風土47
新年 注目の商品はこれ!
新年を迎え、気持ちも新たになりますね。
年々、時代の変化が早くなりますが、食品も次々に新しいものが生まれています。
そこで、各ショップで、新年に注目の品を聞いてみました。
ヘルシー、安い、美味……いろいろな面で注目の品がそろいました。
取材/撮影 中元千恵子(トラベルライター 日本旅行記者クラブ、日本旅のペンクラブ会員)
※ご紹介した商品は品切れしている場合があります。在庫を各アンテナショップにてお確かめください。
*記載の商品価格は、2014年4月の消費税増税後の税込み価格になっております。
〈栗原市・㈱高清水食糧〉
玄米で食べるために生まれた金のいぶき
(450g 410円)
 「これは注目ですよ。玄米なのにそのまま炊飯器で炊いて、とってもおいしく食べられるんです。これからますます人気が出ると思います」と、担当の女性が熱く語ってくれたのがこの「金のいぶき」。玄米は体にいいとは分かっているが、普通はぼそぼそして食べにくい。それを解消したのだという。
 「ほんと?」と思って炊いて食べてみたら、本当においしい。ふっくら軟らかくて甘みがあり、何といっても米の味が濃い。味噌汁と、梅干しや海苔が少しあれば、もうそのまま食事になってしまいそう。そして、胚芽の歯応えなのか、まるでゴマのようなプチプチとした食感も心地いい。
 「金のいぶき」は、通常の玄米よりもさらにすぐれた栄養価を持つそうだ。特に多いのが、強力な抗酸化作用をもつ「ビタミンE」と、血圧降下作用もあるアミノ酸の一種「GABA(ギャバ)」。この2つを多く摂取することは生活習慣病や脳卒中の予防にも役立つといわれる。銀シャリより“金のいぶき”といわれる日がくるかもしれませんね。
玄米で食べるために生まれた金のいぶき
おみ農園の無添加ほしいも
〈鉾田市・小見洋市〉
おみ農園の無添加ほしいも(紅はるか)
(200g 788円)
 この時期の茨城マルシェで注目といったらやっぱり干し芋。そして、あのおみ農園の干し芋の登場だ。
 干し芋の生産量は、茨城県が全国の9割以上を占める。まさに特産品。レベルも高い。
 おみ農園は、海と湖に囲まれた肥沃な鉾田市にある産地直送農家で、“食べる人に感動を与えたい”と作られるトマトなどの野菜で有名。そして、自家栽培のサツマイモで作る干し芋も大人気だ。日テレの人気番組『満天☆青空レストラン』でもおみ農園の干し芋が取り上げられ、話題となった。
 干し芋の良し悪しは原材料で決まるそうで、おみ農園では甘みの強い品種「紅はるか」などを苗から育てている。秋に収穫した後、28~30℃の熟成庫で長期間熟成させると、サツマイモのデンプン質がゆっくりとブドウ糖に変わり、さらに水分が抜けて甘みが増す。この時の糖度は17度ほどで、メロンにも匹敵するという。それをセイロで1時間蒸し、皮をむいて天日で1~2週間干すと、黄金色の干し芋ができあがる。
 うんちくを並べましたが、ひと口食べればわかります。生キャラメルに例えられるやわらかな舌触り、やさしい甘さ。幸せです。
〈京都市・北尾商事㈱〉
ぜんざい(190g 324円)
 どうして京都の老舗の商品はこんなにおいしいのだろう。
 「どこかひと味違いますよね。店頭のどの商品をとっても、やっぱり京都の味って奥深いなあと思います」と、ショップの女性担当者も感嘆の声をもらす。
 このぜんざいもひと味違った。いや、味の前に見た目からして違う。器に出すと、小豆の粒がぷっくりと大きく通常の小豆の2倍はあるのだ。そして食べて甘さの上品さに感動する。舌にグッと乗ってくるような甘さではなく、絹の反物のようにひたすらやわらかくスーッとのどの奥まで延びていく甘み。どうしてこうまろやかななのだろう。
 作っているのは、文久2年(1862)創業の北尾商事。自然豊かな丹波の産物と京都の特産物が一堂に集まる「丹波口」で黒豆や小豆を商ったのが始まり。以来150余年、上質な丹波産の黒豆や小豆、砂糖を商い、京料理や京菓子など京の食文化を支えてきた。
 この商品は、小豆の中でも特に大粒で艶のある京都産丹波大納言小豆を使い、甘さ控えめに仕上げている。この小豆は、煮崩れや皮切れしない優れた特性もあり、宮廷やお茶の席の和菓子など使用されてきたという。
ぜんざい
金城かぶら寿し
〈金沢市・四十萬谷本舗〉
金城かぶら寿し(110g 799円)
 かぶら寿しは、塩漬けしたカブに塩漬けした鰤(ブリ)を挟み、米糀(こうじ)で漬け込んで発酵させた発酵食品。石川県伝統の郷土料理で、この季節によく食べられる。泉鏡花や尾崎紅葉、室生犀星などの文豪も愛した金沢の冬のご馳走だという。
 名前は“寿し”だが酢飯を使った一般的な寿司ではなく、魚を塩と米飯で乳酸発酵させた「馴れずし」の一種だ。米糀を使用するため、優しく豊かな味わいと香りで、食べやすいことが特徴だ。
 とはいえ、なじみのない人には、まず匂いに驚く。袋を開けると発酵食品の独特の匂いがしてたじろぐが、見た目は白い麹とカブにニンジンの赤が映えて美しい。食べると米糀のやわらかな甘みと発酵した酸味にカブの歯ごたえと辛みが加わっておいしい。高級なカブの甘酢漬けのよう。ただ、発酵したブリは好き嫌いが分かれそうだ。独特の奥深い味わいで噛むたびに甘みと酸味と……と変化する。興味のある方はぜひお試しを。
 生産する四十萬谷本舗は、明治8年、白山の清らかな伏流水が湧き出る泉野村と呼ばれる地に、初代が醤油屋を創業。以来、醤油、味噌、糀、そして味噌漬やかぶら寿しなどを作り続けてきた老舗だという。
〈五島市・ごと㈱〉
五島の鯛で出汁をとったなんにでもあうカレー
(180g×2袋 282円)
 品名が印象的なこのカレーは、お値段も衝撃的(1袋141円ですよ!)。そして、もちろん品質の良さも衝撃的だ。
 「売れています。自分の好きな具を入れてカレーとして味わうのもいいですし、チーズを加えてカレーフォンデュ、ミルクを入れてスープ、さらにパスタやドリアなど、さまざまに使えます。注目の商品です」と女性店長さん。
 長崎は魚介をはじめ食材が豊富。若い人が移り住んで、その豊かな食材を新しい観点で活用した新商品を生み出しているという。
 このカレーもその一つ。素材の鮮度は抜群だ。使用する鯛は、その日の朝、五島の海で水揚げされたばかりのものをキッチンスタッフ7名がきれいにさばいて使用する。その鯛の出汁には牛骨スープを合わせるのだが、鯛も牛骨も一度茹でた後にお湯を捨ててアクを取り、もう一度じっくり煮込んでいく。「海のものと陸のものが出会うとおいしくなる」がカレーを研究して26年という料理長の考えなのだという。
 今回はカレーうどんにしてみた。確かにクセがなくて、上品なうま味が濃い。和、洋、中、どんな料理にしてもおいしそう。
 余談ですが、製造する「ごと株式会社」のホームページが素敵です。五島列島を愛しているのが伝わってきます。よろしければご覧ください。五島列島に行ってみたくなります。
五島の鯛で出汁をとったなんにでもあうカレー
中元千恵子
中元千恵子 旅とインタビューを主とするフリーライター。埼玉県秩父市生まれ。上智大卒。伝統工芸や伝統の食、町並みなど、風土が生んだ文化の取材を得意とする。また、著名人のインタビューも多数。 『ニッポンの手仕事』『たてもの風土記』『伝える心息づく町』(共同通信社で連載)、『バリアフリーの宿』(旅行読売・現在連載中)。伝統食の現地取材も多い。(朝日新聞デジタル連載記事