ。手ごろな価格も魅力。手土産にしても喜ばれそうだ。
粟田焼
浅炊きさんま
〈石巻市・山徳平塚水産㈱〉
浅炊きさんま(130g 350円)
 これはおいしかった。封を開けた途端になんとも食欲をそそる匂い。こってりとしたあめ色ながら甘さ控えめで、塩分も程よく、後味がいい。ご飯が進むこと進むこと。“浅炊き”とは書いてあるけれど、骨までやわらかく炊いてある。あっという間に平らげて、説明書きを見ると「三陸沖で獲れた脂ののった旬のサンマを使用。低塩でちょっと甘めな特性のタレで骨までやわらかに炊き上げました。化学調味料不使用」と書いてある。さらによくよくパッケージを見ると、“宮城の食コン大賞受賞”と書いたシールが。
 “宮城の食コン”は、宮城ふるさとプラザが開催する来館者の試食投票で決まる食のコンテストだそうだ。第1回は“ご飯のお供”をテーマに、9月17~19日の3日間で行われた。さすが大賞、本当においしい。
 店内ではその他の入賞商品も紹介している。第2回、第3回も楽しみ。参加してみたいですね。
〈函館市・㈱不二屋本店〉
函館美鈴珈琲ゼリー(22g×12個 432円)
 お菓子担当の女性スタッフがハマっていると教えてくれたのが、このコーヒーゼリー。昭和7年(1932)、北海道で一番古いコーヒー店として創業した函館市の「珈琲焙煎工房 美鈴」の味をコーヒーゼリーにしたものだ。
 味と香りにこだわった「美鈴」のコーヒーは多くの人に愛され、北海道全道へ、そして東京などにも支店ができているという。
 「このゼリーもおいしいですよ。お客様に、よく『クリームは付いてないの?』と聞かれるのですが、クリームが必要ないほど苦みが優しいんです」と女性スタッフ。
 フタを開けると煎れたてのようなコーヒーのいい香りがする。容器を逆さにすると、ぷるんとやわらかいゼリーが出てきた。確かにコーヒーの味は深いのに、苦みが強くない。甘みもしっかりあるのに、後に残らない。深いコクと苦み、甘さが程よく溶け合う。
 1個で、コーヒーをカップ半分くらい飲んだような満足感があるゼリーでした。
函館美鈴珈琲ゼリー
とんばらの餅
おまけ1〈飯南町・島根県農業協同組合〉
とんばらの餅(450g 642円)
 実は、にほんばし島根館でどちらをご紹介しようかと迷ったのが、この「とんばらの餅」。こちらのお餅にも熱烈なファンがいるそうです。
 このお餅の産地である奥出雲のとんばらも有名な米どころ。昔から大切に受け継がれてきた有機質土壌と良質な水、昼夜の寒暖差など米作りに適した自然環境。そこで大切に育てたもち米を100%使い、昔ながらの杵つきでつきあげてある。コシと粘りが自慢だ。
 さて、どちらが好みか。ぜひ、両方買って試していただきたいです。
中元千恵子
中元千恵子 旅とインタビューを主とするフリーライター。埼玉県秩父市生まれ。上智大卒。伝統工芸や伝統の食、町並みなど、風土が生んだ文化の取材を得意とする。また、著名人のインタビューも多数。 『ニッポンの手仕事』『たてもの風土記』『伝える心息づく町』(共同通信社で連載)、『バリアフリーの宿』(旅行読売・現在連載中)。伝統食の現地取材も多い。(朝日新聞デジタル連載記事